番外編15 真の下山を見せるな
そして、さらに上がある。
難易度「真の大霊峰と真の英雄の一騎打ち」限定ギミック。
真のテント下山。
テント下山を行うと、サービスとして、難易度ネルソンより演出が豪華になる。
サービス。
音速で爆走するテントに、さらにサービス。
変更点は大きく二つ。
一つ目は、猛禽類との邂逅。
通常の難易度ネルソンでは、空で出会って遠巻きに眺める程度だった。
真のテント下山では、迫力や生態をより強く表現している。
三つの山頂候補からのルートそれぞれで、中身が異なる。
一つ目。
空中を飛ぶ猛禽類のすぐ前を、テントがかすめるような弾道で飛ぶ。
猛禽類側が進路を変え、ぎりぎりテントの下を通って回避する。
二つ目。
岩場にとまって羽を広げる猛禽類の、脚の間をテントが転がり抜ける。
三つ目。
テントを発見した猛禽類が異変を察知し、巣へ駆け寄り、上から覆いかぶさって守りの態勢に入っている、そのすぐ真上を通る。
すごい。
すごいけど、これを見るために三回テント下山する必要がある。
全部見たいなら、三回音速で山を転がれ。
そういうことだ。
この演出のために、猛禽類のスポーン地点は三羽すべて、通常の難易度ネルソンと異なるように設定されている。
巣に近づくルートを作るため、テント下山のルートも一部変更されている。
無駄に手が込んでいる。
いや、無駄ではない。
開発者にとっては、猛禽類の生態表現なのだろう。
プレイヤーにとっては、音速テントで鳥の脚の間を通る狂った観光である。
なぜ猛禽類が回避や防御をするのか。
理由は内部処理にあった。
音速テントの衝突ダメージが極めて高く、猛禽類に即死ダメージを発生させるため。
ゲーム内で猛禽類が回避や雛の防護を選ぶ条件を、唯一音速テントが満たす。
当初、猛禽類は無敵にする予定だった。
しかし、この演出を実現するため、有限の体力値が設定された。
結果として、「理論上殴り倒せる」仕様が生まれた。
理論上。
また理論上。
ガルダの攻略情報、理論上だけで別の山ができる。
猛禽類AIは判断力が最高で、テントの軌道を正確に判断できる。
脚の間を通り抜けることを読んだ二羽目は、威嚇動作を選択している。
かしこい。
テントより鳥のほうが冷静だ。
巣の防衛については、もともと雛に低い体力値を設定し、猛禽類AIの挙動として雛の護衛を最優先行動にしていた。
通常プレイでは、巣に近づいたプレイヤーを猛攻撃する。
プレイヤーの脅威度は、猛禽類から見て、ぎりぎり雛を殺せる低水準に設定されている。
だからプレイヤーが死ぬまで攻撃し、雛への脅威を排除する。
これが、巣に近づくと確殺される挙動の正体。
そこへ、音速テントの危険度判定を乗せる。
すると、さらに上位の防衛行動が引き出される。
仕様の流用に近い。
それにより、三ルートで「回避」「威嚇」「防御」という、他の手段では一切見られない猛禽類の動作を観察できる。
観察できるのは嬉しい。
方法が狂っている。




