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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第2章 深層の顕現

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第14話 解析会議② ──再演

稲垣:「カウントダウン……なんでそう思うんだ?

そして、その猶予はどれぐらいを見積もってる?

うちのに鍛えられたんだ。そこまで話せ」


山崎:「まず、教授が示唆していた妊娠を前提に観察していました。

体型は明らかに妊娠後期のそれでしたし、体幹の左右への振れも、黒影と比較すると“腹を意識した泳ぎ”だと思いました。

それに、あの極端な亀裂付近の防衛行動や攻撃性の高さも、出産場所を守る個体の特徴です。

守りを固めている亀裂から離れて脅威の排除に動いたこと。

そして黒影を上回るあの機動力を考えれば、今日明日に産むことはないでしょう。

ですが──1ヶ月の猶予があるとも思えません。

下手したら、1週間を切っているのではないでしょうか」


稲垣:「そうだな。俺の見立てともズレていない。ここ数日が山場だろう。

そして、出産場所は亀裂からそう離れていない場所にしたんだとすれば、お前の言う通り筋が通る」


教授:「じゃあ次に、不確定の情報をなくすという話の前に、割り込ませた理由を聞いてもいいかな?」


山崎:「それは、時間とともに“クイーン”の優先事項が変わっていくと考えたからです。

今は出産場所へ近寄る可能性のある脅威の排除を優先していますが、出産間近になれば出産場所から離れなくなる。

つまり──今までのように、こちらのホームへ誘き寄せることが出来なくなる可能性があります。

さらに、食い溜めが終われば捕食行動がほぼ消えます。

そうなると、響くんがサメの動画を参考にして作った“動きのイメージ”と、実際の禍津鰐の行動にズレが出る可能性があります」


教授:「その情報だと、響くんの欲している“不確定要素をなくすための情報”とは真逆のようだが……打開策はあるかな?」


山崎:「一番確実なのは、エサを与えることで“食い溜めの状況”と“出産場所の目星”をつけることです。

場所と時間の目星がつけば、“クイーン”の一番無防備な瞬間を狙える。

……ただし、タイミングを誤れば出産を終え、駿河湾内に禍津鰐の増殖を許すことになります。


なので、“クイーン”が食い溜めを終える前に確実に殺すべきだと思います。

ただ、どうやって仕留めるかを話し合う前に、響くんに確認したいことがあります。

響くんがAI誘導より命中率が高くなるのは、どんな状況ですか?」


響:「自分の命中率がAIより高くなるのは、主に“向かって来る禍津鰐を正面から迎え撃つ場合”です。

禍津鰐より弐型の方が速いので、追う分にはAIでも命中率は高いのですが、お互いに最高速で正面から向かいあった場合、先読みの精度で自分の方が命中率が高くなります。

そして山崎くんが言うように、シミュレーターは普通のサメのデータを禍津鰐サイズに拡大したものなので、“妊娠した禍津鰐”という特殊なケースは想定できていません」


山崎:「響くんは……潜水艇に乗り込んで直接“クイーン”を狙うつもりですか?」


響:「………そのつもりです。

…もちろん、敵討ちに燃えてるとか、そんな個人的な理由じゃありません。

潜水艇は、自分一人では無理なので、誰かを危険に巻き込むことは分かっています。

でも、山崎くんの話を聞いて確信しました。

“クイーン”は一刻も早く仕留める必要があります。

そして、確実に仕留めるなら、乗り込むしかないと思っています。

…もう、何も出来ずに見ているなんて……出来ないです」


冷静を装っていた響の感情の吐露に、3人は言葉に詰まる。

その中で、一度息を深く吐き出し、決意を固めた山崎が切り出す。


山崎:「…その潜水艇、僕も乗ります」


響:「…っ!

死ぬかもしれないんですよ!?

確実性を考えたら、電磁ノイズでのスタンも狙えないんですよ!?

それに、どんなに隠れても発射したら居場所がバレて、“クイーン”が動けなくなる前に攻撃される可能性だってあるんですよ!?」


山崎は席を立ち、響の元に歩み寄りながら答える。


山崎:「リスク、全部分かってるじゃないですか。

確実性を求めるなら、リアルタイムで現場で演算できる人間が必要ですよね?

響くんが覚悟を決めてるなら、僕もついて行きます」


山崎が親指を立てた右手を突き出すと、ハッとしたような顔をした響が、目に浮かんだ涙を腕で拭い、立ち上がって拳を突き出す。


響:「…あの時のオマージュっスね」


山崎や微笑みながら、拳を握って響の拳に当てた。

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