番外編7 猛禽類と、考えてはいけない感謝
上空から高い鳴き声とともに急降下してくる、ガルダの頂点捕食者。
公式説明によれば、この設定の由来は、半信半疑の目撃情報らしい。
本当はあそこまで大きくなかったのかもしれない。
恐怖で大きく見えただけかもしれない。
でも、本当にいたのかもしれない。
やめろ。
曖昧にするな。
怖さが増す。
確定で四メートルですと言われるのも嫌だが、恐怖で大きく見えただけかも、でも本当にいたかも、と言われると、山の霧の中で輪郭が膨らむ。怪物は、確定する前が一番大きい。
難易度ハイキングでは、猛禽類は攻撃してこない。
祈りモーションを見せると、近づいてきてくれて、雄大な姿を間近で見ることができる。
観光要素。
山はいいぞ。
鳥もすごいぞ。
ただし、なぜ祈りを見せると近づいてきてくれるかを考える必要はない。
またそれだ。
考える必要はない、と言われると、考えてしまう。
祈りの姿勢を見せる。
鳥が近づく。
観察できる。
先住民の祈り。
太陽の光。
腕を広げる。
猛禽が襲わなくなる。
なんだ。
何が起きている。
答えをくれ。
いや、くれなくていい。
たぶん知ると、また文化史の崖に落ちる。
ステージ全体には三羽いる。
それぞれ生活テリトリーが重ならないように、狩りのため飛び回っている。
三羽。
多いのか少ないのかわからない。
ただ、あの大きさの鳥が三羽いる山は、もう空も危険地帯である。
岩場には巣がある。
巣に近づくと、雛を守るために執拗な報復を受け、確実に死ぬ。
難易度ハイキングでも、この場合だけ襲撃される。
ここは容赦がない。
観光難易度でも、雛には近づくな。
当然だ。
どんなゲームでも、親のいる巣に近づくのは愚かである。まして相手は四メートル級かもしれない猛禽類。巣に近づくというより、死因の玄関をノックしている。
ただし、必須ルート上に巣はひとつもない。
プレイヤーが寄らなければいい。
山は危険だが、危険に敬意を払えば避けられる場所もある。
この設計は好きだ。
怖いけど好きだ。
猛禽類は一定以上の標高には出現しない。
ある程度の標高にいるため、無理やり誘導しない限り麓にも来ない。
つまり、彼らにも生活圏がある。
ガルダの生態系はおかしいが、ゲーム内ではきちんと縄張りが組まれている。
理論上は殴り倒せる。
だが非現実的。
そりゃそうだ。
素手や登山道具で、空から来る大型猛禽を倒そうとするな。
本来の対策は、狭い場所に逃げ込み、興味が他に向くまでやりすごすこと。
ステージ上には、隠れる場所が意外といろいろある。
岩の割れ目。
小さな洞穴。
木の根元。
崩れた岩棚。
上空から見えにくい影。
山そのものが、危険であると同時に逃げ場にもなる。
そして、彼らを去らせるために何かが役に立ったことには感謝すべきだが、何が役に立ったかは考えるべきではない。
公式説明、最後までそれか。
何かが役に立った。
でも考えるな。
感謝だけしろ。
山岳シミュレーションの攻略説明で、急に民俗学の薄暗い扉を半開きにするな。




