番外編6 見える硫化水素、見えない死
硫化水素帯は、ガルダの中でもかなり嫌な危険地帯だ。
硫化水素が滞留している場所。
風によって判定が変わることがある。
濃度によってダメージ判定が入り、一定以上の濃度では即死。
地形や死骸などで兆候がある。
死骸。
また教材が直接的だ。
「ここは危ないですよ」という看板の代わりに、過去に死んだ何かが置いてある。山の授業は板書が重い。
難易度ハイキングでは、硫化水素そのものではなく、有色の特殊火山ガスという設定に差し替えられている。
濃度は不明だが、存在は見える。
つまり、初心者にも「あそこにガスがある」とわかる。
よほど変な地形に行かない限り、立っているだけで死ぬことはない。
ただし、しゃがみ動作をすると吸い込んでしまう。
低い場所にたまりやすいからだ。
なるほど。
しゃがむと死ぬガス。
ゲームの操作説明としては嫌すぎる。
歩行時の転倒はゲーム上起きないため、転んで死ぬことはない。
現実なら、転んで低い位置に顔が行く、そこで吸う、終わり、ということもあり得るのだろう。
ゲームのほうが優しい。
まただ。
ゲームの死亡判定を読んで、現実の厳しさを想像する羽目になる。
地面からいきなり顔の高さまで噴出して死ぬエリアは、フラッグオンガルダ以上にしか登場しない。
しかも、ごく限られた超危険地帯。
必須ルート外。
そこまで聞くと、少し安心する。
だが、超危険地帯という言葉はだいたいプレイヤーを誘う。
行かなくていいと言われると、行く人がいる。
ゲームのRTA勢や検証勢は、きっと行く。
そして死ぬ。
公式はそれを知っていて置いている気がする。
硫化水素帯には、先住民も危険生物も現れない。
彼らが引き返したら、それは危険の意味。
このゲーム、現地の人々や動物の行動が、危険察知の手がかりになる。
逆に非常時には、先住民や猛禽類、肉食動物から逃げるために、あえて硫化水素帯へ逃げ込むこともできる。
毒ガス地帯を避難場所にするな。
でも、ガルダではそういう選択になることがある。
どの死因を避けるために、どの死因の近くへ行くか。
登山というより、死の棚卸しだった。




