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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第2章 深層の顕現

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第21話 可視

白州:「こちら潜水艇。ただいま着底しました。

現在海の中は濁りで視界が数メートル。

“桃”弐型のカメラでも“クイーン”を捉えることが困難なため、防波堤付近に設置されているセンサー類の使用を許可していただきたいです」


議長:『こちら会議室。着底、承知した。

センサー類が不可欠なのは理解した。

使用に関しては少し相談する時間をくれ。

そちらでもモニターで見ているかもしれんが、“クイーン”はおそらく狩りを始めた。

現在、西伊豆町沖にいるが、いつ戻るかも分からん。

クイーンが確実に帰路についたと判断されれば、囮の漁船が出航する。

いつでも作戦に移ることが出来る気構えでいてくれ』


白州:「承知しました」


白州はマイクのスイッチを切ると、再度計器類を確認している。

計器の確認を終えて周りを見渡し、山崎はPC作業に集中しており、響は目を瞑ってイメージトレーニングをしていたため、視線を響が開いたPCの画面に移す。


画面には同じ辺りで赤い点のログが停滞していた。




議長:『こちらは会議室だ。センサー類だが、使用を許可する。

ただし、“クイーン”の感知境界の中で突然つければ、囮に注意を惹きつける前に強襲される恐れもある。

“クイーン”が完全に囮に食いついた後の起動となるが、問題ないか?』


山崎:「……今作成している物が完成した時点で調整したいところですが……仕方ありません。

囮による誘導が始まってから、間に合わせます」


議長:『承知した。

今作成しているものが完成してからで構わん。

説明を頼む』


山崎:「承知しました」




山崎の打鍵音だけが響く静かな空間が、強くENTERキーを叩く音と山崎の声で破られる。


山崎:「出来ました!説明は無線で会議室と繋いでからします」


山崎が白州に視線を送ると、白州は頷いてからマイクのスイッチを入れる。


山崎:「山崎です。完成したものの説明をします」


議長:『こちら会議室。よろしく頼む』


山崎:「僕が作ったものは、“桃”弐型のサーモカメラの映像に、センサー類と地形の情報を統合する仕組みです。


通常カメラでは視界が数メートルしかないため、サーモカメラに頼る他ないのですが、相当近づくまで見えないことと、周囲の地形が見えないため、VRで視覚情報を補足するシステムを作成しました。


複数の音波センサーの情報を統合して、3次元的に位置情報をVRで点として表示します。

地形は知多さんの調査データで、駿河湾内の浅い範囲に関しては全ての海底地形の3Dデータ化が完了していたので、それを元に地形をフレームワークでVR表示させます。

支給されている高性能のAI PCに外付けのGPUで画像処理能力を上げているとはいえ、コンマ数秒の誤差は出てしまうので、響くんの先読みに、さらに負担をかけてしまうのですが…」


響:「大丈夫です。

最初から通信の遅延はありますし、この濁った中でさらに遅延があるかもしれないと思って、待っている間に大きめの遅延を想定してイメージを固めてあります」


議長:『そうか。事態の変化にこちらで対処出来ず、申し訳ない。

音響通信では山崎くんの作ってくれたシステムを受信するほどのデータのやり取りは難しいため、こちらで検証することが出来ない。

サポートが出来ずに申し訳ないが、現場の君らが頼りだ。

よろしく頼む。

……碧』


碧:『碧です。

先ほど調整と言いましたが、その手段の説明をお願いします。

地形データのフレームワークも音波センサーによる3D的な位置表示も、既に作成してある仕組みなのでそれらを統合してARでの表示は現実的な案だと思います。

ですが、複数の音波センサーを使用した3D的な表示には、起動後のキャリブレーションが必要です。

通常は常設カメラの映像との統合で実施しますが、視界がない今の状況では使用不可能なはずです。

どのようにしてキャリブレーションを完了するおつもりですか?』


山崎:「3段階のキャリブレーションでいきます。

まずは潜水艇自身の位置と、複数の音波センサーの距離情報から三角測量で仮のキャリブレーションを行って起動を完了します。

これは誤差を含んだ粗い配置ですが、肝心の“桃”の位置を読み込ませるためです。


次に、知多さんの海底地形データと音波センサーの反応位置を照合して、

既知の地形と一致する部分を基準に静的な補正を入れます。

これで、センサー群と地形データのズレを最小限に抑えられます。


最後に動的な補正を入れます。

“クイーン”が3000m以内に入ったら“クイーン”の動きを、“桃”が射出されたら“桃”の動きを基準に、AIが動的補正を入れ続けます。

地形データと矛盾しない範囲で、センサー群の位置と時間軸を微調整し続ける仕組みです」


碧:「承知しました。

“桃”射出後は極めて短い時間での補正になりますが、潜水艇位置で仮の位置を取得出来ているのと、“クイーン”の補正で動的な補正に関する学習をしているのであれば、スペック的にギリギリ可能な範囲だと判断しました。


…ただいま“クイーン”が帰路についたとAIが判断しました。

キャリブレーション設定の最終確認をお願いします』


議長:『聞いた通りだ。

これより囮の漁船が出港する。

君達も、各自作戦に入る準備を進めてくれ』


潜水艇3名:「承知しました」

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