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泳げた

【見本は大事】

直人さんを見送ったところで和馬さん。

私の方を向く。

「どうする?続きやる?」

もちろん。

何故か、鈴まで身を乗り出している。

直人さんが遠くで鈴を呼んでいるけど。

付いていくことなく無視をしている。

「じゃあ、次はバタ足の練習しようか」

確かに泳ぐのにバタ足は必要ではあるけど。

一気に難易度上がっている気がする。

不安そうな私の顔を見た和馬さん。

笑っているんですけど。

「とりあえず、ビート板は横に置こうか」

ビート板をプールの端に置く。

「バタ足ってどうする?」

どうするって?

「足を動かす」

和馬さんが頷く。

そのくらいは判る。

「じゃあ、手でやってみて」

手で?

和馬さんが手を伸ばしたのを見て手を伸ばす。

「こう?」

手を交互に動かす。

「正解。でも足だと何で出来ないと思う?」

え?それは…何故?

その時、後ろから直人さんが泳いでくる。

上がる水飛沫。

その割に前に進んでいない。

たぶんクロールだと思うけど。

じたばたしていてはっきりしない。

「直人、膝曲がってない?」

鈴の言葉に、良く見てみる。

ばしゃばしゃとうるさい音。

その合間に足が見える。

確かに、膝から下しか動かしてない。

自分の手をもう一度動かす。

手は真っ直ぐ。

和馬さんの泳ぎはどうだった?

目を瞑って思い出す。

水飛沫あんまり無かった気がする。

目を開ける。

動かした自分の手。

あまりうるさくない。

水しぶきも上がらない。

「鈴、呼んだのに無視するなんて」

直人さん、ぜーぜー言いながら文句を言っている。

ちょっとうるさい。

今、何か掴めそうなんだから。


【実践では】

頭に浮かんだイメージをやってみたくて。

ビート板に乗る。

少し浮く。

ちょっと足を動かす。

膝は曲げない。

身体はまっすぐ。

ん?もうちょいかも。

もう一度。

力を少し抜く。

浮く。

足を動かす。

「花音!泳いでいるよ」

鈴の声が思ったより遠い。

「あれ?」

進んだのは数メートルぐらい。

歩いて戻る。

「教える前に出来ているよ」

和馬さんの太鼓判。

何回かやればコツが掴めそう。

なんか、このまま泳ぎたくなってきた。

でも、非情にも休息の放送が鳴る。


【いざ勝負】

休憩挟んでプールに戻る。

休息室での打ち合わせ。

出来る、出来ないはちゃんと伝えた。

和馬さんに横に居た方が良い?と聞かれたけど。

ちゃんと足も付く。

ビート板、ある。

顔は付けなくても泳げる。

なら、ゴールで待ってもらう。

だから、先に1人プールに入る。

「よし、じゃあ25メートル。

何回足付いてもオッケー。

花音、やるのね」

鈴の最終確認に頷く。

向こうで、和馬さんがプールに入るのが見える。

ゴーグルを付ける。

視界が狭い。

でも、ちゃんと和馬さんの姿だけは見える。

大きく深呼吸。

ゆっくりビート板を押した。

思ったより進まない。

足が付く。

でも、もう一回。

大丈夫。足を動かす。

膝は曲げない。

身体、真っ直ぐ。

さっきより早い気がする。

よし、もう一度。

ちゃんと進んでいる。

和馬さんが、大きくなっている。

あと、もう少し。

「花音!やった!出来た」

鈴の声が横に聞こえる。

和馬さんがそっと手を上げる。

ハイタッチ。

産まれて初めて、泳げた。


【嘘じゃない】

ビート板を抱えて直人さん浮きながら。

「いや、本当に泳げなかったの?」

泳げなかったのを疑っているよう。

「本当よ。見学か、端っこから動かないか。

先生がいくら花音に教えても。

溺れそうになって止めての繰り返し」

鈴の言葉に頷く。

今ならわかる。

ビート板が良く頭に当たっていたのは。

手前を持っていたから。

足もそう。怖くて、曲げたまま。

浮くより先に力が入っているから、沈む。

先生は、根気よく丁寧に教えてはくれたけど。

顔を水につけるのが怖いなんて言えなくて。

話の半分は素通りしていた。

和馬さんの教えは判りやすい。

「思ったより、楽しかっただけだけど」

別の疑惑がある。

「直人さんこそ、わざと変な泳ぎした?」

直人さんが失敗例を見せてくれたから理解出来た。

「僕の泳ぎ、変?」

こっちも気づいて無かったらしい。

「直人、膝が曲がっているから前に進んでないし。

ビート板の持ち方もおかしい」

鈴の冷静なツッコミ。

隣で和馬さんも頷く。

「和馬、僕にも泳ぎ教えて」

直人さん、和馬さんに近寄って来ている。

「僕の教え方は花音専用」

和馬さんがこっちに逃げてくる。

もう少しでくっつきそうな距離。

「それに鈴ちゃんの方が、直人の理解高そうだから。

そっちに聞いて」

鈴の顔が私?と不思議そう。

「鈴ちゃんが、直人の弱点気づけたの。

直人のこと良く見ているからじゃないか」

確かに、先に気づいたのは鈴だ。

「えー。仕方ないなあ」

そう言いながら、鈴、ちょっと嬉しそう。

直人さんに手をバシャバシャさせて、説明している。

離れた場所で2人を見守る。

「ところで、和馬さんは泳がなくて良いの?」

さっきから、私の相手ばかりで。

ほとんど泳いでないけど。

「今日はそんな気分じゃないし。

むしろ、花音が泳げた方が嬉しい」

私も、1日で、ここまで出来るとは思って無かった。

「でも、今日はここまで。

思っているより疲れているはずだから」

残念。もっと教わりたかったのに。

「続きは、今度2人でしよう」 

水中で、こっそり手を繋ぐ。

約束だよの意味で、手を握る。

向こうも握り返してくれた。

目の前の2人は。

いつの間にか、水中睨めっことかやっている。

私も、和馬さんと出来たら。

その前に普通に泳げるようになって。

鈴を驚かせる方が先かな。

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