塚野の相談
一月にもう一話くらい上げたかったのがここまで送れるとは思っていなかった……
塚野の相談。
流石にこれを廊下で聞く訳にもいかず、俺達は屋上へと場所を移していた。
人が居なさそうなところとなると、ここか職員棟の最上階くらいしか思い当たらなかったのもあるが、職員棟の方だと最悪教師が来ることがあるかもしれない。そう考えた結果、消去法的に余った屋上という選択肢に判断を傾けた。
更に都合の良いことに生徒会の連中や風紀委員の連中も今日と明日はテストなだけあって見かけていない。
あいつらは正しく「やばい」。
どう形容しようがその一言に尽きる。
強いかどうかではなく、その在りかたがとんでもない連中。この時代であれだけ真面目を貫けるというのは本当に心から畏怖と尊敬を送れる。
まあそんな特殊な奴らは置いておいて、ひとまずテスト期間中というのが助けとなっているのか屋上に人影がなかったことは僥倖だろう。
「…誰もいなさそうだな」
「テスト真っ最中でしかも午前中に終わるんだから、特殊な奴とか対抗戦メンバーくらいしか残る奴なんていない」
さて、見る限りデリケートな相談でも他人に聞かれる心配のない状況は整った。後は塚野の相談を受けるだけ。
だが俺が塚野に対して早く話してくれだとか言って催促する気はない。
確かに俺としては早く終わらして家に帰って明日のテスト勉強だとか対抗戦についてどう動いた方が良いのかとか、やりたいことや考えたいことは他にもある。
「……」
俺が切り出さずに塚野のタイミングに任せているのは、単純に俺の用事と塚野の相談を天秤に掛けた時の優先度から鑑みたことだ。
言ってしまえば、俺の用事何ぞ今日中に家に帰ることが出来れば何時でもできることだが、塚野の方はそうも言えない。こういう相談はこうして場所が整っているから言いやすくなる訳であり、この機を逃せば他に聞ける機会は二度と来ないと思った方がいいだろう。
「そっちから、聞かないんだね。遠見君はいいとしても、黒谷君あたりは絶対最初に切り出すと思ったんだけど……」
「確かに俺はそういう性格だが、こういう時くらいは気長に待つさ。好きなタイミングでいい」
そもそも、こういった相談の経験が俺にあるとでも思っているのだろうか。
当然俺にこういった経験は無い。
小中学生時代で基本的に一人だった俺が、相談なんて他人と関わった先の状況になることがまず有り得ない。
それまでの他人との関係は、いわば搾取する側とされる側の関係だ。
そんな俺が相談なんてのは本当に柄じゃないことをしている。
出来もしないことを受けるなんて、本当に柄じゃない。
相談のような体験をしいて挙げるとすれば、一方的な独白と、言い訳の羅列。
俺の立場はいつだって聞き手なのだ。
そんな俺にできることと言えば、話を聞くことと意見を返すこと。
程度にもよるが、俺が力を貸すような状況は他ならぬ俺自身が否定する。
あくまで俺がするのは相談に対して意見を返すこと。
そんな俺が烏滸がましくも先を催促するなんてことはあっちゃいけない我儘だろう。
「………そっちのクラスはどうか知らないけど、私のクラスの対抗戦メンバー発表って金曜日だったんだ」
俺の言葉から少し経ってから、塚野はそんな風に切り出してぽつりぽつりと確認するようにゆっくりと吐き出していった。
