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第40話 登山口の代わりの正体

 話を登山に戻す。


 ネルソンは、湿地の手前で危険を察知した。


 先住民の行動から、投擲が危険であることも推理した。


 そして、登山口を使わないと決めた。


 ここまでは、まだわかる。


 いや、かなりわからないが、危険地帯を避けるという判断自体は正しい。


 問題は、その代わりに選んだ道だ。


 ネルソンは、山の岩肌を観察した。


 どの高さまで爆発の危険がありそうか。


 どこから地面が安定していそうか。


 どの斜面なら、爆発湿地と先住民の警戒線をまとめて回避できるか。


 そして最終的に、海から崖に張り付いて登り始めた。


 海から。


 崖に。


 張り付いて。


 登り始めた。


 言葉の並びがもう嫌だ。


 登山口と序盤の獣道を全スルー。


 爆発しない高さまで、一気に直登。


 合理的ではある。


 天然地雷を踏む確率ガチャに命を預けるより、自分の力量でどうにかできる岩壁を選ぶ。


 考え方はわかる。


 しかし、問題はその力量だ。


 選んだ崖は、海食崖百三十二メートル。


 そのうち上部五十六メートルが、玄武岩質のオーバーハング。


 俺はその数字を見て、資料を閉じた。


 また閉じた。


 最近、資料を閉じる回数が増えている。


 百三十二メートルの海食崖。


 上から見れば、波が削った黒い壁。


 足場は濡れている。


 下は海。


 上部はせり出している。


 しかも玄武岩。


 硬い。割れ目はあるが、読みづらい。滑れば落ちる。落ちたら海か岩か、どちらにしてもろくなことにならない。


 そして誰も登ろうとしたことがない。


 つまりルート情報なし。


 完全初見。


 事前情報は、「あのあたりに、そういう見た目の大きい崖がある」程度。


 登山というより、世界が出してきた黒い壁を、その場で解読する作業である。


 それをネルソンは選んだ。


 なぜなら、天然地雷よりは自分でどうにかできるから。


 お前、人間か?


 いや、人間なのは黒曜石ジジイが論文で証明してくれるかもしれないが、それは先住民の話だ。ネルソンのほうも一度、学会にかけたほうがいい。

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