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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第2.5章 山崎の夏休み

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山崎の夏休み ep-2 ──模索

借りた合鍵を持って、名古屋にある稲垣の自宅の扉を開けた。


2ヶ月ほど留守にしているが、たまに蘭が戻っているらしく、掃除が行き届いていた。

聞いていた通り、冷蔵庫にはほとんど何も入っておらず、自分の家から持って来た調味料をしまっていく。


荷物をキャリーバッグに入れたまま部屋に置いてから買い出しに出かけ、帰ってから荷物を整理した。

2年生の冬休みから寝泊まりしている部屋は、元々は稲垣が趣味のものを置いていた倉庫のような部屋だった。

それが現在、山崎の部屋として用意されている。

ここはいずれ2人の子供が大きくなった時、子供部屋になるのだろう。


初日は、これから1週間住んでいくための準備と、水族館での研究のために持ってきた機器の確認。そして、稲垣の書斎で本を読み耽(ふけ)るうちに、あっという間に就寝時間を迎えた。




翌日、トーストと目玉焼きと粉末のコーンポタージュという、シンプルな朝食を済ませて、予約していたタクシーに乗り込んだ。

初日は機材の持ち込みがあるため、奮発してタクシーを利用した。




初日は禍津鰐の事情を聞かされている一部の職員からの質問攻めにあったが、徐々に落ち着き、通常通りのバイトに移行していく。


違うのは、稲垣の助手ではなく、山崎が自身が主体となっている事。

そして、仕事が大幅に軽減されていることだった。

稲垣がいないことと、研究が主な目的であることを知っている、上の人間による配慮だった。


今回補助に入るのは、主に群れをなす魚の担当の補助のみだった。

データの収集に関しては、冬休みバイトの際に70%を自動化し、残り全てを担当した。


そして、人見知りな山崎の最大の鬼門。

稲垣の代わりの子供向けの解説ショーは、しっかりと業務の中に組み込まれていた。


稲垣は噛み砕いた言い方を意識していたが、それ以外はただ緩く説明していただけのようだったが、同じようにやったつもりでも、稲垣の時のような眼差しを受けることは出来なかった。

稲垣から預かっているイルカの小物が先端についた差し棒も、山崎が持っても子供の人気を取ることは出来なかった。


だが、2日目のある少年の質問から流れが変わった。


少年:「テレビにでてくる“まがつわに”って、どれぐらいおっきいの?」


山崎はホワイトボードに簡単な絵を描きながら答える。


山崎:「禍津鰐はね、小さなオスでも小学校のプールぐらい大きくて、大きなメスだと、目玉だけでも君の頭より大きい、バレーボールぐらいあるんだよ」


そう説明しながら、ホワイトボードにクイーンとプールと子供を対比する絵を描く。

子供達はその大きさに、キャーキャー言いながら目を輝かせていった。

以降は解説ショーの終わる時間まで、手を挙げて質問する子供が絶えなかった。


稲垣さんの雰囲気は真似できないけど、子供に興味を持ってもらうのは、それだけじゃないんだな。


翌日からも、山崎の解説ショーに対する子供達の反応はさらに良くなっていった。



それらの仕事をこなしながら、持ち込んだ機器と新たに設置したカメラで群れについて研究しつつ、それらの生き物の担当職員に、機器の説明をして自身の夏休みバイトが終了したあとのデータ収集をお願いして回った。



家に帰った山崎のルーティンは、お風呂に入った後に夕食を作り、夕食を食べながらオンラインで稲垣と蘭にその日の報告をしていた。

そして、稲垣からも研究の内容をかいつまんで説明してもらい、共有されている研究成果を読んだ。

そして寝るまで本日の研究のまとめと、書斎での読書をするという流れを、毎日のルーティンとしていた。




バイト最終日前夜、研究についてのまとめを早めに切り上げて読書もキャンセルし、お世話になった稲垣邸の掃除をしつつ、蘭から依頼された冷蔵庫の残り物の写真を撮って、蘭に送った。


最終日は、今年も山崎の誕生日に設定されていて、稲垣と蘭と教授が夜に来ることになっていた。

良く聞く、チートデイってどこまで許容されるんでしょうか?


運動のお陰でダイエットを必要としているわけではないのですが、職場で出ていた話に加わりたくて、ちょっと盛って話に加わった罪人です。

実際には、「麺カタ・こってり・ヤッター!」という恋のおまじないを聞いて育ったチーターには、限られたチートデイを設定するのは難しいです。

チートデイ以外を週1回設けるということで許していただけないでしょうか?


そして、週1回はノンアルで我慢する休肝日を作っているって話をドヤ顔でして、健康管理室で怒られたという話を聞きました。

週1回のほろ酔いで我慢する日を休肝日と呼んでいるなんて、口が裂けても言わないと心に決めました。

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