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意地

一週間から十日くらいの更新頻度と言ったな、あれはウソだ。

ウワアアアアアアアアァァァァァ~~(作者心の悲鳴)


二十日ほど遅れてしまい申し訳ありません。どうしても時間がとれず間が空いたことをこの場で謝るんでサボり癖な私を許してくだせぇ・・・。

 「この辺りがいいか」


 あれから俺たち四人は人気が無さそうな場所を探し歩いて、改札口周辺の切符売り場まで移動していた。


 その途中で、混乱していた人の内何人かは冷静さを取り戻した様子で、リーダーシップを発揮しながら駅内で比較的広い空間に集まるよう携帯か何かのライトで照らしながら人々を誘導している場面を見かけた。


 実に都合のいい展開だ。


 ああやって矢面に立って一般人を先導し、一か所に集めて行動しようとする『ヒーロー』役が居てくれるだけで、それだけで裏で動く俺は事件に集中できるからだ。


 それは即ち、遠見たち三人に付きまとう危険の減少にも繋がることだ。

 俺が動きやすくなるということはそれだけ<アクセス権>の力を遺憾なく発揮できるのだから。


 「そうだな、丁度他の被害者も一か所に集まりつつあるから、動きやすくもなったしここいらで何が見えたか話してくれ、遠見」


 「わかった。けど参考になるのかは正直微妙だけどな」


 そう言うと遠見は自嘲する様な笑みを浮かべる。

 まるで役に立たないと白状するかのような面持ちをする遠見だが、俺にそれを構ってやる暇はない。ここで素直に情報を吐いてくれなくては困る。

 早めに動きたいのだ、俺は。


 「微妙でも何でも、何か見えたんならそれを伝えてくれれば別にいい。どこで何があったのかさえ分かればどうとでもなるから心配すんな」


 そう、ぶっちゃけ遠見の持つ<千里眼>で様子を見てもらったのは、事件を起こした奴をその目でを見てもらうためじゃない。事件が起きた後の状況の推移を確認してもらうことだ。

 よって、いくら些細なものでも、遠見の持つ情報は俺にとって重要なものだと言える。


 「そうだな。・・・よし、言うわ。あまりのしょぼさに幻滅しても知らねえからな?」


 「安心しろ、これ以上お前に幻滅するようなことはそうない。だってなんだかんだ言って遠見だぞ?何を期待すんだよ」


 「はあ!?ふざけんなよどういう意味だそれ!?」


 遠見は俺の発言に喚き散らすが、静城と塚野は納得がいったようで、こくこくとしきりに頷いている。


 「全く・・・、俺が見えたのは爆発の後、この地下鉄の改札口から影みたいな黒いものが駅の壁を覆う所だけだよチクショウ。ほら、殆ど意味がない」


 そう言って遠見が指差したのは今いる改札口の方だった。


 「・・・、それだけ?」


 「ぐっふ・・・」


 「静城、抉ってやるな。それにそこまで酷いような情報じゃない」


 というより、むしろこれは有益な情報だ。

 本当に影の様な黒いものが壁を伝い、現状の様な光すら射さない駅内を作り出したのなら、それをやった犯人の居場所のヒントになる。


 そしてこれだけの規模で能力を行使し続けるには相当な集中力と精神力が必要となるはずだ。それにここまで揺らぎなく、そして違和感無く能力を長時間維持するなど足の指で針に糸を通すようなものだろう。

 

 え?無理?

 だからそう言ってるんだよ。


 「んー・・・、てことは犯人はこの先にいる可能性が高いんだよね?だったら何か対策とか、そういうの立てておいた方が安全なんじゃ・・・」


 塚野が言ったその言葉に、俺はなるほど、と考えを正す。

 俺はいい。どんなものが来ようと<アクセス権>を行使すれば、例え能力を使った攻撃でも物理的な攻撃でも一言発すればそのまま土台からひっくり返せる。

 けれど、俺とこの三人は違う。

 強いて言えば静城は例外に当てはめれるが、塚野と遠見の二人にはそのような強力な力を持ち合わせていないからそのような場面に陥った時の対処が難しい。

 必然、その様なことがあれば俺は解決に動くから二人に構うのは最低限になる。

 

 いっそのこと静城に二人を任せるか?


