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褪せた白薔薇

 烺皇763年5月5日。


 東南に円を描くように広がる岩山の上で、アルバは新たに国境に構築された敵の陣地を眺めた。

 北に向かって山を下れば、すぐに今まさに敵対している国の領土だ。


(やや遠回りにはなるが、右翼から騎兵を走らせ、そのまま背後を取れば敵を殲滅できる⋯⋯)


 木製の拒馬が巡らされ、その奥には堀を巡らせた、騎兵への準備が万全の陣を見て、直ぐにアルバはその弱点を見つけた。


 たしかに、正面から馬に乗って突破することは出来ない。

 しかし、なだらかに東南に広がる山を利用して、に回りこみ、陣の後方の小さな森林に兵を隠し、拒馬も堀も無い平坦な道を使えば、騎兵が最大限に活躍出来る。


「将軍、如何なさいますか」


 アルバの命令を受けるため、伝令が隣で片膝をついて拱手した。

 伝令の目は美しいアルバの横顔に集中し、やや頬を染めている。


 この大陸ただひとりの女性将軍と謳われるアルバの容姿は美しく、風に靡く髪は煌めいていた。


 白縹の絹の上衣と、踝まで覆った裳を着用したアルバは、誰がどう見ても女性にしか見えない。


 アルバは伝令に目を向けず、敵陣を観察したまま口を開いた。


「第二部隊と第三部隊を迂回させ、陣の背後を取らせよ。突撃の合図は明日の早朝、こちらから狼煙をあげる。遊軍は逃げた敵を追い、本隊は正面から速やかに攻め落とす」


「かしこまりました」


 女性のものとも男性のものとも聞こえる柔らかくやや高い声で指示を出す。


 伝令は一言返事をするとその場から足速に立ち去っていった。


 アルバは振り向いて山を下る伝令を眺め、空を見上げた。


 

 空はどんよりとした厚い雲に覆われ、もう時期日の入りの時間だが、太陽は雲を挟んでほとんど見えない。


 もし明日もこのような天気なら、狼煙を上げても白煙に気が付かないだろう。

 だがアルバの部下達は、たとえ煙が見えなくとも、合図の音を聞いただけで馬を駆け出し、勇ましく戦うだろう。


 ()自身に、配下をそのように鍛え上げたという自負がある。

 

 なぜ敵がわざわざこちらを挑発するような行動に出たのかは分からない。

 だが国の脅威となりうるなら、事前に処理するのが彼の使命だ。


 それに、今回の敵の行動はアルバにとって都合が良かった。


(それにしても⋯⋯)


 後ろを振り向くと、馬にまたがった精強な兵士達と槍を携えた歩兵が待機していて、大鷲の羽を描いたカリスタン王国の国旗が、風にはためいている。


(私は一体いつまで女のフリをして生きればよいのだ)


 自分の胸に手を当て、問いかけてみる。


 今着ている女物の服も、長い髪も自分の趣味では無い。


 物心着いた時には、母から女として育てられ、周りの大人達もアルバを女だと信じて疑わなかった。


 だがアルバ自身は自分が男であると自認していた。


 それは母から直接、なぜ自分を周りに女だと偽るのかその意図を聞き、受け入れていたからである。


(もういいのではないか)


 成人してからというもの、数え切れないほどそんなことを考えた。

 

 何度も男達から迫られ、やんわりと断ってきたが、とうとうこの国の国王とその息子からも色目を使われるようになった。


 嫌悪感、という感情が湧くわけではないが、国の権力者に性別を偽っていることを知られれば、自分だけでなく身内にも災禍が及ぶ恐れがある。


 声と顔が中性的に育ったのは、ほとんど奇跡と言えた。

 体格もそれほど大きくなく、スラッとした細身の身体は母親からの遺伝と思われる。


 しかしひとたび身につけた布を脱ぎ、戦場で練り上げられた肉体が顕になれば、部下達がアルバに抱く幻想も砕かれることになるだろう。


「さてと⋯⋯」


 もう時期日が暮れる。

 奇襲部隊を動かすには闇夜はうってつけだ。


 アルバは1度山を降り始めた。

 このままずっと居ると、敵に見つかる恐れがあるし、何より夜を越す準備をしていない。 

 

 すでに指示が伝令から伝えられ、第二部隊と第三部隊以外は野営を張り始めている。


 奇襲部隊はふたつの部隊それぞれ合わせて100人。

 皆、白い鎧を付け、それぞれの愛馬の横に立ち、手網を握っている。

 移動は馬を引いて徒歩で行う。

 蹄鉄を外し、は馬銜(はみ)を噛ませ、できる限り音を立てないようにした部隊が、アルバが山を降りるより先に移動を開始した。


 アルバはなだらかな斜面を、革の靴で踏ん張りながら降りた。

 途中、軽装の男がひとり向かってきた。


 男は腰に差した剣以外は何も持たず、ほとんど手ぶらで登ってくる。


(モルトか)


