可愛いを作る
【おめでとう】
「鈴、お待たせ」
フードコート。
平日の夕方ということもあり。
思ったより人も少ない。
「おめでとう、先に渡すね」
鈴へのプレゼントを渡す。
「開けていい?」
鈴の確認に頷く。
リボンがほどかれ、箱が開く。
「可愛い。誕生石だね」
鈴の誕生石。
学生時代とは違い、ちゃんと本物。
周りに小さな宝石も光っている。
「付けてみていい?」
と言いながらも、鈴。
今付けているピアスを外している。
そして、新しいピアス。
「直人に自慢しよ」
と言いながら、スマホを取り出し。
写真を撮っている。
【聞きたいこと】
頼んだ品のベルが鳴り。
お互いの品が目の前で湯気を立てる頃。
「で、どっちの話から先にする?」
鈴が、にこにこしながら聞いてきた。
ジュースを一口飲む。
「甥っ子の名前決まったの?」
一番気になることから聞く。
「候補の名前を出したのは、うちのお父さんと。
お兄ちゃんと茜さんのお父さん。
結局、茜さんの提案が採用されて。
それぞれが呼んで決めることになったの。
甥っ子の一番反応が良かったのが。
茜さんのお父さんの名前。
すんなり決まったよ」
そういう決め方もあるんだ。
鈴も、ジュースを一口。
なんか照れている?
座りなおした鈴。
私も姿勢を正す。
「ついでに言っとくね。
直人から、結婚しようって。
赤ちゃん見ていたらいいなって思ったって」
ん?一瞬理解が追いつかない。
ああ、プロポーズってことよね。
もっと劇的なのを想像していたけど。
でも、鈴が幸せそうだから良い。
「おめでとう。で、いつ?」
鈴が首を傾げる。
「まだ、向こうの家族とも話をしないとだし。
ちゃんと細かいことが決まったら言う」
鈴のことだから事前に色々準備はしてそう。
お金貯めているとか言っていたぐらいだし。
「決まったら、結婚まであっという間だって。
茜さんのアドバイスもあったからね」
これからあまり会えなくなるんだ。
頼りにしていたのになあ。
「それよりも花音、そっちはどう?
次、花音の誕生日じゃない」
ああ、そうだった。
「いつもより可愛い花音って何?」
あ、聞き方間違えた。
鈴が固まっている。
【ラッピング?】
言い訳らしい言葉が浮かばないまま、数秒。
「一応聞くね。和馬さんの話だよね」
鈴の確認に頷く。
誕生日の前日に会う約束したこと。
その時の話も含めて。
「うん。判った。
花音をラッピングすればいいのね」
え?プレゼント、私?
私の誕生日の話だよね?
食べ終わった鈴が立ち上がる。
「行くよ!花音」
そこからの鈴は、怒涛だった。
まず服屋に連れていかれる。
「高い服は、花音嫌でしょ?」
お財布に優しい値段にホッとする。
ざっくり方向性確認しようと店内を一回り。
「普段着ないワンピースは。
攻め過ぎ?いや、返ってアリ?」
悩んでいる鈴の横で、ふと目に入ったもの。
ズボンでもなく、スカートでもなく。
名前は思い出せない、その中間。
色も私の好きなくすみ系。
何気に手に取る。
「可愛いね、それ」
いつのまにか、鈴もそれを見て。
「よし、これに」
幾つか渡されるトップス。
「花音、着てみて。
自分が一番可愛いと思うのが正解」
押し込まれる試着室。
3つある。
可愛いのなら。
一番可愛いと思うやつを手に取る。
なんか違う、これじゃない感。
高校時代なら着られたけど今は着られない。
2枚目。
胸元が気になるので、少し屈んでみる。
上に何か羽織らない限り無理。
鈴、わざと入れたでしょ。
3枚目。
一番地味で今までなら選ばなかった系統。
でも、着るとしっくりくる。
和馬さんも喜んでくれそう。
派手なのより、落ち着いた雰囲気が好きだし。
これにしようかな。
カーテンを少し開ける。
「鈴、これ」
鈴が中を覗く。
「やっぱりそれか。良いと思う」
最初から結果がわかっているなら。
私が選ばなくてもいいと思うんだけど。
釈然としないまま、会計に持って行く。
だから後ろで鈴が小声で。
「和馬さんのために悩んでいる花音。
和馬さんが知ったら大喜びだろうなあ。
でも、教えてあげない。
当日の楽しみにしてもらうね」
と言っているのには気づかなかった。
【持つべきものは】
会計を済ませたあと。
鈴も何かを持っていることに気づく。
別れ際、鈴に持っていたものを渡される。
「これ、ちょっと早いけど。
渡すだけ渡しとくね。
お祝いの言葉は当日まで取っておく。
和馬さんに怒られたくないもの。
じゃ、報告楽しみにしているね」
手を振り去っていく後ろ姿。
家に戻って中身を見る。
「あ、鞄とシュシュクリップ」
服に小物を合わせてくれたみたい。
鈴はその辺のバランスがいいから助かる。
メモも入っている。
『学生時代はメイクを2人で研究したね。
花音は器用だから、私より上手かった。
“花音は可愛い”
自信を持って行っておいで』
部屋にあるメイク道具を確認する。
仕事の時使うやつ。
普段使うやつ。
奥から、学生時代に使っていたものが出てくる。
なんとなく並べてみると、買った服には合わない。
「流石に新しいのが欲しいかも」
この服に合うメイク探さなきゃ。
出来たら、靴も合わせたい。
大丈夫、考える時間はまだある。
どうせなら、いつもよりじゃなく。
最高に可愛い私、和馬さんに見せたい。
今日から、1日2回投稿。行けるところまで頑張ります。




