第29話 「爆発後に襲ってきた」
例の大規模調査隊の報告書にも、問題の記述があった。
二十二人でガルダに向かい、登山口で爆発に巻き込まれ、九人が死亡した調査隊。
標高ゼロメートルで撤退した、あの三ページの報告書だ。
そこには、こう書かれている。
「爆発後、現地蛮族の襲撃を振り切り、帰還した」
俺は、読みながら首をひねった。
爆発直後。
九人死亡。
十三人負傷、混乱、撤退。
そこへ先住民が襲撃。
当時の人々は、これを真に受けた。
やはり彼らは危険だ。
爆発で死にかけている人間を本能的に襲う。
危険を理解していない。
理性がない。
鬼畜のような存在だ。
そう解釈された。
だが現在では、見方がかなり変わっている。
まず、調査団が盛った可能性。
血税を使って大規模調査を行い、登山口で爆発して逃げ帰った。
成果は三ページ。
面目は丸つぶれ。
そこで、撤退の理由に「現地民の襲撃」を加えた。自分たちは無能ではない。自然災害と敵対行為によって、やむなく撤退したのだ。
そういう作文だ。
もう一つは、先住民が救助に来た可能性。
爆発音を聞いた。
煙を見た。
外部者が危険地帯で吹き飛ばされた。
だから近づいた。
彼らは天然地雷を経験知で避ける技術を持っていた。湿地を忍び足のように歩く。地面の色、泡、草、温度、足裏の感触。そういったものを読み、危険な場所を抜ける。
凄すぎる。
俺なんてゲームの湿地ですら感情を持ち始めているのに、彼らは現実の爆発湿地を歩いている。
その人たちが、救助のために近づいてきた。
だが、言葉は通じない。
調査団はパニック状態。
武器を持った現地人が近づいてくる。
襲撃だと思って逃げた。
あり得る。
むしろ、そちらのほうがずっと自然だ。
山の危険を理解していないのは誰だったのか。
爆発の危険を知らなかったのは誰だったのか。
死にかけている人間に近づいたのは、攻撃のためだったのか、救助のためだったのか。
当時の報告書は、答えを間違えた。
しかも、その間違いが、先住民への偏見をさらに固めた。
紙は薄いのに、罪は重い。