 男の特徴的な深緑色の髪が徐々に大きく見える。


 男の名はモルト。小柄な体格と、頬が常に赤らんでいるのが特徴の、アルバの従者てある。


 アルバの秘密を知る数少ない人物でもあるモルトは、幼い頃からアルバの身の回りの世話をしてきた。


「どうしたんだモルト。おっと」 


「わわっ。危ないですよ」


 駆け寄るように足を早めると、アルバは躓きそうになり、急加速したモルトに支えられた。

 

 肩を支えられたまま、アルバは赤面して咳払いをした。


「すまない。石に足を取られてしまった」


「言い訳はいいので⋯⋯早く離れてくれませんか」


「むっ」


 そう言われ、姿勢を正す。


「それで、何の用なんだ」


 服を払いながら、また降り始めた。


「ちょ、ちょっと」


 モルトは慌てて反転すると、今度は自分が転びそうになったが、何とか踏ん張って耐えた。


「チッ」


 アルバの理不尽な舌打ちがモルトの耳に反響する。


「なんで怒ってるんですか⋯⋯」


「お前が主人をいたわらないからだよ」


 モルトを横目で一瞥し、そのまま歩き続ける。

 呆れたモルトは足を止め、大きなため息を吐いた。 


「そんな我儘なお嬢様みたいなこと言わないでくださいよ」


「そんなこと言ってない。ただ心配してくれてもいいじゃないかと言ってるんだ。全く⋯⋯いつからそんな冷たい男になったんだ」


 モルトが慌てて後を追って並ぶと、アルバは尚も不機嫌に責めた。


「勘弁してくださいよ。ただでさえ僕は侯爵や将軍方に目をつけられてるんですから。アルバ様に近すぎて」


「⋯⋯それは私が女だからか?」


「ええ、その言い方ややこしいですけど、まあそういうことです。貴方を女性と信じている人達にとって、僕は邪魔でしかないんですよ。多分今でも下から何人かに睨まれてます」


 モルトが顔を顰めると、アルバは苦笑いし、声を漏らした。

 確かに、下に居る兵士達の注目は、ふたりに集まっているようだ。


「ところで、結局なにしに来たんだ」


 改めて、モルトが山を登って話そうとした要件を尋ねた。


「それが⋯⋯()将軍が異議を唱えてるんですよ」


「はぁ、右将軍が⋯⋯」


 アルバは小さな人溜まりの中から、右将軍を探した。

 隊の後方で従者に馬の手網を握らせ、自身は野営の指示を出している大柄な中年男がいる。

 男は防具を脱ぎ、白をベースに襟と首元が茶色の麻布の服を着ている。 


 カリスタン王国右将軍、常にアルバの見張り役として国王から派遣されている将軍の彼は、時々アルバの決定に異議を唱える。


「彼は何が不満なんだ。そもそも、この北方の防衛と攻略は私に一任されてるんだぞ。私に軍権を与えた国王が監視役を派遣すること自体腑に落ちない」


 腕を組みながら、気を悪くしたアルバが足を止める。


「お前はどう思う、モルト」


 先を進むモルトに語りかけた。

 モルトは足を止め、難しい顔をし、歯がゆそうに下唇を噛みながら、アルバの女性としか思えない容貌と、スカートの裾に、何度も眼球を運動させた。


「まあ、作戦に口出しするのは越権行為ですよ。恐らく、王が監視役を立てたのは軍に関しての事じゃありませんから」


「ああ、そういうことか。わかった」


 自分の全身を何度も見定めるようなモルトを見れば、その監視役の理由(わけ)を察するのは容易い。


「でもまあ、右将軍はそれが気に入らないのでしょう。将軍でありながら王の私的な事情で女性将軍の色恋沙汰を監視するなど。だからよく貴方につっかかるのですよ。それともし献策が貴方に認められればそれが手柄になりますし」


「全く⋯⋯くだらない⋯⋯」


 呆れ返ったアルバは、小石を下に向かって蹴り飛ばし、また歩みを再開した。


「で、今度は何が気に入らないのだ」


「はぁ」


 モルトは今度は斜め後ろを歩いた。


「敵がほとんど居ない陣を攻撃するのに、わざわざ騎兵を遠回りさせる意味はあるのかと」


「そんなもの、騎兵の機動力で速やかに制圧するためだとでも言っておけ」


「⋯⋯えっ、僕が言うんですか」


「私はあの男は好かん」


「はぁ、乙女心は難しいですね」


 ははは、とモルトが笑うと、アルバは左手を後ろに伸ばし、モルトの腰部分を掴んで引き寄せた。

 