「選ばれたのはやっぱり風香ちゃんで、その他の子はハンデの関係で出れないんだけど、もうほとんどそれで決定みたいな雰囲気になってさ、風香ちゃんの意思とか聞く気もないみたいで勝手に盛り上がった挙句に、確認も取らずにそれで決定されたの」
「それは……また……」
成程、よく聞くようなことだ。
周りが盛り上がっているために静城本人の意思なんぞ関係なく話が勝手に進んで行く。誰の所為だとか、誰が悪いとかではなく、それはその雰囲気を作り出した空気が悪い。
被害を被るのは静城と、関係する数人だけ。それ以外はその場の空気によってすべからく賛同し、流される。
何度も、何度も見続け、何度も晒されてきたその流れは途方もなく強力だ。
まるで抗うことが悪だと言われているようで、酷く気持ちが悪い流れ。
俺はそれをよく知っている。
「勿論最初は私だって風香ちゃんの意思を尊重しようって言ったんだけど、風香ちゃんが良いよってはばかったんだ。それはいいんだけど、その後で風香ちゃん先生に辞退を申し出たらしいんだ。毎回自分ばかり出るのは不公平だからって。けど―――」
「そこで問題が?」
「まぁ……うん。うちの担任って篠原先生でしょ?だから、こう……ぐいぐい意見を押し通されちゃったらしくてさ。……私はそこにいなかったんだけど、クラスの子の話じゃそれをさっき言い争ってた陽菜ちゃん―――朝野さんが偶然居合わせて拗れた結果……あんな感じに………」
「んー………経緯は概ね分かったけど、それにしても拗れすぎじゃね?」
遠見の意見に俺も同調して頷く。
確かに聞いてる側としては少し話が飛躍したような気がする。
事の経緯は把握できるが、肝心の拗れた部分が分からず仕舞いでは助言の一つも渡せない。
何とかしてその辺りを聞きたいが、俺がそれをしようにもこういう話は慣れていないため戦力外も甚だしいだろう。なら遠見に任せた方が効率はいい。
それに、俺が今割り込んでも話が混沌と化す。
かき乱すくらいなら、今はいっそのこと黙っていた方がいいだろう。
「う……あ、えっと……」
「なあ塚野、相談だっつっても肝心の拗れた所がわかんなかったら俺も黒谷も何も言えないぞー」
「ぐぬ…やっぱ言わなきゃだめかぁ」
遠見の言葉に塚野は目をキョロキョロと狼狽えた様子で、観念したのかため息を吐く。
大方、静城と朝野とやらの拗れ方に知られたくないことでもあったか、言いたくないことでもあったのだろうか。しかし遠見を前にしてそれを言わずに助言を聞くのは無理だろう。
遠見はどこまでも『いい奴』だ。
必要とあらば友達の為にもっと奥まったことまで踏み込むような奴が、遠見真司という人物だ。
そんな遠見だからこそ、深くは聞かないような場面でも容易く踏み込んでいく。
例えそれが結果的にその人を傷つけたとしても、遠見は間違いなくその上で救おうと手を伸ばすだろう。
そしてそれは恐らく、俺も塚野も例外ではないのだ。
「……はぁ。実はその拗れた部分なんだけど……」
そんな遠見を前に、塚野はさして時間もかからずに折れた。
「…大部分は私の所為なんだ。――――――なんと言うか、火に油を注いだ感じ?え、えーっと……本当は私もそこにいて二人が言い合ってるところに口を挟んだ結果見事におかしな方向へ話が逸れて行ったと言いますか……」
うーん……つまり、静城と件の朝野とやらが拗れた要因を作ったのは塚野だった。そういう認識でいいのか?
