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第30話 「人骨を見せてくる」

 しばらくして、第二次調査団が派遣された。


 第一次の失敗を踏まえ、人数も装備も慎重に整えられたらしい。


 彼らは山中で、先住民と遭遇した。


 記録にはこうある。


「現地人は調査団に接近し、呪術的な所作を行い、人骨と遺物を見せた。意図は不明。低知性ゆえの奇行と考えられる」


 俺はその記述を読んで、机を軽く叩いた。


 低知性じゃない。


 お前の読解力が低地で遭難しているだけだ。


 現在の研究では、その場面の意味はかなり明らかになっている。


 先住民たちは、第一次調査隊で亡くなった九人の遺体を埋葬していた。


 爆発で損傷した遺体。


 残された装備。


 金具。


 布。


 身につけていた品。


 彼らはそれを保管し、あるいは埋葬し、後にやってきた第二次調査団へ示した。


 意味は、おそらくこうだ。


 お前たちは、見た目が似ている。


 同じ部族か。


 この死者たちは、お前たちの仲間か。


 連れて帰るか。


 あまりにも人間的な行動だ。


 弔い。


 確認。


 返還。


 遺族へ帰すという発想。


 それを当時の調査団は、謎の呪術と見た。


 低知性の奇行と書いた。


 俺は、胸の奥が重くなった。


 ガルダは怖い。


 雪崩も、爆発も、猛禽も怖い。


 だが、人間が他人を見誤るときの怖さは、また別だ。


 山の危険は、足元や空や岩から来る。


 この危険は、机の上で来る。


 論文の中で来る。


 報告書の中で来る。


 安全な部屋にいる人間が、遠くの人間を勝手に削っていく。


 それもまた、遭難の一種なのかもしれない。


 道に迷っているのに、自分たちは高い場所から見ているつもりでいる。

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