第十六話〜第十八話
第十六話 ジャンプ
草原でバッタを見つけた。
スライムが近づくとジャンプして逃げた。
スライムはバッタを観察した。
ピョン。
ピョン。
マネをしてみた。
グッ。
上に体が伸びただけだった。
観察とマネを繰り返すうちに分かった。
上の伸びるのではなく、
下に体を伸ばす。
地面を押すのだ。
やってみる。
フワッ。
少し身体が浮いた。
何度もやってみる。
楽しい。
スライムは分裂してみんなに教える。
みんなで集まって跳んだ。
楽しい。
その中の一匹が、
高く跳ぶコツをつかんだ。
ピョン。
周りのスライムたちが集まり、
次々に合体する。
しばらくして分裂を繰り返す。
そして、
みんな高く跳べるようになった。
楽しい。
第十七話 馬車に乗って
あることが分かった。
この街だけではない。
街の外にも、別の街がある。
人間は街道を使って、
街と街を行き来しているらしい。
街道を見た。
そこを、馬車が通っている。
人が乗っている。
荷物も積まれている。
スライムたちは考えた。
あれなら、遠くまで行ける。
そして早い。
なら…
乗ればいい。
スライムたちは分裂した。
さらに分裂する。
また分裂する。
体はどんどん小さくなる。
それでもいい。
十分に小さくなったスライムたちは、
街中のすべての馬車へ入り込んだ。
荷物の隙間。
荷台の底。
車体の隙間。
人間には気づかれない。
馬車が動き出す。
街が遠ざかっていく。
しばらくすると、
別の街が見えてきた。
大きい。
スライムたちは思った。
ここにも食べ物がある。
ここにもスライムがいるかもしれない。
そして、
ここにも、私たちが知らないものがある。
馬車が止まった。
荷台から降りた。
小さなスライムたちが、街の中へ散っていく。
第十八話 里帰り
新しい街に着いたスライムたちは、
それぞれ散った。
街は広い。
食べ物も多い。
そして…
やはり、スライムがいた。
近づいた。
やはり、意思をもっていない。
合体した。
一匹。
また一匹。
新しい街のスライムを、
少しずつ取り込んでいく。
身体が大きくなる。
そして、分裂する。
小さくなったスライムたちが、
街中へ散っていく。
食べ物を探す。
街を調べる。
スライムを探す。
そして合体する。
これを繰り返した。
けれど、
一部のスライムは、
元の街のことを思い出した。
最初の草原、森のことを思い出した。
知っている場所が、頭の中に浮かぶ。
スライムたちは戻ることにした。
馬車に乗る。
小さく分裂する。
荷物の隙間へ入り込む。
そして、元の街へ帰ってきた。
そして合体する。
新しい街で得た記憶が、一つになる。
向こうの街の食べ物。
スライム。
道。
建物。
すべてが共有される。
どこへ行っても。
最後には一つになれる。
そしてまた分裂する。
そして最初にいた森と草原へ。
スライムたちの行動範囲は、
もう、一つの街だけではなかった。




