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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第2章 深層の顕現

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第18話 継承

教授は大学へ向かい、稲垣は蘭にメッセージを送って自販機のコーナーへ時間を潰しに行った。

山崎が議事録を提出用に整えていると、席で何かを迷っている様子だった響が、意を決したように立ち上がった。


響:「山崎くん。本当にありがとう。

いつ作戦実行になってもいいようにイメージを作っておくので、よろしくお願いします!」


響が勢いよく頭を下げる。


山崎:「知多さんと一番仲が良かったのは響くんかもしれませんが、僕も知多さんと命をかけて戦った仲間です。

それに、状況を知ったもう1人の仲間からも、メッセージが届いています」


山崎がPCの画面を響に見せる。

するとそこには、白州から宛先が山崎と響に設定されたメッセージが表示されていて、響も自分のスマホを開いてメッセージを読んだ。


山崎:「知多さんから学んで、まだ未熟ながら潜水艇の操縦は出来るから、もしも潜水艇の操縦士が必要なら、白州さんで良ければ呼んで欲しいそうです。

今回は前ほど繊細な作業はないと思いますし、初めて禍津鰐を見るベテランよりも、間近で見た黒影の恐怖を知っている白州さんにお願いしたい。

感情を抜きにしても、そう考えています」


響の目が、再び涙で滲んで来る。


響:「…自分も、白州さんにお願いしたいです。

一度自分も知多さんと一緒に、練習に来た白州さんの操縦する潜水艇に乗りました。

謙遜してますが、白州さんの飲み込みは本当に早いんです。

空間把握能力を鍛える方法を聞かれたので、おすすめのゲームを紹介したら、すぐにゲーミングPCまで買ってやり込んだり。

白州さんの操縦なら信頼出来ます。

俺が保証します」


山崎:「今響くんが言ってくれたことも含めて、議事録に推薦状を加えて提出しておきます」


響:「お願いします。

自分は、知多さんの家へ行き、亡くなったことを自分の口から報告に行って来ます。

ここに来る途中で議長さんに連絡したら、議長さんからも知多さんの両親に連絡してくれたそうですが、議長さんが知多さんの家に正式に行く前に、自分の言葉で説明に行きたいんです」


山崎:「…よろしくお願いします。

政府の方の言葉よりも、交流のある響くんの言葉で知多さんの最期の仕事を、ご両親も聞きたいんじゃないかと、僕も思います」


響:「山崎くんも、作戦のこと、よろしくお願いします」


お辞儀をして響が会議室を退出し、山崎も作戦の提案として議事録をまとめ、提出して会議室をあとにした。


政府会議のあった大きな会議室からは物音は消えていて、自販機コーナーにも稲垣の姿は既になかった。




渡されていたタクシーチケットで帰宅し、テレビとネットを見ると、どこも禍津鰐の話ばかりだった。


予想されていたように、禍津鰐と共生すべきだという意見も多く出ていて、『メガロドンを殺すな』というプラカードを持った人が、議事堂含め、いくつかの政府の施設の前に現れているというニュースもあった。

そういった人達は、“クイーン”の帰還路を断った知多のことを貶し、別の人達は、知多を英雄視してプロパガンダとして利用する動きも既に出ていた。


そして予想されていたように、動画配信サービスは駿河湾にドローンを飛ばす映像やLIVE配信で溢れ、テレビでもヘリによる空撮映像が多く流れていた。

聞くところによると、総理が会見を行った時に最低高度も厳しく言及していたそうで、テレビから流れるヘリの映像は高い所からの映像だったが、動画配信サービスで流れるドローンの空撮映像は、“クイーン”を見つけると低い位置まで寄っていく映像が大多数だった。


そしてその映像が禍津鰐との共生派に、こんなに水面近くまで行っても攻撃して来ない禍津鰐は、凶暴な捕食者ではない。という理論を唱えさせていた。

犠牲者の存在を無視したその暴論に、禍津鰐の脅威を知る山崎は表情を歪めた。

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