 突然のことに驚いたモルトは、下り坂で引き摺られながらも、転げないよう体を反らした。

 腰と腰が触れそうなところで、アルバは振り返って薄気味悪い笑みを浮かべた。


「そうだろう。乙女心は秋の空だ。ちょうど私も今お前をこのまま突き落としたくなった」


「ちょっ!? 待ってくださいほんと、謝りますから」


「ふっ」


 顔中に汗を滴らせながら慌てるモルトから手を離す。

 モルトはバランスが崩れて転けそうになったが、踏ん張って耐えた。


「冗談だよ。ここでお前を葬ったりしたら、あの男に報告されてしまう」


「それつまり見張りが居なきゃやってたってことじゃないですか。ああ右将軍さまさまだ⋯⋯」


 モルト手を何度も擦り合わせて、合掌した。

 その祈りの先は勿論右将軍だが、彼はなにやら話し込んでいてふたりを見ていない。


 山を降りると、道中のやり取りを見ていた兵士達の、羨望の色が濃い視線がモルトに集まる。


 ばつが悪いモルトは肩をすくめながら、アルバに続いて兵士達の中を通り過ぎていく。


「皆、既に聞いたと思うが、結構は明日の早朝。それまでは交代で見張りを立てて休んでくれ」


 兵士達の中に混ざりながら、アルバが声を張り上げる。

 アルバの指示を聞いた兵士達は肩の力を抜き、それぞれ夜を越す準備を始める。


 アルバとモルトに向かって、右将軍が人混みの中からやってきた。


安北(あんほく)将軍、お伺いしたきことが」


 安北将軍とは、アルバに与えられた官職名である。


「なんですか、右将軍殿」


 大柄な将軍を見上げながら言う。

 アルバの目は、右将軍を煩わしく思っていることを隠そうとしない。

 右将軍が視線に含まれた内心を想像すると、なんてことの無い返事も侮蔑に聞こえた。


「なぜ備えが万全では無い敵陣のため、わざわざ兵を分けるのですか。それも山を迂回させて」


 アルバと違い、右将軍は感情を表に出さないように心がける。

 アルバ自身にそのつもりはなくても、自分がアルバに対して無礼を働いたと王に知られれば、罰せられるのは間違いない。


「ただ万全を喫するため、敵が少ないからこそ兵を分けて包囲するのですよ」


「そんな事せずとも、今すぐにでも正面から踏み潰してはいけないのですか。堀と拒馬で道は限られていますが、それでもすぐ方は付きます」


 薄ら笑いを浮かべるアルバに、右将軍は目を吊り上げながら反駁した。 

 あからさまに、ただ異議を唱えたいだけのその発言に、アルバは反論する気力が失せた。


「ええ、では右将軍の兵を引き連れて今からでも攻め込めばよろしいかと。ただもし万が一被害がそれなりになれば、その後はどうなるかわかりませんが」


 淡々と言うと、返事を待たずにアルバは体を左に向けて歩き出した。

 モルトはすぐさま、右将軍に一礼してアルバの後ろに続いた。

 その顔は笑うのを堪えており、口元を手で隠した。


 既に自分のために用意された天幕の中にふたりが入って行くのを、右将軍は見届けてから唇を噛んだ。


「全く⋯⋯あの方は何を考えているのでしょうね」


 円錐型の天幕の中に入ったモルトが、木でできた円柱の椅子に腰を下ろしながら言った。

 アルバは中で待機していた部下に食事を持ってくるよう支持し、同じように椅子に座った。


 ベージュ色の天幕の中は質素で、円柱の椅子と小さな机、そしてアルバの白銀の鎧と戟を飾った鎧立てと、簡素な綿の布団だけが用意され、それらを机の上に置かれた蝋燭が照らしている。


「まあ気持ちは分かる。あの野営、見張りは何人か居たが今の所敵兵の数は少ない。今すぐにでも容易く潰すことは出来る」


「しかし、アルバ様に言わせればそれは二流の考え。なのですよね」


 顎を引きながら、ニヤリとモルトが笑う。


「お前⋯⋯さっきから性格悪くなってるぞ」


「しょうがないじゃいですか。僕もあの人嫌いなんですよ」


「聞かれてても知らないからな⋯⋯」


 呆れ顔になりながら、アルバは腕を組んで首を傾げ目を閉じた。



(まあ、主人の私が露骨に嫌っているのだから、モルトも同じようになるのは仕方ないか⋯⋯)


 天幕の外から、食前酒が入った杯を両手に持った男がひとり入ってくる。

 男はふたりに目を配りながら、机の上にふたつの器を置いた。


「おい」


「はっ。いかがなさいました」


 背を曲げて杯を置いた男に声をかけると、一瞬で背筋が伸び返事した。


「この男の分はいらないぞ。すぐに出ていかせる」


「は、はぁ。承知しました」


 アルバは目線はモルトに向け、右手の人差し指で奥にある器を指さした。

 