けれど、それはつまり―――
「つまり自業自得ってことだよなそれ」
「ぐはっ」
「おぉ…珍しく黒谷と意見が被ったな。丁度俺も思った」
「うぐっ」
これで塚野の態度に合点がいった。
つまるところ塚野は自分の所為で二人が拗れたことを俺達に知られたくなかった。自分の失態を隠したかったのだろう。
失態を隠す、なんていかにもな言葉を使ってはいるが、塚野は単純に自分が責められたくなかった、若しくは恥ずかしかったのだろう。
或いは申し訳なかっただけなのかもしれない。
確かに塚野は二人が拗れ、そこからクラスの雰囲気を作り出した原因となったが、問題点は塚野が二人の事態を加速させたことじゃない。
「それで、どんな感じに拗れたんだ?塚野がそこを正直に言ってくれれば、俺も黒谷も遠慮なく智慧を貸すぜ。それに、黒谷は代表だから静城さんに直接言ってもらうってのもありだ」
「は?待て、お前はそれでいいかもしれないが俺が直接言うってつまり俺が対抗戦の時に言えってことか?」
「ん?別にその前のミーティングでも言えるだろ」
舐めてやがる。
よりにもよってそんな時に俺が一人抜け出して静城のところへ行ってみろ。間違いなく根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。
もし俺が伝言みたいなものを伝えなきゃならなくなったとして、それを静城に伝えるにはまず俺と静城がそれぞれ一人になる状況というのが大前提だ。
それがクリアできなければ伝えられるものも伝えられない。
更に言ってしまえば静城だってじっと待っていてくれる訳じゃない。
つまり、俺がもしも伝言を伝えようとすればそれは対抗戦の時くらいしか好機はないのだ。
だが、遠見のようなコミュ力お化けにこんなことを言っても納得なんざしないだろう。
俺も並くらいはある自信はあるがあんな状況の中で俺の都合を優先できる程のものは持っていない。
「……お前からすれば問題ないかもしれんが、俺はそうじゃないんだよアホ」
「んだよ簡単じゃねぇか」
「コミュ力お化けめ……」
「あはは…何か二人のこと見てたら馬鹿らしくなっちゃうや……」
「それじゃ、事の顛末を聞こうか」
「うん」
遠見の言葉を聞いて、ぽつぽつと思いだすように塚野は語る。
その表情は先ほどのような申し訳なさのかわりに、解決しようという真剣さが見て取れた。
………
「なるほど、こりゃ困ったな」
塚野が話し終えて、まず声を上げたのは遠見だ。
塚野の相談、その本題は二人の仲の修復とそれを切り分けてしまった塚野の謝罪。
その内情は俺達が思ったよりも複雑に拗れあっていた。
纏めるとこうだ。
まず、さっき塚野が言った通りに静城が対抗戦のメンバーに抜擢。周りはそれに同調し、静城自身積極的に意見を言えずに、その場の流れに流された結果静城が対抗戦に出ることが決まる。
その日の放課後、静城が対抗戦の辞退を担任に相談するが、説得されやはり断り切れずに出場を快諾。
ここまではいい。やろうと思えばどうとでもなる。が、問題はここから。
それを聞いていた件の朝野という静城のクラスメイト。
聞くところによれば彼女の順位はなんと校内ランキング三位であり、その能力は<発火>。ただ火を起こすだけでなく、例え真空状態であっても燃焼を継続できるという優れた能力だ。
それを考えると、真っ先に浮かぶのは静城に対しての妬みから来る衝突の可能性。
静城ばかりが矢面に立たれることから、何時しか朝野は静城に対して良くない感情を抱く様になった―――という筋書きだ。
順序的に間違ってはいない考えだが、塚野から聞いたことは少し、違った。
まず、第一に朝野は塚野を妬ましく思っていない。
その日、静城の話を聞いていた朝野がまず口にしたのはこうだ。
「なぁ静城、どうして辞退なんか考えたのさ?」
これだけ聞けば現在の状況になることは有り得ないと、そう考えた。
