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特訓開始

【出来るの?】

1時間ごとの休憩タイム。

暖かい部屋の中。

頭から、バスタオルを被る。

冷静になれ、私。

状況は、子供の高い高いが一番近い。

接触も最低限。

なのに、今になって心臓がバクバクしている。

バスタオルに包まった私には。

外の皆の状況はわからない。

「でも良く花音がバランス崩したのに気づいたね。

横に居てもわからなかったよ」

鈴、これ以上話を広げないで。

「見たらわかる」

和馬さんは、それ以上何も言わない。

沈黙が続く。

多分、私が何か言わないと話が続かない。

泳げるって聞く?

やっぱ無理とか言われたらどうしよ。

でも、楽しめるようにとは言っていたよね。

気配で鈴と直人さんが話しているのが判る。

聞くなら今。

「あの、和馬さん。私、ビート板で泳げる?」

バスタオルの隙間から顔を出して聞く。

「顔を水につけずにやってみようか」

顔をつけなくても泳げるの?

「花音がやるというなら付き合うよ」

少しくらいなら、やれる。

いや、ここまできたらやらなきゃいけない。

「教えてくれる?」

人魚姫みたいに華麗には出来ないかもだけど。

足掻けるだけ足掻いてみる。


【コーチの教え】

「先に断っておくけど」

遊泳コース。

ビート板を持った私の前で。

同じようにビート板を持った和馬さん。

「スイミングとか正式なやり方じゃ無い」

頷く私。

鈴は、直人さんに耳打ち。

直人さん頷いて、2人でプールから上がった。

「まず、泳ぐより、浮くことから始めよう」

和馬さんがビート板を持つ。

「ビート板は、なるべく奥で持つ」

和馬さんと同じように持った。

「なるべく肩より上をビート板に乗せる感じで」

和馬さん、顔は付けてない。

それなのに浮いている。

「そのままビート板に顔が乗った辺りで力を抜く」

え?それ怖くない?

離れた場所では、鈴たちが遊んでいるのが見える。

「大丈夫。下からビート板を支えているから」

和馬さんの手がビート板の下にあるのが判る。

なら、出来るかも。

恐る恐る、足を床から離す。

「あ、浮いている?」

顔は水面より上。

なのに、足は床に付いてない。

「そのまま、ビート板動かすと」

和馬さん、ビート板を持ったまま移動。

うわ、進んでいる。

「そう、これが泳ぐ感覚」

もちろん、すぐに足は付く。

すると止まる。

和馬さんを見ると頷くからもう一度。

ゆっくり動く。

何度目かで、確認はしなくなって。

それでも、ゆっくり進む。


【いつの間に】

途中で真横から。

「へえ。意外に浮くんだ」

「本当だ」

と言う声だけが聞こえた。

「花音、もう一人で浮いているよ」

気がつくと、和馬さんの手が離れている。

「あ」

鈴たちのいたプールの真ん中。

自分で、浮いている。

「まずは、この感覚と。

少し体を真っ直ぐだけ意識して。

足が床についたら。

次はビート板に飛び乗る感じでやって」

足が徐々に床に付く。

床を蹴る。

また、浮く。

また足が付く。

床を蹴る。

浮く。

ちょっと楽しいかも。

和馬さん、歩きながら着いてきてくれている。

だから、怖くない。

「花音〜」

ふと気づくと、遥か後方から鈴が叫んでいる。

「そこ、もうゴール」

いつの間にか、25メートル進んでいたらしい。

「怖く無いかも」

怖いというより、わくわくの方が今は強い。

「同じ調子で戻れる?」

和馬さんが頭を撫でてくれる。

「うん、戻る」

鈴たちが手を振っているのが見えて振り返す。

「行くよ」

鈴たちに声を掛ける。

鈴たちが反対の端に移動しているのが見える。

たぶん、そこがゴール。

さっきより、床を蹴る足が強い。

ほんの少し顔に水が掛かる。

今までだったら、パニックになっていた場面。

でも、楽しいから気にならない。


【辿り着いた】

ゴールでは、鈴が両手を振りながら待っていてくれた。

「すごい。すごい」

ビート板が壁に付く。

同時に隣で鈴からのハグ。

顔が濡れているからか、ちょっと冷たい。

「出来た」

初めて溺れることなく、往復。

実感が後から湧いてくる。

泣きそう。

でも、ここで泣くのはまだ早い気がする。

和馬さん頭ぽんぽん。

ちょっとだけ泣いたかも。

でも、顔が濡れているだけな気もする。

「てかさ、これで何で進むん?」

隣で直人さんがビート板を持って乗ろうとしている。

「あ」

直人さん、ビート板を乗り越えて半回転。

ドボンという大きな音。

ビート板だけが浮いている。

「どうしよ」

鈴、声の割には慌てていない。

和馬さん、直人さんは助ける気がないらしい。

水の中で体勢を立て直した直人さん。

数秒後に無事に顔を出す。

「水、飲んだ」

咳と同時に声が出ているから、大丈夫そう。

もうと言いながら、鈴が背中を摩っている。

学校のプールでもよく見た光景。

あれで怖くならないから不思議。


【違いはどこ?】

和馬さんの腕を突く。

「なんで沈んだの?」

鈴もこっちを見ている。

直人さん、プールから上がって顔を洗いに行った。

「ビート板が立ったら無理」

違いがわからない。

「ビート板、手前に持つと勢いが逸れるんだよ」

和馬さんが、ビート板を浮かべる。

「花音、真ん中押して」

ビート板の真ん中を押すと。

少し沈むけど、また戻る。

「じゃあ、鈴ちゃん、端っこ押してみて」

今度は鈴がビート板を押すと。

ビート板がひっくり返った!?

細かいことはわからないけど。

和馬さんの言うこと聞くのが大事なのは判る。

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