影の織工
ジョナサンとアーチボルドは、夜の街を抜けて影の織工の痕跡を追った。
「こっちだ、兄貴…」
アーチボルドが示した先には、黒い糸が絡みつく廃墟があった。
「これは…?」
ジョナサンがそっと触れると、糸がまるで生き物のように絡みつこうとする。
「クソッ…こいつ、生きてるのか?」
すると、闇の中から声が響いた。
「よくぞ見つけたな、パッチワーク団…」
ジョナサンが剣を抜く。そこに現れたのは、全身を黒い布で包んだ男だった。
「俺の名はヴァルゴ。影の織工の一員だ」
「影の織工...お前らの目的は何だ?」
「布は力だ。お前たちの街は、その力を持ちすぎている。我々が、それを回収する」
「ふざけるな!」
アーチボルドが飛びかかろうとするが、ヴァルゴは黒い糸を操り、彼を締め上げる。
「くそっ…こ、この…!」
「力なき者は、糸に絡め取られるだけだ」
ジョナサンがアーチボルトに絡みつく糸を切断しようとした時、アーチボルトが叫ぶ。
「兄貴!待ってくれ、俺に近づくな!」
「!?」
その瞬間、"アーチボルト"が"ジョナサン"に切りかかる。
「アーチボルド!どうしたんだ、何故俺に...」
ジョナサンは訳がわからなかった。今まで共に戦い、道を歩んできた実の弟。アーチボルドに攻撃を受けた。その現実がジョナサンの思考を停止させ、その隙が彼に致命傷を与えた。
「ジョナサン!」
アーチボルトの剣はジョナサンの脇腹に深く突き刺さった。しかしアーチボルドは剣を引き抜き、攻撃の構えをとかない。
「やめてくれ...もうやめてくれ...」
アーチボルドは目の前の光景を受け入れられるはずも無く、黒い布の男に懇願する。その姿には、いつものような勇ましさや気力はない。
両目からは大粒の涙が溢れ、声を絞り出すのに精一杯だろう。
「終わりだな...ジョナサン」
アーチボルトの剣がゆっくりと振り下ろされる。
「やめてくれ...やめてくれよぉ」
その瞬間、アーチボルトの目の前を何かが通り過ぎる。
針だ。
針はアーチボルドに絡まる糸を切断し、
男の手のひらに突き刺さる。
「ふたりとも。遅くなってしまったわねぇ」
「タエの...ばあさん?...ばあさん、
兄貴が、ジョナサンが!」
「わかっているわアーチボルド。
...ここは引くべきねぇ」
タエ、アーチボルドは、ジョナサンを抱えて逃げた。
ふたりが逃げ込んだのは、かつてジョナサン、アーチボルドが使っていたセーフハウスだった。
「兄貴は、いつ目を覚ますんだ?」
「直ぐに目を覚ますわ。あなたが縫合を手伝ってくれたおかげね」
「俺が...兄貴を、ち、ちがう!違うんだ!体が...」
「わかっているわアーチボルド。あなたはやっていない...敵は糸で人を操ることができるようね」
「ばあさん、俺は許せねえ。兄貴を、ジョナサンをこんなにした影の織工を許せねえ!」
「ええ。これは、布をめぐる新たな戦いの始まりね」
タエは静かに針を握った。




