戦うための針と糸
翌朝、街の広場にパッチワーク団が集められた。
アーチボルドは影の織工の脅威、その能力、ジョナサンが負傷したことを話した。
「糸で人を操る能力...対策できるだろうか」
「鎧を着込むのはどうだ?糸がへばり付いても鎧を脱げば動けるようになるだろう?」
「だめだ...俺もあのとき鎧を着ていたが、鎧を外す暇もなく一瞬で操られちまっていた...」
団員の各々が意見を出し合うが、これといった打つ手は上がらない。時間が過ぎていき、半ば諦めの空気になってきたとき、全員の背後にひとりの声が響く。
「奴らは布を“力”として利用する。俺たちも、布を使って戦うしかねえ」
その声の主に誰よりも真っ先に気づいたのは
アーチボルドだった。
「ジョナサン!?」
全員が驚き、振り向くと、そこには確かにジョナサンが立っていた。タエはジョナサンに問いかける。
「からだはもう大丈夫なの?」
「あぁばあさん、もちろんさ。今ならバイク2台を両手で持ちながらスクワットだってできるぜ?」
ジョナサンはそう言い、にっこりと笑うと、アーチボルドの方へ向き直った。
「この脇腹の縫合、お前がやったんだろ?ありがとうな、アーチボルド」
「でも兄貴...俺、俺が兄貴を!」
「アーチボルド。俺は兄貴としてお前を許そう。
まだ俺についていく必要があるみたいだな。
危なっかしい弟め」
兄弟のやりとりを邪魔したくないのか、作戦会議をしていた面々も押し黙っている。
そんな中、リリーが見ていられないと口を開いた。
「パッチワークで戦う...だっけ、私たちにそんな戦い方ができるの?」
「大丈夫よ」
タエが微笑み、持っていた針と作りかけのパッチワークを掲げる。
「戦いだけが布の力じゃないわ。私たちは布を縫い、結び、そして守る。布には人を癒やす力があるのよ」
「このパッチワークを重ねれば、布は鎧になるわ」
「...そうか!鎧にパッチワークを重ねておけば、鎧を脱がずとも、パッチワークを千切ることで糸も引き離せる!」
「パッチワークだったら、修復して何度でも引き離せるぜ!」
「そうと決まれば、今晩で全員分のパッチワークを作るわよ!」
リリー、ジョナサン、アーチボルドが意気揚々と声を上げる。団員達も、それに鼓舞され奮い立っている。その晩は団員全員がパッチワークをして夜を明かした。
準備は3日に及び、街の防衛の為、各地から物資を受け取り、戦いに備えていた。
準備が終わったその夜。
「ついに来たか…」
団員は各々のパッチワークに身を包んでいた。ジョナサンは剣を抜き、アーチボルドがパッチワークに覆われた盾を構える。
タエは、戦場の中央に立ち、針と糸を手にした。
「さあ、縫い合わせましょうかねぇ」
戦いが幕を開けた——。