「えっ?」


 それを聞いて、モルトは目を見開くと、男が杯を回収する前に酒を飲み干した。

 小さな杯で、強い酒では無いが、一気に飲み干すと頭と胃に強い衝撃が生じる。


 モルトは目を強く閉じながら、空になった器を男に差し出した。

 器を受け取った男は足早にその場から立ち去った。


「頭痛い⋯⋯」


「意地汚いことするからだ馬鹿⋯⋯」


 アルバはそう言うと、自分の器に手を伸ばし、一口酒を飲んだ。


 醸造された酒の香りが、ツンと鼻と喉を突き抜ける。

 その感覚に浸りながら、もう一度口に含む。


 3分の1ほど残った杯を戻し、頭痛が引いて元通りになったモルトに目を向けた。


「実は男だと、王に告げれば私はどうなると思う」


「えっ、それはまぁ⋯⋯殺されるか牢にでも入れられるかでしょう」


 突然の問いかけにも関わらず、モルトは即座に答えた。


「やはりそうか⋯⋯ま、言うつもりは今のところないがな」


「そうですよ。私から見ても、王様や重鎮達の前以外では、貴方は貴方らしくいられていると思いますよ」


「私らしくとはどういう事だ?」


 アルバが残していた酒を、モルトは奪って飲み干した。

 何気なく行われたその行動を眺めながら、アルバは溜息を漏らす。


「今のこの状態ですよ。私の目には特に無理しているようには見えません」


「確かにその通りだ⋯⋯私は今、自分を意識的に偽ろうとしていない」


「そうそう、慣れなのか元々の気質なのか不明ですが、少なくとも王の前以外では、自分らしさが出ていると思います」


「そういうものか」


「ええ。都にいる時は別ですが」


 意味ありげに言うと、モルトは立ち上がって天幕の中から退出した。


 ひとりになり、空になったふたつの杯をぼんやりと眺めていると、夕食が運ばれた。


 麦飯のおにぎりと焼いた川魚という、随分と質素な食事だ。


 串に刺さった魚の腹をひとかじりしておにぎりを頬張る。


 外からは物音が聞こえるが、この天幕の中で発生しているのは、アルバの食事音だけだ。


 切り離されたかのように静寂に包まれた空間にひとりでいると、普段考えないようなことを考えてしまう。


(明かしてしまえば⋯⋯面倒な事からは開放される⋯⋯それこそこの生涯からも⋯⋯いや)


 目を閉じて首を左右に振る。

 考えることがないと、どうしても嫌な事ばかり浮かび上がる。


 今アルバの脳裏には、自分を守るため王に頭を垂れて平伏し、ひたすらに自分と子の命の保証を懇願している母親の姿が浮かぶ。 


(こんな事ならモルトを退出させなければよかった)


 淡い期待を抱きながら目を開けても、当然誰の姿も見えない。

 アルバはほんの少し口の端を上げて笑った。







 翌朝、日が昇る少し前に目が覚めた。

 天幕を突く疎らな雨音が、アルバの脳を活性化させる。

 速やかに着替えて外に出ると、腰に剣を差したモルトが出てすぐの場所で待っていた。

 まだ太陽は顔を出さず、薄明の空には星も確認できる。


「随分早いな」


「いやぁ、あれからひとりで飲みすぎちゃって、頭が痛くて目が覚めたんですよ」


「⋯⋯言っておくけどお前に病気休養は無いからな」


「鬼ですか貴方は⋯⋯」


 アルバは頭を撫でながら、苦笑いした。


 ほとんどの兵達はもう目覚めており、号令がかかるまでの時間を休息にあてている。


 アルバはたまたま近くで自分を見ていた伝令を手で招いた。


「いかがされました」


「私とこの男は先に山から敵陣を見張る。部隊の準備が整い次第、私の愛馬と装備を持って来るんだ」


「はっ」


 伝令は拱手し、右将軍の元へ向かって走り出した。

 アルバとモルトが居なくなれば、指揮を執るのは彼である。


 アルバは伝令と右将軍がどんな会話をし、右将軍が自分にどんな目を向けてくるのかを気にもせず、山に向かって歩き出した。


 微睡(まどろ)んだ空は少しずつ朝日に包まれ、白く青く染まっていく。

 朝の肌寒い風を体に受けながら、朝食代わりに携帯していた干し肉を齧った。


 小石が転がる山を登りながら、昨日転けそうになった場所を過ぎ、アルバは頬を染めた。


「アルバ様、ひとつよろしいですか」


「どうした」


 後ろをついてくるモルトが口を開いた。

 アルバは足を止めずに振り返った。


「昨日聞きそびれたのですが、右将軍の仰っていた通り、わざわざ兵を分けて攻撃を遅らせなくても、昨夜にでも攻め込んでも良かったと思いますが」


 モルトは、アルバから目を逸らしながら言った。

 