何せ、結局出場の解答を示したにせよ辞退を申し出た静城に対して、朝野は何故それを考えたのかという問いを投げたのだ。どう間違えればあそこまで拗れるのか、どうしても俺は疑問だった。
もし俺がその立場にいれば、朝野が投げた問いに対して適当に応えて衝突を回避する。
その辺りの思いやりが出来ない俺でも、それくらいは簡単に回避できる。
だが、静城はそうじゃなかった。
「…朝野さんには、関係ない」
朝野の問いに対しての静城の返答は、一気に衝突を加速させる。
そこで、静城の発言を聞いた塚野は二人の間に割って入ったらしい。
続けて、塚野は言った。
「ちょっと風香ちゃん!関係なくないでしょ、陽菜ちゃんだってクラスメイトだよ?それに、陽菜ちゃんは風香ちゃんのこと心配して……」
「私は、そんなこと頼んでないし、別にいらない。あ―――」
「はぁ……?」
静城が何か続くような言葉を言う前に、高圧的な声を発した朝野に遮られた。
塚野曰く、ここが拗れた最初の原因。
「ひ、陽菜ちゃん落ち着いて、風香ちゃんも!それじゃ誤解されるよ」
「…まいちゃん。……いいよ、別に。また、私が出て勝てばいい話だから」
「で、でも……」
その時の静城の表情は、押し殺すような笑みを浮かべていたと言う。
勿論これは塚野が抱いた印象で、俺が実際にそれを見ていた訳じゃない。だが、その情景はありありと想像できた。
「おい静城、まさか辞退しようとした理由ってあたしらに同情したからって理由じゃないよな?」
そして次に声を発したのは朝野。
ここから本格的に二人は衝突する。
「いつもいつも自分ばっか出て、あたしらがかわいそうとか思った訳?」
「陽菜ちゃん!」
「うるさい!!どうなんだよ静城!」
「それは……」
「ねえ待って陽菜ちゃん!それじゃ風香ちゃんが困っちゃうよ」
「関係ない!塚野も塚野でいっつも静城の機嫌ばっか気にしてんじゃねぇよ!!うざいならうざいって言えばいい!!それくらい自分で何とかしろって言えばいい!!!それを何でよってたかって皆でもてはやすんだよ!!」
それを朝野の口から聞いた瞬間、塚野の身体はほぼ反射に近い形で動いていた。
パチンと、乾いた音がその場に響く。
それは塚野が朝野に平手打ちをした結果だった。
曰く、これが最大の過ちだと塚野は言った。
当の朝野は最初、状況が理解できていなかったのか呆けた顔をしていた。そして、頬が訴える痛みでようやく自分が塚野に平手打ちをされたと理解した。
「……謝ってよ、風香ちゃんに。今の言葉は流石に私でも容認できないから」
振りぬいた手をおろし、塚野はまず最初にそう言ったらしい。
それを聞いた朝野は少し驚いた様な顔をした後、ぎりりと歯を食いしばりその場を後にした。
追いかけても「謝らないから」と言って口も聞いてくれなかったそうだ。
それを塚野はいたく気にしていた。
昨日、朝野に付きっきりだと言ったのは恐らくこれが原因だ。必死に説得し、ようやく朝野を静城の前に連れ出すも結果は俺と遠見の知る通り、謝るどころか二人の距離は更に開いたという訳だ。
これが、朝野と静城のいざこざその一部始終。その相談内容こそ、二人の関係の修復だ。
「う~ん…困ったな。まぁ、なんで塚野が拗れた所を言いたくなかったのかは…大体察したからいいとして―――」
「うっ……むぅー…ホントに申し訳ないことをしました……」
「―――問題はこれをどう解決するか、だな」
そう、遠見が言うように問題はそこだ。
現状だと塚野が朝野を引っ叩いたために本来解決されるべき問題が解決されなかった。そのため、塚野は二人の関係を修復しようと行動するも、それも朝野の拒絶を以て打ち砕かれた。
故に選んだのは、静城に関することを言い合える俺と遠見に解決の相談を持ち込んだのだ。
だが―――。
「なんかごめんね、こんな相談持ち込んで…。私が手をださなかったらここまで酷い事にならなかったかも……」
「…多分、それは違うと思う」
だが、聞く限り、それは塚野の責任ではないはずだ。
「聞く限り、遠からずそいつと静城は衝突してたと思う。結果的に加速させたのは塚野だが、直接的な要因は、考えるところはそこじゃない」
