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第35話 槍は敵意だけで向いていない

 さらに調べて、少し安心したことがある。


 現在では、ガルダの先住民が外部者に槍を向けてくる理由は、かなり整理されているらしい。


 少なくとも、昔の学者たちが言っていたような「余所者を見たら本能的に刺し殺す理解不能な蛮族」ではない。


 当たり前だ。


 今なら当たり前に思える。


 だが、その当たり前にたどり着くまでに、爆発と誤解と論文と黒曜石ジジイと百五十年くらいの時間が必要だった。人類、足が遅い。ネルソンが走りすぎなだけかもしれないが。


 ガルダの先住民にとって、山へ入ることには「聖なる資格」が必要なのだという。


 聖なる、と言っても魔法の話ではない。


 儀礼的で、共同体的で、山と土地に対する責任を負うための資格。


 彼らにとってガルダは、ただの資源でも観光地でもない。


 生活圏であり、聖域であり、危険そのものと共に生きるための巨大な規範だ。


 だから、外部者が山へ入ろうとすると、まず止める。


 槍を向ける。


 それは殺意の表明ではなく、資格確認の構えだった。


 お前はここへ入る意味を理解しているか。


 踏んではならない場所を知っているか。


 山を汚す者ではないか。


 共同体の言葉で言えば、聖域を汚す魔獣ではないか。


 その確認である。


 もちろん、槍を向けられる側からすれば怖い。


 めちゃくちゃ怖い。


 俺だったらその場で膝が初雪みたいに崩れる。


 だが、今の研究でははっきりしている。


 刺されるのは、警戒を無理やり突破しようとした者だけだ。


 資格確認を無視し、止まれという合図も読まず、聖域へ踏み込もうとした者が、危険な侵入者とみなされる。


 なるほど。


 昔の外部者が刺された理由は、たぶんこれだ。


 言葉が通じない。


 槍を向けられる。


 怖い。


 逃げる。


 あるいは突破しようとする。


 すると向こうからすれば、聖域に暴走して入ろうとする危険存在に見える。


 結果、刺される。


 最悪のすれ違いだ。


 怖がって動くほど危険になる。


 山でも人でも、判断を誤ると死ぬ。


 ガルダ、あらゆる方向にチュートリアルが厳しい。

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