第22話 漁火
海雲丸:『こちら海雲丸。出港する』
議長:『こちら会議室。
承知した。
“クイーン”の動向と距離は逐次連絡する。
これより、“イサリビ作戦”を開始する』
多くの命を奪った“クイーン”討伐作戦の開始が宣告された。
海保:『海雲丸、まずは東南東、大瀬崎の方向に舵を切れ。
MAPに表示された航路で大回りで折り返し、✕印のついた地点を目標に旋回を終え、三保真崎を向いてくれ』
海雲丸:『了解した。
また進路変更前に教えてくれ』
海保『承知した。
進路変更の際、再度連絡する』
海保:『海雲丸、そろそろ旋回地点だ。
左手の大瀬崎を通過後、速度を落とさない範囲で右へ大きく回頭しろ。
目標は三保真崎の防波堤だ。
予定では三保真崎へ向けて旋回が完了した際、三保真崎までおよそ10キロメートル。
“クイーン”が背後、1キロメートル程度の位置につく予定だ』
海雲丸:『了解だ。
現在大瀬崎を通過中。右に舵を切る』
海保:『承知した。
現在”クイーン“のGPS信号は捉えられていない。
旋回半径への注文がある場合か、”クイーン“との距離が分かったら連絡する』
海雲丸:『了解だ』
海保:『海雲丸、至急速度を上げろ。
”クイーン“の進行に400メートルの誤差が出た。
現在海雲丸のおよそ600メートル後ろにいる
”クイーン“の進路からして、既に捕捉されている』
海雲丸:『了解した。速度を上げる。
もうじき進路は三保真崎を向くが、エサ撒きを開始するか?』
議長:『適正距離に離れ次第、誘引を開始する』
海保:『適正距離を確認した。海雲丸、漁火を掲げろ』
海雲丸:『エサ撒きを開始する』
海自:『潜水艇、これよりセンサーを起動する。
1分後、キャリブレーションを開始しろ』
山崎:「了解しました。
1分後にキャリブレーションを開始します」
海自:『潜水艇、キャリブレーションを開始しろ』
山崎:「キャリブレーションを開始しました」
海自:『これよりおよそ14分後、”クイーン“が音波センサーの有効距離である3000メートル以内に侵入する。
進行速度の誤差を修正しつつ、動的補正に入れ』
山崎:「了解しました。
キャリブレーションが終了後、静的補正を入れ、”クイーン“が有効距離に入り次第、動的補正に入ります」
海保:『“クイーン”との距離が1000メートル離れた。
海雲丸、速度を15ノットに落とせ』
海雲丸:『了解だ。速度を15ノットに落とす』
山崎:「残り3000メートル。“クイーン”を捕捉。
動的補正を開始します」
海自:『承知した。動的補正に入れ』
山崎:「濁りのせいか、長距離の音波センサーが安定しません。
AI補正ありでも、“クイーン”の位置にブレが発生します。
また、先ほどから“クイーン”が潜航し、GPS信号が拾えない為、正確な距離が掴めません」
海雲丸:『こちらのソナーでは拾えているぞ。
現在バケモノの深度は100メートル程度。ソナーが邪魔なら切る。
もし切るなら、俺らとバケモンとの距離は、そっちから教えてくれ』
海自:『どちらもアクティブ音響を使用しているため、パルスが干渉している可能性が高い。
”クイーン“は潜航しているが、確実に海雲丸を追跡している。
危険だがソナーを切り、今後の速度管理は音波センサーによって行う。
潜水艇は、船外カメラの映像と音波センサーの統合情報を差し替えてくれ。
どちらか片方ならば音響通信で取得可能だ』
海雲丸:『ソナーは切った。距離の管理は任せたぞ』
海保:『承知した。映像が切り替わり次第、情報を伝える』
山崎:「映像を船外カメラから音響センサーに切り替えました」
海保:『センサー映像、受信した。
現在海雲丸との距離、およそ1100メートル。速度そのまま』
海雲丸:『了解した。速度を落とす時は教えてくれ。
指示がなければ予定通り、堤防を掠めて通過する』
海保:『承知した。今のところ予定通り潜水艇の上を通過して北上する進路を取ってくれ』
海自:『潜水艇。今より3分53秒後に海雲丸が潜水艇の上を通過。
5分11秒後に”クイーン“が”桃“弐型【刃】射出予定の500メートル圏内に侵入する。
今のうちに体を伸ばし、”桃“射出に備えてくれ』
山崎:「了解しました」
漁火
日本の海の怪異で最も象徴的な存在、海坊主が寄ってくる“漁船の灯り”のこと




