シロが来た
ああ、もうやだこの神サマ。
「わはははは、どうよこのバシッとした登場!完璧のパーペキだね!」
「どこがだ、第一お前この目立つところに出てきていいのかよ・・・」
「何を言う。そんなもんこの四人以外見えてないに決まってるだろう!」
「はあ・・・」
先が思いやられる。
チラリと、遠見たちを見る。
「えっと・・・?」
「かわいい・・・」
「真っ白だね」
三者三様といった感じで各々感想をこぼす。
遠見は現状が把握できなくて困惑してるし、静城と塚野はそれを無視してシロの方に意識が向かっている。
あわよくばそのままスラッと紹介して何処かの喫茶店かファミレス等に行ってさっさと勉強会を開きたい・・・。
でも恐らくこの理想通りにはいかないでシロが何かしら仕掛けてくるだろう。
そして、そのイタズラに翻弄される俺たちを見て腹がよじれるくらいに笑うのだ。
あいつはそういう娯楽に飢えた獣のようにことあるごとにからかってくるだろう。
「気が重い・・・」
ああ、憂鬱だ。
「んで、この子と黒谷の関係ってどんなだ?」
「ん、気になる」
「確かに。このままだったら黒谷くんはただのロリコンだしね」
「ぐはっ!!」
ああそうでしょうね!
シロの容姿は小学生か中学生くらいにしか見えない。
よって、今現在一番最初に抱くであろう印象は小さい女の子と仲が良い高校生の図だ。
こうして言葉にしてわかる通りなかなか危ない。
塚野が俺をロリコンと評したのは的を射ている表現だと認めざるを得ないと思う・・・。
けれど、こいつは俺が知る限りかなり長く生きているから俗に言う『合法ロリ』の部類に入ると思われる。
「何か、私によくないことを言われた気がするんだけどさ。蒼太くん、知らない?」
あれー?鋭すぎやしませんかねこのロリ。
「いや別に。シロと俺の関係をどう説明するか迷ってただけだよ。」
「へー・・・」
なんでそんな疑うような目を向けてくるんだろうか?
こういう「女の勘」とかそういう類のものには弱い。
偶にボロの一つすら出していないと断言できるのにあっちは何故か確信して問い詰めてくるからな。
ソースは妹。
「それで、こいつとの関係だが移動中でいいか?色々ぶっちゃけるからあんまり驚かないで欲しいとは思うが」
そう言って俺は羽織っているパーカーのポケットからスマホを取り出す。
取りあえず勉強会を開く場所として定番なファミレスでも近くにないか軽く調べでもするか?
事前に調べるべきだとは思ったがその場の雰囲気や話の流れを尊重しようと思ってやっない。
取りあえず二~三軒程度は下調べした方がよかったかも。
「そんなに驚くようなこと?」
静城が俺に問う。
静城には俺の能力についてこの場の俺とシロを除いたメンバーの中で一番詳しく知っている。
だが、それでも驚くだろう。と確信を持って言える。
「絶対驚く。まあ話自体は簡単な話なんだけど」
「へー。このちんまい子がか?」
遠見は偶に俺のメンタルを抉ってくる。
勿論発言した本人は意識など全くしていない。
無意識に何気なく発した言葉が丁度俺を抉る時があるから感性で発言するのはやめていただきたい・・・。
今だってそうだ。
「ちんまい・・・、ちんまいかぁ。」
完全にシロの琴線に触れてるから、それ以上は刺激しないで!
俺に被害が来るから!
「い、移動するか。あんまり人通りの多い場所で話したくないんだよ」
これ以上の被害を抑えるため、そしてこれ以上シロの機嫌が悪くなる前に離れよう。
「そうだな、そうするか」
よし、遠見は乗った。
「ん、わかった」
静城も乗った。
「そうなの?じゃあどこ行こっか」
塚野も乗ってくれた。後はシロもついてきてくれれば説明がしやすくなる。
「・・・、逃げたな」
「いや待て、別に逃げることは悪くない。むしろどうにもならないような状況だと最善手とすら言えるんだぞわかってる?」
全く何を言ってらっしゃるのだか。
あれ、よくよく考えたら今の否定してなくね?
て、やめろ。
そんな憐れむような目でこっちを見るんじゃないシロ!
