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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第2章 深層の顕現

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第19話 政府会議⑥ ──南下

同日の24:00、再び会議室へ招集された。

今度は全てのメンバーが揃い、白州も着席している。


議長:「ここにいるほとんどの者が本日2度目の会議であるため、儀礼的なものは省略させてもらう。

急遽早い就寝をお願いし、こんな集まって貰った説明はメッセージで送ってあるが、全員に配布させて貰った山崎君からの作戦提案を今夜実行に移すためだ。

目を通してくれてあると思うので細かい説明は省くが、政府としてはこれを早期で実行する必要があると判断し、政府側の専門家で細部まで煮詰めた。

潜水艇の出港予定は2:00だが、出港を早める可能性が出て来た。

その説明の前に、早期実行と夜間の作戦である理由は以下の通りだ」


モニターに箇条書きの文章が表示される。


・時間をおくほど反対の声が波及し、作戦に影響が出かねないこと

・既に共生派が由比港から出航しようとして拘束される事例が発生。

 放っておけば警戒範囲外から出航され、今後被害が出かねないこと

・食い溜めが終わる前でないと、失敗の可能性が跳ね上がること

・撮影が目的のヘリやドローンは暗い夜間を避けるため、ノイズが少ないこと

・日中では共生派の妨害が予想されること


議長:「各国政府からも問い合わせという名目で圧力をかけて来ている。

だが、禍津鰐の行動ログ、海底地形の変動、潜水艇の観測データを国際機関へ共有し、日本主導による共同研究の枠組みを発表したことで、過度な干渉は抑えられるはずだ。

軍事利用の可能性がないことも明言してある。

情報の透明性を確保すれば、国際的な圧力は大きくはならない。


そして、17:23のGPSログを最後に沈黙し、食い溜め終了が危惧されていたが、先ほど23:04に活動を再開している。

日の当たらない黄泉の国で進化した禍津鰐には、夜という概念はないようだ。

“クイーン”がいつ寝るか分からない以上、活動を再開した今動くのが確実だと考えている。


以上が急ぎで今夜作戦を実行する理由だ。

また、“クイーン”殺処分の許可は、総理から正式にいただいている」


言い終えた所で議長が手元のタブレットを覗き込む。


議長:「教授が協力を取り付けてくれた漁船の点検と整備が今終わったそうだ。

潜水艇への“桃”弐型の取り付けと薬品の調整も終わっている。

潜水艇に乗り込む白州君、響君、山崎君の3名は1:00にここを出発してもらうが、その前に、送った作戦概要に指摘が入った為、変更点のすり合わせをしておく」


碧がモニターを作戦概要とMAPに分割して表示させる。


議長:「まず前提を説明する。

今までのログから、“クイーン”の狩場は回数を重ねる毎に南下して来ている。

現在は亀裂に戻って来ているが、もしもMAP上のこのラインを超えて南下した場合、直ちに出港してもらう事になる。

このラインは、想定されている禍津鰐の感知境界を大きく超え、すぐに引き返されても潜伏が間に合う境界線だ。

出港判断は“クイーン”が三保真崎から12キロ以上離れていることとする。

距離が離れていれば興津埠頭を出港し、防波堤の裏で待機。

クイーンとの距離が15キロ以上離れたら防波堤を出て潜伏する。

潜伏が完了後、由比港を漁船が出港し、“クイーン”と1キロ程度の距離を開けながらマグロやカツオの切り身を垂れ流し、三保真崎の防波堤へ誘導する。

その後の攻撃に関しては山崎君から送られて来た資料の通りだ。

以上が作戦の変更点だが、何かあるか?」


議長が教授に視線を送る。


教授:「大丈夫だ。

私がした指摘事項も盛り込まれている。

ベストの選択肢などというものは後になってみないと分からないが、現状で取りうる選択肢としては、ベターなものだろう」


議長:「そうか。潜水艇に乗り込む3人はどうだ?」


3人は互いに視線を合わせ、頷く。


山崎:「問題ありません」


議長:「では予定より早いが、下に待たせている車で向かってくれ。

先程、“クイーン”のGPS情報が亀裂を離れた。

もしもこのラインを越えたら、時間にかかわらずすぐに出港だ」


男性秘書が車への案内のために動き出そうとするのを、議長が手で静した。

碧の方に視線を送り、口を開く。


議長:「3人を車まで送って来てくれ」


碧:「承知しました」


扉の前でお辞儀し、4人は退出した。




庁舎のロータリーに停まっている車に白州と響が乗り込み、山崎が「行ってきます」と行って乗り込み、ドアを閉めようとすると、碧がドアに手をかける。


碧:「…山崎くん。必ず帰って来て下さい…」


山崎:「大丈夫です。

もう誰も死なせません。

そのために碧さんや皆さんの教えを受けて来ましたし、そのために僕が乗り込みます。

支給されたAI PCなら、電波に頼らずに情報の統合が可能です。

不測の事態でも、僕が対応します」


決意の籠もった山崎の目を見た碧が、一度ドアから手を離し、ノブに持ち直してドアを閉め、車が発車した。

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