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番外編14 バグで山道を整えるな

 テント下山は、実は意図的に採用された挙動だった。


 もともとは開発途中で発見された。


 一度は修正しようとしたらしい。


 そりゃそうだ。


 普通は修正する。


 山頂からテントごと転がり落ちて生還できる登山ゲームなど、物理エンジンが寝不足のときに見る夢である。


 だが、根本的な問題は、テントの耐久力が無限であることだった。


 最高難度における切り札として、耐久力無限テントは必要だった。


 これを消すと、ゲームバランスが崩れる。


 かといって、滑落距離に上限を設けて見えない壁で助けると、没入感が壊れる。


 しかも、重力落下という演算の根幹部分に触れることで、別のグリッチが生じる危険が大きい。


 ステージのどこからでも麓まで滑落しうるガルダと、耐久力無限テント。


 この組み合わせが、どうしても危険だった。


 修正し損ねたバグが残るくらいなら、いっそ徹底的に利用し、プレイヤーと分かち合う。


 そう決めたらしい。


 開発者の心がネルソン化している。


 危険を避けるのではなく、制御できる形にして正面から登る。


 いや、下りる。


 そのため、山頂からテントごと転がり落ちた場合だけ、特別処理として内部的には下山と判定される。


 道中でテント滑落した場合や、山頂から生身でルートを踏み外した場合は滑落扱い。


 テント下山時は、滑落時に出る危機エフェクトも出ない。


 プレイ記録の累計滑落回数にも加算されない。


 このゲーム、わずかでも滑落したら、途中で止まって生還しても滑落回数に加算される。


 それなのに、山頂から麓まで五万メートル転がっても、テント下山なら滑落ではない。


 言葉が負けている。


 しかも、山頂候補三つのどこから開始しても、麓まで止まらずにたどり着けることをテストプレイで確認済み。


 デバッグでは、途中で引っかかる場所がないかを洗い、マップを微調整した。


 引っかからないようにした。


 五万メートル音速テント下山が快適になるよう、山を磨いた。


 開発者、山に何をしている。

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