「あの陣を落とすだけなら、それでも良かったんだ」


 前を向いたアルバは、視線を落とし足元を眺めながら答えた。

 

 アルバの背中に、いつもの威厳や雄渾さはなく、どこか引け目があるのか、背が丸くなっている。


 その姿に違和感を覚えたモルトが、駆け足で横に並んだ。


 横から覗いたアルバの瞳に光はなく、神妙な面持ちでどこか虚空を見つめているようにも感じられた。


「アルバ様?」


「備えが万全でない陣を落とすだけなら正面から軍勢を向ければすぐに敵は戦意を失い敗走する⋯⋯」


 アルバが呟いたのを聞いて、モルトは目を見開いた。


「それなら何故わざわざ」


「それは私の目的が陣を落とすことではなくあの陣にいる敵兵の殲滅だからだ⋯⋯」


「え? 今なんと」


 アルバの口から発せられた声は小さく掠れていた。


「戦いで最も被害が出るのは的に背を向けた時だ⋯⋯我々が正面から圧力をかけて敵を離散させ、回り込ませた騎兵で背中を斬る」


 要するに、陣にいる敵を皆殺しにするつもりだ。

 モルトはそれが本当にアルバが考案したのか、分からなくなっていた。


「なぜ⋯⋯貴方はいつも無用な追い討ちはしないはず。悪戯に敵を殺しても意味は無いと」


 モルトの呼び声に、アルバは反応しなかった。

 まるで周りには誰もいないかのように、淡々と山を登った。


 モルトの目に映る背中は、何か取り憑いているかのように重苦しく、悲観的な雰囲気を感じさせた。


 山頂から敵陣を見下ろすと、昨日に比べて少し人が増えていた。

 とは言っても、作戦に支障をきたす程の人員は確認できず、この山の上に兵を並べるだけで、敵は撤退すると思われた。


「アルバ様っ、お待ちを」


 途中で足を止め、置いていかれたモルトが走って合流した。

 全く息を切らしていないモルトは、アルバの斜め前に進み出て言った。


「僕は敵に情けをなどとは思っておりません。しかし、貴方がその決断に至った経緯を教えていただきたい」


 力強い眼差しでアルバを見つめると、アルバはその瞳を一瞥した。


「このような座興を二度と起こさせないためだ」


 それは普段男としては高い声を出すアルバからは想像のできない、低く重たい声だった。


「といいますと⋯⋯国境に陣を造らせないためですか」


「いや⋯⋯このカリスタン王国に逆らう気を失わさせるためだ」


 瞬きをすると、アルバの瞳はさらに暗く、無機質なものに変わった。

 それを確認し、モルトは額から汗を滴らせる。


「もう疲れた⋯⋯お互いの国が攻めてに欠ける今、王が停戦を申し入れるつもりが無いのなら、現場の私達が敵の戦意を削ぐ他ない」


「それはつまり⋯⋯人的被害を可能な限り増加させ、敵の臨戦態勢を崩す算段で?」


「まあ⋯⋯そうとも言えるかもしれない。というかそうだ」


「と、おっしゃいますと?」


 答える前に、アルバは後ろを振り向いた。

 既に行軍を始めた1団が、山を登り始めている。

 軍の中央には、アルバの愛馬である白馬がおり、蹄鉄を鳴らしながら進んでいる。


「私がしたいのは、もっと敵に⋯⋯いや、敵味方に恐怖を与えることだ。厭戦感情を強く抱かせるような。たとえば敵を全員切り捨て、その亡骸を串刺しにして陣地に旗がわりに突き刺しておくとかな」


「そ、それは⋯⋯」


 モルトは顎を引きながら、1歩後ずさった。

 今朝、厳密にはこの山を登り始めてからのアルバの様子は、初めて見る状態だ。


 アルバがこの山に1歩踏み入れた時点で、いや、昨日ひとりで敵陣を伺ってる時から、そのような残虐行為を考えていたと思うと、背筋が凍った。


「だが無論、そこまではしない。必要ない行為は味方の指揮を下げるだけだし、敵であってもその亡骸を弄べば国内での私の評価が急落するだけだ。そしてなにより、敵でも辱めるような行為はしたくない」