 そう考えたところで、俺はそれを否定する。

 それじゃあ駄目だ。

 

 それでは結局のところ事件の根幹に他三人を関わらせることに他ならないからだ。

 だから、静城に頼んで二人を守ってもらう案は使えない。

 

 これは俺の戦いなのだから、他を頼ってしまうのは筋違いなのではないか、という思いもある。


 なにか、無いだろうか。


 三人をできるだけ関わらせることなく、それでいて三人が納得できる案が。

 そんなご都合主義のような、よくある小説のような夢のようなな案が。


 神託の内容は、『最後まで四人で一緒に行動する』ことだ。

 ということは今までの感じからすると、極論これさへ守れば好きに行動してもいいことになる。

 

 最後まで、四人で、一緒に、か・・・。


 ん・・・?


 ・・・あ、そうか・・・、そうだよ。


 必ずしも、四人でなければ行動してはならない、なんてモノではなく、『最後まで四人で一緒に行動』というが、その最(・)後(・)は(・)い(・)つ(・)だ(・)?

 一緒に行動という範(・)囲(・)は(・)ど(・)こ(・)ま(・)で(・)だ(・)?


 決まっていないんだ。


 この辺りの解釈は俺たちに委ねられているのかと思うほど、この指示は肝心な部分がとても曖昧なものだ。


 ならば


 「よし、二人一組に分けよう」


 分断しても問題ないはずだ。


 「え、ちょ、いいのかよシロちゃんの言葉を無視して」


 ああ、確かに遠見の言うことは至極当然だ。あれだけ重要そうな真面目な雰囲気で了承しておいて、それを俺が破ろうとしているのだから。

 

 「そうだよ、それになんか破ったらヤバイ雰囲気あったじゃん!」


 「まぁ、確かにそうなるかもしれないが、俺が言ったのは神託の抜け道、グレーゾーンの話だ。要は最後まで四(・)人(・)で(・)行(・)動(・)し(・)さ(・)へ(・)す(・)れ(・)ば(・)い(・)い(・)。つまり複数の役割とかに分けて別働隊を作っても、一緒に行動しましたと言えるだろう?」


 くくく、と俺の口から笑い声が漏れる。

 こういう決まり事などの抜け道を探して意表を突くような行為はとても好きだ。だから<アクセス権>を使った時の相手の顔色を覗き見るのは俺が密かに楽しみとしていることだったりする。

 ああまで滑稽な顔はそうお目にかかれないしな。


 「うわぁすごい捻くれてるよこの人」


 「なんか、計画を立てる犯罪者みたいだな・・・」


 「同意」


 うぐ、・・・いや、狼狽えるな、俺。

 とにかくまずは、俺、静城、遠見、塚野のうち、戦闘要員と補助要員を選別してう(・)ま(・)く(・)別れるように考えなければならない。


 「なんとでも言え、性分なんだ。それで、俺達四人をどう二手に分けるかだが、何か希望は?」


 その言葉を聞いて三人はそれぞれ考え始める。

 そして幾許か悩んだ後、最初に口を開いたのは遠見だ。


 「そうだな・・・・。取りあえず、戦闘ができる静城さんと黒谷は分けたいよな。万が一ってこともあるし」


 それを聞いて、俺は静かに笑う。

 

 「ん、賛成。・・・でも、遠見君と、まいちゃんは、どう分ける・・・?」

 

 ・・・ああ、その言葉を待っていた。

 

