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選んだ訳

【素のままで】

更衣室で。

「花音、本気?」

鈴がドライヤーを掛けながら聞く。

「だって、待たせる方が悪いし。

あとは、家に送ってもらうだけだし」

と言いながら、鏡越しの鈴の目が見られない。

言えない。

普段から、ドライヤーなんて面倒でかけない私。

そんな素の私を見せても。

和馬さんが引かないか試そうとしているって。

「やりたいことは良くわからないけど。

今のその格好だと、ホラー映画だよ。

花音、色白いから」

言われて鏡を見る。

長い黒髪を下ろしたまま。

プール出たばかりだから、やや血色の悪い肌。

白っぽいタオルと合わせると。

頭の中で、ある音楽が流れる。

「流石にダメかも」

かと言って、ここで髪を乾かすのも違う気がする。

「じゃあ、タオルで巻こう」

タオルの両端をくるくる巻き出す鈴。

「よし、これ被って」

そっと頭に乗せられた自分の姿は、羊さんみたいだった。

「これなら、可愛いでしょ?」

うん、これなら大丈夫かも。


【反応は】

「お待たせ」

自販機の前で、和馬さんと直人さん。

じゃんけんをしている。

「思ったより早かったって、それ?」

私の顔を見た和馬さん、固まっている。

直人さんも。目をぱちぱちしている。

「可愛いね。それ、風呂上がりの鈴がしているよ」

直人さんの言葉に、和馬さん私の手を引く。

そのまま隅っこへ。

「風邪引く」

いきなり、和馬さんの手が伸びてきて髪の毛に触れる。

「え。怒った?」

和馬さん、無言。

そのままタオルの上から頭をわしゃわしゃ。

「え?」

頭の羊さんが取れる。

和馬さんの手が止まる。

次は、タオルの上からそっと優しく撫でてくれる。

「やっぱり」

後から出てきた鈴。

私にブラシを差し出す。

「なんで?」

和馬さんの行動の意味がわからないんですけど。

鈴の目に促されて、軽く三つ編みにする。

誰か答え教えて。


【選ばれた訳】

「そりゃ、花音が悪い」

鈴、わかっているなら、理由教えて。

「それは、本人と話し合って」

そのまま、直人さんと2人先に帰るねと帰っていく。

残された私。

手を繋ぐけど、ぎゅっと握る勇気がない。

車の中で、和馬さん。

「痛かった?」

首を振る。

それはない。

「疲れているとか?」

首を振る。

身体は少しだるいけど、頭はしっかりしている。

「怒った?」

逆に聞く。

「怒ってはない。でも」

和馬さん、珍しく戸惑っている?

「他人から、花音が可愛いと言われると隠したくなる」

何それ。それって…もういい。

考えるのが面倒になってきた。

「ねえ、私の何処が好き?」

和馬さんの息が止まった。

「まず、真っ直ぐなところ」

単純だからね。

「前向きなところ」

それもわからないでもない。

「危なっかしいところ」

それ、褒めている?

「それから」

それから?

「目が離せないところ」

え?どう言う意味?

「意味、わかんないよ」

なんかわからないけど、涙が出る。

和馬さんが珍しく焦っている。

慌てて、近くに車を停める。

「ちょっと待って」

目の前に差し出されるティッシュの箱。

遠慮なくもらう。

ついでに鼻も噛む。

今度はゴミ箱が出てきた。

一瞬、躊躇ったけど入れる。

和馬さん、ほっと息を吐いた。

「好きの意味がわからない。

だから、わかるまで付き合って」

もう、答えこれでいい。

「ずっとわからなかったら?」

和馬さんの声も調子出てきている。

「知らない。その時は責任とってもらう」

なんか、笑えてきた。

「どっちに転んでも責任は取るつもりだけど」

再び走り出す車。

本音としては、もう少し先に進んでも良かったけど。

それはそれで心臓が持たない気がする。


【隣に置くのは】

家に帰って、和馬さんに言われた通り。

思ったより身体が重い。

急いでお風呂に入って、ご飯を食べて。

お風呂を出たところで、鈴からの通知に気づく。

電話を掛ける。

車の中の話。

泣いたことは言えない。

「花音、愛されているね」

うん。それはわかっている。

「前に好きって何って聞いたことあったよね。

鈴は、一緒に大雨の中で雨宿りしてくれる人って」

その時は、へぇ。くらいにしか思わなかった。

でも、今ならなんとなくわかる気がする。

「直人なら、どんなに外で嫌なことがあっても。

一緒に笑って過ごしてくれる場所、作ってくれそう」

やっぱりねえ。

「鈴、愛されているね」

2人でふわふわした気持ちのまま電話を切る。

おかげで、目が冴えた。

机の上の人形。

片方は海仕様だったけど。

プール仕様に変更しようかな。

ビート板、持たせるのもありかも。

となると、隣に女の子が欲しいな。

うん。羊頭の子にしよう。

つい、変なテンションで夢中になって。

気が付いたら朝。

連休で、仕事休みで良かった。

そしてそのまま布団に入る。

夢も見ずに寝たまでは良かった。

目が覚めると、腕の中に人形。

しかも、スーツの子。

思わず、よだれが付いてないか確認。

とりあえず無事みたい。

徐々に覚醒した頭で思い出す。

確か、羊頭の子をプール仕様の子の横に置いて。

スーツの子が寂しそうに見ている気がして。

手を繋いで寝ようと、布団に一緒に入って。

…これからパジャマ、作るかな。

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