「ではなぜ、そのようなことをお考えに?」


 恐る恐るモルトは唇を震わせながら尋ねた。


「決まっている。こっちの戦意が落ちないのであれば、敵の戦意を挫くしかないからだ」


「アルバ様⋯⋯」


 アルバの苦労と葛藤はモルトにも理解出来た。


 成人してから幾度となく戦場に赴き、前線で戟を振るってきたアルバは、肉体的にだけじゃなく、精神的にも参っているのだ。


 とくにアルバはその立場と秘密から、国内にも気が休まる場所は限られている。

 それこそ、昨日寝泊まりした天幕の中でも、誰かが覗いて秘密を知られれば身に何が降りかかるか考えつかない。


 右手から朝日が姿を現している。

 朝一番の陽光はふたりの姿を鮮明に照らしだした。


「アルバ様⋯⋯この任が終わればお暇をいただきましょう」


 モルトの一声で、アルバの瞳に光が戻った。


「それは無理だろう。王が許可するはずが無い」


 アルバは従者の気遣いに感謝しつつも、ため息を吐きながら微笑した。


「いえ、そこは私にお任せ下さい。考えがあります」


「⋯⋯なら期待しないで待っている」


 今度は鼻息を漏らしながら微かに笑った。

 モルトは安堵してそっと胸を撫で下ろした。


 部隊が山頂付近にまでやってきたのを確認し、ふたりは軽く山を下った。

 山頂手前で部隊と合流し、運ばせて置いた装備を身につけた。

 特注で作らせた白銀の鎧を頭から被り、鼻から上を覆う仮面を装着する。


 昨日不満を漏らしていた右将軍の部隊は、後方にいる。

 

「右将軍に伝えてくれ、我々が山を下り始めたところで狼煙をあげてくれと」


 近くにいた兵士に伝えると、兵士はさらにそれを伝令に伝え、伝令が後方へ向かった。


「よし⋯⋯じゃあ今日も頼むぞ白龍」


 全身が雪のように白い愛馬を撫で、跨る。

 いつもなら、愛馬にも馬鎧を着けるのだが、今回アルバが前線に立つ予定は無いのでしていない。


 右将軍の部隊を残し、アルバの軍勢は山頂に着陣した。

 山の頂上にカリスタン王国の旗が靡くのを確認し、下に居る敵軍はようやく危機を察した。

 見下ろす先の小さな人影が慌ただしく動く。

 

 アルバの見立て通り、敵はろくな備えを施していない。

 直属の部隊を連れて山を降り始めると、案の定敵は交戦の構えを見せず北に向かって逃走を始めた。


 その直後、山の上から爆発音が響き、白煙が空に向かって打ち上げられた。

 狼煙に呼応して、敵陣後方の森林に伏せていた騎兵隊が駆け出す。


 戦意を失い逃走を図る敵にとって、それは対処できるものではなく、ただ追いつかれないように祈りながら走るだけだ。 


「行くぞ。制圧を開始する」


 アルバが右手をあげて振り下ろした。


 一団はゆっくりと山を降り、敵陣に近づく。


 もぬけの殻となった敵陣を落とすのに苦労は無い。

 拒馬を引き倒し、堀に木の板で橋をかけ陣に入る。


 見張り台や野営に火をつけ、残った兵糧や武器を徴収している皆を横目に、アルバが見つめる北の地では、逃げ惑う敵兵が配下に追い回され、次々と矢が突き刺さり倒れていく。


 馬の上から敵の背を討つ彼らは、ただアルバの命令を遂行しているだけであり、決して本人の気質でその行為を楽しんでいる訳では無い。


「いやあお見事、昨日は大変失礼を申しました」


 後ろから鎧が擦れる音を放ちながら、右将軍が声をかける。


「一兵たりとも逃がさぬその苛烈なお心、某感服致しましたぞ」


 それは皮肉に聞こえた。

 だが右将軍の真っ直ぐな目と嬉しそうに口角を上げた姿を見ると、本心であることがわかった。


「では彼らの首を重ねて串刺しにし、敵の城の前で見せつける手伝いをしていただけますか」


「えっ、いやそれは⋯⋯」


 狼狽えた右将軍を見て、何に対して抱いたのか分からない溜飲が下がった。


「冗談ですよ⋯⋯彼らの遺体はこの陣と共に焼き払うので、後で回収だけお願いします」


 アルバが話しながら仮面を外すと、右将軍は返事もせず、小走りで自分の配下に指示を伝えに向かった。


 右将軍と入れ替わるように、今度はモルトがやってきた。


「これほど見事に策が決まれば、さぞお喜びのことでしょうね」


 腕を組みながら北を見るモルトの言葉には、右将軍の時とは違って皮肉がたっぷりと含まれている。

 だがこれは、直接諫言することをはばかってのものであって、アルバを想っての言葉だ。


 アルバは答えない。

 遠い視界の先で、騎馬達の脚が止まる。

 逃げる敵は粗方討つくし、運良く逃げられた者達は随分と離れている。


 馬で追えば追いつけない距離では無いが、この作戦のために敵国へ深追いしようと考える兵士はいなかった。


「ここが敵の軍事施設だから良かったものの、女子供が居ると知っても貴方は同じことを考えましたか」


「当然だ⋯⋯」


 敵を討ち果たした騎兵達が、ゆっくりとアルバの居る野営に向かってくる。

 彼らと交差して、右将軍配下達が亡骸を回収しに向かった。

 兵糧を運ぶために置いてあった荷車を引き、敵兵の亡骸を乗せていく。

 まだ息が残っているが、動けなくなった敵兵は腰の剣で身体を突き刺し、絶命させた。


「貴方は、この場所を利用して予行演習をしたかったのですね。大きな城なら敵がすぐに逃亡することはありませんが、小さな村などなら、攻めれば敵は大きな城を目指して撤退する。そこを女子供老人構わず殺す。それが⋯⋯貴方の目的」