「でも、そうだとしても私が手を出さなければ―――」
「ふん!」
「ぐほっ!?」
ベシリと、いつの間にか塚野の前に移動した遠見が塚野の額にチョップをかました。
「おい塚野、まずその私が悪い―――って言うのやめろ。聞くたびにイライラする」
「ふぇぇ?」
遠見のチョップは割と強かったのか、額を抑える手の隙間から見える色は若干赤みが刺している。
目じりに涙も見えることから結構痛かったのだろう。
「んで黒谷」
「…………ん? あ、こっち来るのか」
遠見のもつ伝家の宝刀、「説教」が塚野に発動したかと高見の見物を決めたところで振られるとは思っていなかったので反応が遅れた。
「おう、先に言っとくが余計だと思うことは言うなよ」
「分かってる。まず俺がこうして相談を聞く何てこと自体可笑しいんだし、ちゃんと考えてるからその辺りは安心していい」
いきなり話を振ってきたのは吃驚したが、ひとまず塚野に言おうとしたことを続ける。
「んで、塚野」
「……ふぁい、なんでしょう……」
どうやら遠見のチョップは余程効いたらしい。
「まず、今回のいざこざは誰が悪いと言うより、恐らく二人のすれ違いだろうな。朝野って奴、静城が苦手そうな性格してそうだし」
「え、あ、わかんない……」
ふむ、遠見チョップで混乱してるな。
……少し塚野の考えを整理させる必要があるか。
「二人が衝突するのは例え塚野が手を出さずとも起こったことだ。聞く限り朝野は別に静城の事が嫌いで突っかかってる訳じゃないし、二人が言わんとすることも……まぁ分かる。ただ、問題はそれを静城が上手く伝えれてないことだ。だから朝野は中途半端に受け取ってその是非を問い詰めてる」
「……つまり、黒谷は静城さんが悪いと?」
俺の意見に遠見が答えるが、俺が言いたいのはそうじゃない。
「いや、言っただろ?このいざこざは誰が悪い訳でもない。強いて言えば塚野が悪いとも言えるし、朝野が悪いとも言えるし、静城が悪いとも言える」
「どうして、そうなるの?だって、……その、風香ちゃんも陽菜ちゃんも自分の意見をぶつけてただけなのに……」
「その認識がまず違うと思うぞ。だって考えてもみろ、静城は朝野に対して少なからず苦手意識があるからいつも以上に言葉がつながらないだろうし、朝野は朝野で静城の意見を早とちりしてるし、塚野に至ってはこの事態の本質が見えてない」
「あー………成程そういうことか」
どうやら遠見は俺の言いたいことを察したらしい。
「……ま、俺が言えるのはこの辺りまでだな。乗りかかった船だし協力はするが、後は二人でやってくれ」
そう言って俺は踵を返す。
「帰るのか?」
遠見の問いに俺は「ああ」と返す。
これ以上俺があれこれと口を出す訳にもいかないし、何よりそれじゃ塚野が相談を持ち込んだ意味がない。
正直相談を受けるのは初めての経験だが、これ以上の意見は俺の一方的な価値観と考えの押し付けでしかなくなる。言わば喧嘩両成敗の状態。
だが、塚野が求めているのはそんなものじゃない。
事態の解決と一口に言っても両成敗でおしまいとはいかないのが人間関係の面倒なところ。
それで事態は収拾しても関係が修復される訳ではないからだ。
塚野が求めているのは事態の収拾と関係の修復。
俺がこれ以上関わればまず関係の修復の面で見た場合の解決は難しくなるだろう。
だから、後は遠見に任す。
俺ではできない、遠見だからこそできるのは二人の関係について。
既に朝野を切り捨てる判断をしている俺には絶対にできないことだ。
「えっと、まだわかんないけど、ありがとう黒谷くん。対抗戦頑張ってね……」
そんな風に応援を送った塚野に対して、俺は振り返らずに手を上げて応えるとそのまま屋上を後にした。
明日はテスト最終日、そしてクラス対抗戦の作戦会議。
対抗戦まで、あと二日。
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