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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第3章 深層の覚醒

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第9話 政府会議⑧──強襲

山崎が予想到着時間を告げたその時、碧がMAP上に現在位置をマーキングした内の1つ。

南伊豆付近で警戒している多用途支援艇からの通信が入る。


多用途支援艇:『こちら多用途支援艇 18──

ソナーに禍津鰐の反応!

我が艇へ向かって高速で接近中!

ノイズ発生装置、起動しま──!』


(大きな衝突音)


多用途支援艇:『──っ、被害甚大……!

こちら18、救援を要請──我が艇は沈没──』




大きな衝突音の後、冷静に救援を要請する声と悲鳴が混じりあった音声が続き、水に沈んで行く音の後に通信が途切れた。


会議室内も、生で聞く惨状に会議室内でもパニックを起こし、悲鳴が聞こえ、徐々に沈黙が会議室を包んでいく。


教授:「……速いな。

前回この速度で囮ドローンを追われていたら、作戦は失敗していた。

一昨年よりも成長したか……いや、前回は低酸素濃度で息切れした後だったから作戦が成功しただけか…運が良かったな」


教授の小さな呟きが、沈黙する会議室に響いた。


誰もが顔を青くさせ、言葉を持たない中、不気味な程冷静に自分の頭を整理する教授の呟きに、議長が気を持ち直す。


議長:「…佐藤君、安積君を頼む」


先程悲鳴の聞こえた入り口側を見ると、安積が自分の肩を抱き寄せるようにして床に座り込み、震えていた。

安積は肩を抱き寄せたまま浅く速い呼吸を繰り返し、微かに喉が鳴っている。


隣に座っていた対策チームの女性職員が、安積を包むように寄り添いながら、2人で会議室を後にした。


議長:「山崎君、今の黒影の推定速度は分かるか?」


山崎は再度条件を入れ、計算する。


山崎:「スタート地点とタイミングが不明ですが…17ノットから……最悪、20ノット出ている可能性もあります」


議長:「そうか…

…クイーンよりも圧倒的に速いな。


自衛隊の艦船は、禍津鰐対策にノイズ発生装置を積んでいたが、作戦に影響を出さないために切っていた…


…現在、残り2隻は強いノイズを発生させ、ソナーに映る影は恋人岬の方向へ引き返したようだ」


会議室は未だ衝撃から抜け出せていなかった。

そんな中、1人冷静に状況を分析していた教授が再び口を開く。


教授:「我々は便利な仕組みに驕(おご)っていたようだ。

そもそも海中を進むサメを相手に、水面に出て来ないと検知も出来ない仕組みで追えると思ってしまっていた。

食い溜めをしていたクイーンも、腹を空かせて出て来た群れも、捕食のために水面近くの魚群や船を追っていたに過ぎない。


そして、群れで行動するという前提に囚われ過ぎた。

最初から群れを離れていれば、既に駿河湾を出ていた可能性もある。

そうなればこの雨も手伝って、捜索は困難を極め、対策も全て後手に回り続けただろう。


“桃”の発動後にもノイズ発生装置の使用を促していなかったことも、我々の落ち度だ。


だが、今すべきことは後悔ではなく次の一手だ。

反省すらも後回しにせざるをえない。

“黒影”がその気になれば、すぐにでも駿河湾を抜け出せることが分かった。

外に出られてしまえば規制も捜索も出来ず、常に後手に回、被害を拡大させることになる。

まずは出来ることを確認しよう」


うつむいていた碧が、画面の明滅に気付いて顔を上げ、PCの画面に釘付けになる。


碧:「横から失礼します。

残り10分程で、禍津鰐22頭の送還が完了します」


全員がモニターを凝視する。


議長:「報告ありがとう。

“桃”壱型【封】の操作まで、碧に任せていいか?」


碧:「承知しました。

山崎さん、封印完了までの間、会議で使用するモニターの操作をお願いします」


山崎が頷くのを確認し、碧は目の前のPCに集中する。


議長:「では我々は、“黒影”であると思われる、残り1頭の禍津鰐の討伐についての話をしよう。

…山崎君、どうした」


山崎が手を挙げている。


山崎:「その前に訂正させてください。

先程は17から20ノットと言いましたが、あれは禍津鰐の群れが無人艇方向に向きを変えた辺りを基準にしています。

ですが、もしもノイズを発生させた初期で“黒影”には気付かれていたとしたら、平均速度で15から16ノットとなります。

もちろん、それが平均であるなら、やはり狩りの瞬間は17から20ノット出せるものとして考える必要はあると思いますが」


議長:「そうか、それは朗報だ。

平均速度で海雲丸の最高速度を上回るバケモノという訳ではなかったのだな」


稲垣:「だが、センサー類で固めているのは、いまだに興津の防波堤前だけだ。

あそこに“黒影”は寄り付かない可能性がある。

かと言って、由比沖の封印付近のセンサー類は、マーカーがなけりゃ、カメラしか役に立たないぞ」


海自の担当官が手を挙げる。


海自:「今回は、正式に我々自衛隊への出動要請が出ています。

であれば、ソナーマンを潜水艇へ乗船させることも出来ます。

AIと違い立体的な視覚化は出来ませんが、今年追加された潜水艇のソナーと合わせて、索敵が可能です」


議長:「先程山崎君が絞り込んだ範囲に無人艇を設置していけば、それと合わせて“黒影”の位置情報は探れるか…

自衛隊の艦船でノイズを出しつつ、“黒影”を土肥より北側まで追い込むことは可能か?」


海自:「可能です。

護衛艦は現在、救助活動中ですが、別の艦船を応援に寄越します」


碧が手を挙げる。


碧:「これより、“桃”壱型【封】バルーンを展開します」


モニターの画面が黄泉の国へ開いた大穴を映すカメラの映像に切り替わる。

魚雷のような形状をした5つの“桃”壱型【封】が、ドローンの編隊飛行を思わせる等間隔の規則的な動きで大穴へ到着し、角度が調整される。


碧:「バルーン、展開します」


5つのエアバッグが同時に展開し、規則正しい配置で大穴を塞いだ。


会議室から歓声が漏れる。


碧:「これで1時間程度で完全に硬化します。

“黒影”討伐後、富士さんの会社へ依頼し、周囲の補強を完成していただきます」

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