番外編10 隠し難易度で思想を燃やすな
そして、隠し難易度。
「真の大霊峰と真の英雄の一騎打ち」
名前からして圧が強い。
これまでの難易度名は、まだ少し余裕があった。
ハイキング。
アドベンチャー。
フラッグオンガルダ。
ネルソン。
どれも「何をするか」を象徴した名前だった。
だが、これは違う。
ストレートに、何が始まるかを書いている。
真の大霊峰と、真の英雄が、一騎打ちする。
言葉が正面から殴ってくる。
発生条件は、難易度ネルソンを選択し、さらに真の大霊峰をオンにすること。
その場合のみ、スタート地点のすぐ後ろに小舟が出現する。
すぐ後ろ。
前ではない。
プレイヤーは普通、ガルダを見る。
湿地を見る。
登山口を見る。
危険地帯を見る。
どう突破するか考える。
その間に、小舟は背後にある。
カメラを後ろに回さないと見えない。
危険地帯の正面突破に意識を取られると、発見できない。
これ、好きだが腹立つ。
ネルソンは正面の危険を見て、そこに入らない選択をした。
だからゲームも、正面だけ見ているプレイヤーには答えを見せない。
視野を回せ。
逃げ道を探せ。
登山口という名前に騙されるな。
山へ入る方法は一つではない。
そういうメッセージだ。
でも小舟を背後に置くな。
気づかないだろ。
掲示板の投稿によると、開始後十七秒以内に小舟に乗ると、トロフィーが解除されるらしい。
名前は「勉強家」。
自力発見ではなく、史実や攻略を学んで使ったことへの皮肉半分。
事前の学習と準備を怠らないことへの称賛半分。
この運営、トロフィー名まで性格が悪い。
褒めながら刺してくる。
ただ、小舟とネルソンルート自体は、即乗りしなくても消えない。
そこは優しい。
皮肉は言うが、チャンスは残す。
この小舟で海側を回り、崖の前に上陸した瞬間、隠し難易度が始まる。
公式キャッチコピーは「歴史が唯一保証した正規ルート」。
さらに、例の「最高峰と人類最高峰の頂上決戦」。
うるさい。
言葉遊びの旗を何本立てる気だ。
最高峰はガルダ。
人類最高峰はネルソン。
頂上は山頂であり、頂点でもある。
しかも真の正規ルート。
史実に記録されているネルソンルート。
やかましいのに、筋は通っている。
そこがまた腹立たしい。