ホントに悲しくなってくるだろうが。
こんなんでも頑張ってお前が出す無茶振りを消化してるんだからもうちょっと労わってくれたっていいじゃない。
気づけばこの場の全員がシロと俺の言い合いを見ていた。
「なんだよ」
それが気になって三人に向けて言った。
これを見て何が面白いのか、という意味も込めて。
「いや、いつも学校で話してるお前と今のお前とじゃあかなり違うなぁ、と思ってさ。何て言うか、黒谷だって普通の人間なんだなぁって」
「何言ってんだよ。俺なんてクッソチートな能力がなかったらただの一般人に過ぎないぞ?」
「それを言うなら逸般人だろ」
「ん。同意」
「ちょ、待て。今絶対漢字変だった!絶対おかしかった!!」
「wwwwww」
おいシロ、お前は草を生やすんじゃない。
「はぁ・・・」
楽しいことは楽しいんだが、如何せん疲れる。
勉強会に来たのにこれでは普通に遊びに来ているのと同義ではないか。
「よかった・・・」
「?」
俺が疲労を感じ始めていたとき、ふと塚野が呟く。
「よかった」とはどういうことに対して言ったのか純粋に気になった。
「ああ、気になる?」
何が「よかった」のかという理由を少し考えていると、塚野はそれに気がついたのか声を掛けてくる。
その問いに俺は素直に頷くと簡単なことだと前置きをしてから先を続けた。
「単純に風香ちゃんのことが心配だ~とは言ったけど、それ以外にさ風香ちゃんって普段はランカーでテレビとか公開のランク勝負とかで学校にあんまり来れてないでしょ?すごい人気もあってクラスでも一歩引かれてるとこあるからぶっちゃけ最初は最近友達になった人と勉強会行くって聞いた時騙されてるんじゃないかって思って一緒に行って確かめてやろうと思ったわけ。ね、案外単純な理由でしょ?」
納得した。
確かに静城は一般的にかなり人気で、本当ならこうして一緒に出歩いて遊ぶなんて一生分の幸運を使っているようなものだと言える。
そんな静城だが、一度信じれる相手と確信すればその人との距離は一変する。
俺の時同様かなり縮まり信頼を寄せてしまうのだ。
現に今遠見とシロを相手にかなり打ち解けている様子だ。
一見それは美徳と言えるが、見方を変えればそれは欠点になる。
だってそれは逆に人を疑うことを知らないと言えるからだ。
塚野は塚野なりに、そのことを案じてくれた結果がこの行動なのだろう。
「そうだな、思ったより簡単だ。一応礼を言っとくよ、ありがとう」
「どういたしまして」
そんな話をしていると、遠見とシロがこちらを凝視していることに気づいた。
何か可笑しなことを言ったのだろうか思い返してみても大したことは言ってない。
「なんだよ」
頭を捻ってみても全くわからない、そんな俺に二人はニヤニヤと憎たらしい程の笑みを浮かべる。
鬱陶しい×うざいといういらないコラボレーションは思った以上の相乗効果を生んで結構、いやかなりムカつく。
「なんだよ・・・」
それでも俺は我慢して訳が聞きたかった。
単なる知識欲に近いが、この二人が結託してこういう笑みを浮かべるのは珍しいと思って気になった、というのが理由だ。
特にシロはよくからかいはするが、こういうやさしさと温かみをもたせて尚且つからかうような、そんな高度な笑みを見せるのはマジで稀なことだ。
「ただ単に蒼太が素直に感謝してるのが珍しいと思っただけだぞー?」
「だからなんだってんだよ・・・」
珍しい。
それは確かにそうだろう。
俺自身も言われて吃驚しているくらいだから。
シロの言葉に飄々と答えを返したが、内心は戦慄で一杯だった。
ここ最近で最後に心から「ありがとう」と感謝を述べたのは何時頃だったろうか。
それまでシロや紅葉以外の人間にそんな言葉は言っていなかった。
それに気が付いて俺は変わったのかと一瞬夢想する。
だがそれも本当に一瞬のことだ。
今までに築かれた心の土台はどうしたって変わらないし崩せない。
だから今思ったことは単なる幻想だ。
「さっさと行こうぜ、休日だし人混むぜきっと」
余分な思考を振り払ってから声をかける。
俺の顔を見てシロは柔らかな笑みを浮かべたが、その意図はわからない。
それから三人とも俺の提案を飲んで移動する。
その途中で俺とシロの関係を話しながら、塚野は何も知らないから最初から話すことになるが、不思議と面倒だとかやばいなと焦燥するようなマイナスな感情は生まれなかった。
目指すのは近くのファミレスだ。
やべぇ、話進んでない・・・・。
いや、きちんと進んだ。うん、進んだ進んだ。
UAが1000を突破しました。この場を借りてお礼申し上げます。<(_ _)>
感想なども常時受け付けておりますので指摘等ありましたら遠慮なくどうぞ。




