表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/60

番外編12 人類未踏の下山観光

 「テント下山」。


 説明を読んで、俺はしばらく何も言えなかった。


 難易度ネルソン以上限定ギミック。


 難易度ネルソン以上で使用するテントには、もともと耐久力無限判定がある。


 ニーソンスキン、じゃなかった、限定ネルソンスキンの強靭テントは、それ以外の難易度でも使えるというもので、もともと仕様としては存在していたらしい。


 生身で滑落したら死亡する場所でも、テント内にいて、テントごと滑落すれば安全。


 ここまでやり込んでおいて、今さらテントの扱いを甘く見るプレイヤーはいない。


 公式がそう書いている。


 なぜプレイヤーのテント理解を信頼しているんだ。


 そして、どうしてその信頼の行き先がこれなんだ。


 この仕様を使い、山頂でテントに入ってから、麓までの五万メートルを一気に転がる。


 超スピードで下山することで、安全に生還できる。


 安全に。


 生還。


 五万メートルをテントごと転がり落ちることを、安全と呼ぶな。


 人類が経験したことのない下山が展開される。


 その通りだ。


 人類は経験していない。


 今後も経験するべきではない。


 途中で谷に沿って複雑な軌道を描く。


 立ちはだかる岩を豪快に砕く。


 滝や崖から大ジャンプする。


 空中からマップの絶景を見下ろす、数少ない手段になる。


 他の空中観察手段は猛禽類が絡むため、ろくなことにならない。


 テントで音速落下するほうが、まだマシな空中観光扱い。


 観光とは何か。


 岩は通常プレイでは破壊できない。


 だが、テント下山の進路に重なる岩の一部にだけ、隠しパラメータとして体力値が設定されている。


 通常はダメージ耐性でごまかしているが、加速したテントは耐性を貫通する。


 テントの当たり判定が安定しているため、岩を砕いて突破する。


 岩を砕くテント。


 キャンプ用品の領域を越えている。


 下山中、テントはどんどん加速する。


 途中から音速を超え、ソニックブームが発生する。


 登山ゲームで、ソニックブーム。


 俺はもう驚き疲れているはずなのに、まだ驚ける自分に驚いた。


 もともとゲーム内で音速を超える存在が登場することは想定しておらず、演算はかなり省略されていたらしい。


 だが、テント下山を前提に、クラッシュしないよう安全マージンとしてマッハ四まで計算に対応する仕様にした。


 マッハ四。


 安全マージン。


 言葉同士が握手を拒否している。


 ソニックブームは最初はなかったが、後から要素として追加された。


 その演出を最適化するために、二百回以上、ソニックブームのためだけに試走したという。


 開発者、何をしているんだ。


 通常プレイにおいて、テント下山以外で音速を出すギミックは存在しない。


 つまり、ソニックブーム演出は、実質この狂った下山専用。


 山に対して真摯というより、テントに対して異様な責任感を持ち始めている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