 モルトの目が鋭く光る。

 アルバが顔を動かすと、モルトと目が合った。


「ああそうだ。よく分かったな」


「何度も戦場に立ち幾人も葬ってきた私が、今更綺麗事を言うつもりはありせんが、そんなこと、敵の骸を弄ぶのと何ら変わらず、敵は余計に我らに怨嗟を抱くのみ。そして貴方の名声が落ちるだけです」


「さあ、後者はともかく前者はやって見なきゃわからない」


 そう言ってアルバは回れ右をし、撤退の意志を固めた。

 伝令にこの陣と亡骸に火をつけるように指示と、遊軍の騎兵が自分の周りに集まってきた。


「皆ご苦労だった。褒美は弾む。負傷者は居ないな」


 馬にまたがった者たちは、それぞれ顔を見合わせお互いの安否を確認した。

 騎兵達は皆、機動力を生かすため、胸当てを付けた程度だが、傷一つ負っていない。


「では帰ろう。後ろの部隊は時々敵が現れるか確認するように」


 アルバはモルトを置いて、馬を引いて帰路を進んだ。


 陣から黒煙が上がり、木製の設備と人が焼ける臭いが、アルバの鼻腔を刺激する。


 自分の行いも考えも、間違っているとは思わない。

 北と南で隣接する大国を、地図上から消滅させるまで打ち破るのは今の所現実的では無い。

 アルバ達カリスタン王国の敵は、この北に位置するユグリ王国だけでは無いのだから。


(人が焼ける臭いは、何度味わっても慣れるものじゃないな)


 燃え盛るように照り輝く朝日と、更にもうひとつ黒煙と炎を上げる輝きが、対照的になっている。


(私の心は、あの炎そのものだ⋯⋯暗く混沌と⋯⋯邪悪な物が混在している。願わくば、太陽のような輝きを取り戻したいものだ)





 ────


 王都リーネル。カリスタン王国の首都であるこの街は、南に大河が流れ、西は沼地が広がり、北と東を山々が囲う、けして住みやすい土地ではなかった。


 ただ、沼と山と川という防衛に適した地形に恵まれたことから、建国以来遷都が行われることなくこの地に君臨し続けた。


 街は他の都市のように正方形の石壁で囲われている。

 他の都市と違うのは、壁が二重になっている点だ。

 まず外周を正方形の壁が囲い、中には市街地が広がる。

 その市街地から、正方形の中心に向かうと、小高い丘のような地形が広がり、そこには煉瓦に漆喰の壁、朱色の柱が何本も作られた王宮があり、王宮の周りには、同じような瓦と漆喰の壁で作られた家臣達の住まいが並ぶ。


