番外編17 テントの中で地雷を踏む
テント下山では、テントの耐久力が無限であり、内部のプレイヤーは死なない。
なら、どうやって爆殺するのか。
ここも仕様で突破していた。
テント内のプレイヤーキャラには、当たり判定がある。
通常、プレイヤーが死なないのは、テントが外的要因の干渉をすべて遮断し、致命的事象から守っているため。
しかし、テントが湿地に刺さる場面では、テントの一部が地面より下にめり込んでいる。
地面判定も、テント内に一部めり込んでいる。
この干渉状態により、プレイヤーがテント内で天然地雷を踏む。
テント内で起爆する。
テントの耐久力無限をすり抜けて爆殺される。
何を言っているんだ。
テントの中で地面を踏んで爆死。
普通の人間は、一生そんな文に出会わない。
この地面めり込み自体も、元々はバグ挙動だった。
他の場面では、地面側がテントを受け入れないよう判定を調整し、めり込み演出を省略して解決している。
だが、テント下山だけは意図的に残した。
通常のテント下山では、コメディ表現。
真のテント下山では、爆殺ギミック兼用。
要するに、グリッチじみた挙動として発見されたテント下山に、めり込みでテント内のプレイヤーへ天然地雷を踏ませて爆殺するという別のグリッチを、開発者自らぶつけて迎撃している。
グリッチ対グリッチ。
山由来のグリッチ対、プレイヤー由来のグリッチ。
最後は山が上回る。
史実ネルソンルートが、バグじみた山とバグじみた人間の対決で、最後は人間が上回った。
その敬意を表したパロディ。
理解はできる。
理解したくない。
発想があまりに変な方向で美しい。
しかも、開発は自覚している。
「山は命を奪うかもしれないが、登山は命を奪い合う営みではない」
これが一貫したデザイン理念。
だから、プレイヤーを意図的に殺すアンフェアな禁じ手は、基本的に避けてきた。
雪崩にも兆候がある。
クレバスも探索できる。
落石も予兆がある。
硫化水素も危険のサインがある。
先住民も和解できる。
猛禽類も回避できる。
山は危険だが、登山は殺し合いではない。
その理念に対する唯一の例外が、真のテント下山。
開発がアンフェアだと自覚しながら仕込んだ、渾身の確殺ギミック。
なぜそんなことをした。
たぶん、笑ってほしかったからだ。
そして、ネルソンはそんなことをしていないと言いたかったからだ。
英雄は逃げない。
ネルソンは、山と向き合って帰ってきた。
テントを音速で転がして虚数解を出すのは、プレイヤーである。
そこへ山が、最後に一発だけ本気のツッコミを入れてくる。




