第5話 政府会議④──宿怨
山崎:「3つに分かれている群れに関しては、問題はなさそうです。
会議中も自分のPCでMAPを開いていたんですが、ある程度食べたからか、水面に姿を現す頻度が減り始めたんです。
それと同時に、3つの群れが合流を目指すような動きをしています。
放っておけば、1時間程度で合流するのではないかと予想しています。
“黒影”の学習に関しては、その通りだと思います。
あの時“黒影”は無人艇を追わず、海底を泳いで直接亀裂付近へ姿を現しました。
これは少しでも酸素濃度の濃い海水を欲したのだと思っていたのですが、学習の結果、ノイズ発生装置を備えた無人艇を避けたという可能性もあります。
なので作戦は確実ではありません。
ですが、3つの群れはいずれも船を攻撃している可能性が高いです。
その3つに属さない、はぐれ個体も確認されていないので、“黒影”がいるのならば、その3つの群れのいずれかで船を襲っていることになります」
稲垣:「まぁ、筋は通っているな。
だが、“黒影”に電磁ノイズは通用しない。
最悪の場合、禍津鰐の意思疎通が高度だった場合、群れにも伝える可能性もある。
そう考えて作戦に挑む必要がある」
海雲丸:『…それは、俺がまたその無人艇の役割を引き受ければいいってことか?』
オンラインで繋がっていた海雲丸の船長が入って来る。
稲垣:「魅力的な提案だが、それはダメだ。
今回は前回と違ってGPSのタグがついていない。
さらにどこから来るかも分からない23頭が、統率された群れを成して襲って来る。
あまりにも危険過ぎる」
海雲丸:『だが、ノイズでダメなら、また切り身を垂れ流しながら囮になる必要があるんだろ?
それに一昨年の資料を見たが、その“黒影”ってやつは、俺の友人の敵だ。
あの日最後にした通信の内容は今でも覚えている…。
俺が作戦に協力してるのは、そいつが沈めた船の敵を取るためだ。
自己満足でしかないが、相手がその“黒影”なら、俺にはやる理由がある』
教授:「それでは折衷案としよう。
まずは無人艇による囮を試みる。
それで23頭を黄泉の国へ送り返すことが出来るかもしれない。
だが、もしも1頭だけ残ってしまうことがあるとするなら、それは恐らく“黒影”だろう。
22頭を戻した時点で、黄泉の国は封印する必要がある。
そして、1頭であれば危険度は下がり、誘導が可能になる。
誘導が成功して場所が分かっているのであれば、1頭であれば対処は可能だ。
もしも23頭全てが無人艇を追わない場合は作戦を根底から見直す必要があるが、そんな感じでどうかな?」
稲垣:「それならば問題ない」
海雲丸:『俺もそれで大丈夫だ。
もしも23頭全てを相手にする場合でも、方法があるのなら俺は出る。
なんなら、全てのバケモンが出て来てるなら、壁がどうなってももう関係ないんじゃないか?
自衛隊の兵器で一網打尽に出来るんじゃないのか?』
議長:「それは案の1つとして覚えておこう。
だが、我々は出来る限り禍津鰐を黄泉の国へ送り返す方法を優先する。
それに、1頭でフェリーを沈めたバケモノが23頭だ。
自衛隊の戦艦や潜水艦ですら、接近を許せば終わりなのに違いはない」
海雲丸:『そうか。了解した』
議長:「では、他に懸念点や改善点はあるか」




