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番外編9 公式が英雄で煽るな

 公式サイトに、天然地雷の正面攻略法も一応載っていた。


 横たわって、体を伸ばしたまま、高速で転がる。


 すると圧力判定が逃がされ、突破できる。


 俺は読み間違いかと思った。


 横たわって。


 体を伸ばしたまま。


 高速で。


 転がる。


 登山ゲームだぞ。


 英雄ネルソンだぞ。


 人類最高峰だぞ。


 その攻略法が、棒みたいに寝転がって湿地をゴロゴロ転がることなのか。


 絵面が情けない。


 情けなさが標高五万メートル級だ。


 王笏を持ち、旗を三本背負い、人類最高峰の顔面をした男が、登山口へ向かって無言で回転していく。


 ガルダの歴史に残していい映像ではない。


 運営もさすがにそれはわかっていたらしい。


 この天然地雷ギミックは、ステージ開始時にオンオフを選べる。


 デフォルトはオフ。


 しかも、難易度ハイキングとアドベンチャーではオンにできない。


 初心者に見せる絵面ではない、という判断かもしれない。


 いや、上級者に見せてもいい絵面ではない。


 ただし、史実ではネルソンの時代に爆発現象は知られていなかった。


 そのため、オプション欄には何が起きるか明言されない。


 ただ「真の大霊峰」とだけ表示される。


 ずるい。


 かっこよさで爆発地雷を包むな。


 判定がランダムなのも、当時の知見では完全に予測不可能だったことのゲーム表現らしい。


 ゲームとしては厄介。


 表現としては納得。


 納得したくないのに、納得させられる。


 さらに、スタート地点から登山口までの直線を、ローリングだけで突破するとトロフィーが解除される。


 トロフィー名は「理論値」。


 俺は声を出して笑った。


 理論値。


 確かに、圧力判定を逃がして転がれば突破できる。


 だが、それは理論上の話だ。


 現実の登山家が湿地を横向きに転がって突破することは、たぶんない。いや、ネルソンならやるかもしれない。だから怖い。


 ネルソンの異常さを笑いながら、プレイヤーにも変な方向で異常になれと言っている。


 ただし、ガルダ山の麓が実際に天然地雷原であることは事実。


 頻度はそこまでではないが、過去に登山口で爆死事故が起きている。


 つまり、この馬鹿みたいなローリング攻略の背後に、現実の死者がいる。


 笑っていいのか、笑ってはいけないのか、わからなくなる。


 このゲーム、そういう場所にすぐ連れていく。

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