 「じゃあ、遠見は俺、塚野は静城の方でいいか?その方がきっちり分かれてやりやすいだろ」


 「まぁ、確かにそうだね。私の能力的にも黒谷君と一緒だとあんまし意味ないし。私から文句はないよ」


 俺が考える限り、この結果は最良だ。

 静城に不自然に思われることなく、塚野も深く関わらせることなく、この事件を終わらせられる最高の組み合わせ。

 それが俺と遠見がペアになること。


 「俺はまたお前と一緒かよ・・・。まあ、仕方ないけどさぁ」


 そうすればこいつは俺に遠慮して深くまで踏み込もうとしないから。


 「静城はどうだ?」 


 「・・・ん、だいじょぶ」


 静城が返事を返したことで、確定した。

 いつも通り、パッと行って、サクッと事件を終わらせる。それで最小限の被害に抑える。

 抑えてみせる。


 「よし、じゃあ―――――」


 『プルルルルルル、プルルルルルル』 


 その先を紡ごうかと言う時、丁度その時俺のスマホから通話を示す着信が入る。


 送信元は・・・。

 

 「・・・紅葉?」

 

 何故、と考えたが、俺の家の近くの駅で目的不明のテロ事件が起きればそりゃ心配の一つもするか。

 そう一人納得すると、スマホを取り出し電話に出る。


 「どうした?紅葉」


 『・・・、えっと、お兄ちゃんって今どこにいる?』


 俺の問いかけから一泊置いて、紅葉は答えた。

 声色から察するに、妙に緊迫した様子で話をしているのがわかる。


 「・・・、新宿駅だけど、いつも通り大丈夫だから心配すんな」

 

 不安なのだろう。

 恐らく外ではテレビ等でニュースになっているに違いない。


 だからなるべく優しく、なるべく不安にさせないように、柄にもなく柔らかな口調で応えてやる。

 例え日頃の態度を崩してでも妹を安心させてやるのが、兄の務めと言うものだろうから。


 けれど、俺は心のどこかで全く違うものを抱いていながら、それを考えないようひたすらに蓋をしていた。

 そんなはずはないと、自分に言い聞かせ、その可能性を切って捨てて、ひとまず紅葉を安心させようと内心必死になりながらも言葉を紡いだ。


 『えっと、ごめんなさい。私も今駅にいるの・・・』


 「・・・・」


 それも、今の紅葉の一言で泡となって消えた努力だった。

 絶句した。

 このままなら確実に紅葉ですら巻き込んでしまう。

 そう思ってしまったから。

 

 

 「今・・・、どの辺だ?」


 『えっと、さっき爆発があった駅の改札口過ぎの広場に何人かで固まってる・・・。地下鉄から降りた時すごい音が前から聞こえて、おまけにこんな暗闇になるものだから、不安になっちゃって、、ごめんね、お兄ちゃん』