 その丘の周りを、外周より少し高い壁が囲っている。

 つまり、王宮へ行くには、城壁を2つ超えなければならない。


 戦場から帰ってきたアルバは、背より高い戟を背負いながら、今まさにその2つ目の城壁を潜り、自分の屋敷がある王宮の敷地内に向かって石の階段を登った。

 王宮や屋敷は、朱色の塀で囲われているが、これ自体防御機能は無く、正門の守衛を超えれば王宮にはすぐ手が届く。


 見栄えが悪いからと、王宮を囲う壁は上部を瓦の屋根で覆うだけで、鉄串の類いは施されていない。


 階段を上がって門を抜けると、真正面に王宮が見える。

 王宮への道は、階段と同じ石で整備され、その先には大きな唐門が映る。

 白亜の壁に黒の屋根と赤褐色の門のコントラストが、まず見るものを圧倒する。


 だがアルバの足は正面の王宮には向かわず、左を向いて歩き出した。

 幅5メートルほどの王宮へ繋がる道から外れると、黄土の地面が広がる。


 アルバは左から時計回りに、塀に沿って歩いていると、後ろから息を切らしたモルトが迫ってきた。


「待ってくださいよ。酷いじゃないですか厩に僕だけ行かせて」


 モルトはアルバの愛馬を丘の下にある厩に繋いできたのだった。


「⋯⋯ご苦労だった」


 振り返って少しだけモルトを労ると、アルバはそのまま歩き続けた。

 家臣達の屋敷を超え、正面から見て塀の左端に最も近い場所に、アルバの住む屋敷はある。


 黄土の壁で囲われた屋敷は、木造の、寝室がふたつと居間と台所と風呂場だけの、簡素な創りだ。

 門の前には誰もいない。

 それもそのはず、アルバは安北将軍という立場にありながら、家にはモルト以外の従者は存在しない。

 アルバの部下達は皆、市街地に住み、戦に駆り出される時以外はそれぞれ別のものを生業としている。


 家の木戸を開けると、床には何を張っていない玄関が現れる。

 広めの玄関には、飯炊き用の竈がある。

 靴を脱いで玄関を少し上がると、板張りの軋む床があり、食事をとるためだけの居間があった。


 居間にはアルバとモルト用の机と椅子の他には、衣装を片付けるための葛龍と、冬場暖をとれるように小さな火鉢があるだけだ。

 玄関から居間に入らず左に行くとそれぞれの寝室がある。

 寝室のうちのひとつは、元々アルバの母親が使っていたものだが、その逝去に際してモルトに譲られた。


「はぁ」


 アルバは大きく息を吐きながら、椅子に腰をおろして、頭の高さを超える背もたれにもたれかかった。


 酷く疲れている。それはいつもの家の風景が少しぼやけて見えることから、認めざるをえない。


「すぐお茶を入れますので少々お待ちを」


 モルトは水瓶に入った水を鉄の鍋に移し、薪を竈にくべた。

 家に着いたせいか、肩が軽くなると同時に、全身に疲れが押し寄せる。

 疲れごと吐き出すような長い吐息を口から吐く。


(本当に、敵国の民を皆殺しにでもすれば、王は私を恐れてくれないだろうか)


 近頃は、考えることが無くなると、そんな事ばかりが浮かぶ。

 世界に悪名を残せば、王は自分を追放してくれるのでは無いかと。

 恐怖が強すぎると、王は命を狙ってくるかもしれない。

 だがそれも悪くないと思えるほど、アルバの心は窶れていた。


「どうぞ」


 アルバの目の前に、粘土を捏ねて作った赤褐色の湯呑みが置かれる。

 中は黒柿色の液体が注がれた湯のみを持つと、ほんのりと温かみを感じた。

 どうやら、湯を沸かしきる前に茶を入れたらしい。


 目配せだけして無言で茶を口に含むと、直後舌がピリリと火傷するような感覚に襲われ、顔を顰めた。


「なんだこれ、辛いぞ」


 湯呑みを傾けながら、その中身を確認すると、黒柿色の液体の中には、極小の粒が幾つも混ざっていた。


「え?」


 自分の分を注ごうとしていたモルトの手が止まる。


「へぇ。ゲント茶って辛いんですね。というよりアルバ様、ご存知なかったのですか」


「知らない⋯⋯」


 そう言いながら湯呑みを置き、ふと思い出した。


「そういえば少し前に宮廷の女に渡されたな」


「ああ、これ今金持ちの女性達の中で大人気らしいですから。なんでも飲んだら肌艶がよくなるとか」


 モルトとごく一部の人間以外は、アルバを女性と信じてやまない。

 その宮女も、善意で渡したに違いない。


「別に必要ないな。おい、悪いけど白湯を入れてくれ」


「はいはい。まあアルバ様はそのままで十分ですしね」


 モルトは冗談交じりにアルバの湯呑みを回収すると、中身を捨て湯だけを注いだ。

 同じく自分用にも湯だけをいれ、アルバの向かいに座って改めて湯呑みを差し出した。


「そうか。私をそのように褒めてくれるのはお前だけだ。モルト、お前を私の夫にしたい。今すぐにでも王に報告しよう」


 冗談には冗談をと、口角を上げながらアルバが言い放つと、モルトは瞠目して首を横に振った。


「すみません。それだけは本当にご勘弁を」


「そんなに嫌か。私も嫌だが」


「アルバ様どうこうというより、あの王に報告に行くのがまず⋯⋯」


「ああ⋯⋯」


 瞼を落とすと、アルバとモルトは同時にぬるま湯を口に含んだ。

 モルトはそのまま一息つき、アルバは口内に残った先程の刺激が消えるのを感じた。


「でもお前はその王様に私の休暇を申請してくれるわけだろう?」


 腕を組んでモルトを見据えると、彼はギョッと背中を反らした。

 モルトとしても、あの発言は勢いで言ってしまった感を否めない。

 そもそも、アルバの臣下である身では、王に謁見することすら難しい。


 だが戦場からの帰路、敬愛する主人のため、モルトは一策を思いつき、既に実行に移していた。


「ええ、策はあります。僕が王様に恨まれることも、アルバ様が名声を落とすことも無く休ませる策は。早ければ明日にでも王から許可が」


 モルトの吉報に、無意識に頬が緩む。


「そうか、ではその時はどこか旅にでも出よう」


 薄暗い部屋の壁を眺めながら、アルバの脳裏にはまだ見た事のない景色が広がっていた。


 




 



  

 



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