 広場とすると、目の前で固まっている人々の内のどこか、か。

 ならそのまま動かない方が比較的安全だ。無理にでも呼び出して協力してもらう必要もないし、なにより紅葉だけは絶対に巻き込む訳にはいかない。

 これ以上紅葉の心の内にしこりを残してしまわないように、決して危険だと悟られてはいけない。


 だからいつも通りの調子で、そう、コンビニに行くような軽い気持ちで伝えるんだ。

 俺は大丈夫だからと。


 「まぁ、今からサクッと解決してくるから待ってろ。今回もお前は無理に参加しようとしなくていいから、心配しなくても大丈夫だぞ」


 『・・・あはは、なにそれ。心配させないようにしてるのバレバレだし。そんなに心配されたくないんなら、三十分で解決してよね!そうすればパフェで許してあげる』


 なんだよそれ。

 こっちがなるべく心配させないように言葉を選んで喋ってたってのに、当の紅葉ときたらそれを見透かした上で時間制限を提示し、かつパフェを奢れと横暴を言う。


 ・・・上等じゃねぇか。


 「三十分?余裕。二十分で解決してやるから、そしたらパフェは諦めろ」


 『へえ、言うじゃん。じゃあ二十分で解決できなかったらパフェだからね!』


 いいだろう、二十分以内に解決してやるから、パフェを食えない悔しさに嘆きながらおかえりを言う準備でもしてろ。


 「じゃあ、通話切ってからカウントスタートだ。いいな?」


 『オッケー』


 これ以上いい気にさせれば、どちらが上か本格的にわからなくなるし、ここいらで兄の威厳というものをたっぷりと思い知らせてやる。


 「じゃあ、いってくる」


 『はい、いってらっしゃい』


 そして、俺は通話を切った。

 解決まであと二十分で終わらせなければ、俺は紅葉にパフェを奢ること、それを賭けにした仕様もない兄妹の闘いの幕が上がる。


 「・・・誰から?」


 通話が終わるとほぼ同時に静城が俺に問いを投げる。

 別に素直に相手を言ってもいいが、この少ない時間でどう簡潔に説明をするかで悩み、少しの間を置いて答えた。


 「妹だ。訳あって二十分で解決したいから簡潔に作戦を伝えると、まず俺と遠見、静城と塚野の二組に分かれて、俺と遠見はこのままホームの方に突入。静城と塚野はこの場で何かあった時の対応を任せたい。ここまでで質問は?」


 「いやちょっと待て、早い早い。二十分で解決ってなんでそうなったし!それに俺に戦闘行為はムズイわ!」


 遠見が声を上げるが、無視だ無視。今は一分一秒が惜しい。


 「・・・私たちはここで、待ってればいいの?」


 静かな怒気を孕みながら静城が俺に問いかける。

 恐らく女子二人だけ蚊帳の外という状況に納得がいかないのだろう。

 だが、一番効率よく、そして手早く解決するにはこの編成が最適だ。


 「待つ、というより不測の事態を想定した結果だ。静城をここに残らせているかで安心感が違うんだよ」


 「・・・そう」


 ・・・あれ?

 意外にも簡単に引き下がる静城を見て、肩透かしをくらう。

 正直もう少し粘られると思ったから身構えていたのだが、どうやらそこまでの心配は必要なかったらしい。


 「じゃあ、十五分で解決したら、蚊帳の外にだしたの、許す」


 「・・・はい」


 なんか、どんどん三十分から短くなってきてハードルが・・・。


 「つ、塚野から何か文句あるか?この際だから不満があれば聞くけど」


 「う~ん、とりあえず言いたいことは風香ちゃんが全部いってくれたから私からはないかな」


 さいですか。


 えっと、取りあえず皆これ以上の文句は無いようだ。遠見は途中で諦めたのかため息をついて従ってくれている。


 「じゃあ、あと十八分ちょいで解決してくるか」


 そして改札口の方を向いていざ向かおうとした時だ。


 「なんだ?」


 遠見が先に声を上げる。

 当然俺もソレが見えており何が来るのかと身構える。


 ソレは改札口を通った後のホームへと続く道から流れた来たものだ。


 「霧だと?」


 それは霧だった。

 しかも暗視を使っている状態でも前方を確認できないほど相当に濃い霧。


 その霧はそれまでゆったりとこちらに迫ってきていたのが嘘の様に広がり始め、遂には俺達の視界全てを覆うまで広がった。


 これで、相手の能力者の人数は最低でも三人はいることになる。


 最初の爆発、次の影、そして今の霧だ。


 更には、視界の効かなくなった前方になにやら黒っぽい影をかろうじて視認した。

 それも数えきれないほどにわらわらと。


 「おい黒谷、ヤバイって。流石にこの霧に慣れるには時間がかかる」


 「ここにきて、か」


 残り約十八分、この視界の効かない中、黒っぽい影はこちらに猛烈な速度で向かってくる。

 

 敵の数も、能力も不明慮のまま、俺の兄としてのくだらないプライドを賭けた十八分が始まった。

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