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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第2章 深層の顕現

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第13話 解析会議① ──意思

解散が宣言され、会議が終了する。


蘭は席を立ち上がり、教授と山崎に微笑みかけながら会釈をすると、片付けを始めている碧の元へ近寄る。

それに気付いた碧は、PCを操作する手を止めて慌てて立ち上がる。


碧:「初めての対面がこんな形になってしまいましたが、お会い出来て感激しています」


蘭:「私こそ、一度会ってみたいと思っていたの。お会い出来て、こちらこそ嬉しいわ」


蘭は優しく微笑むと、両手で碧の右手を包み込む。


包まれた手を見た時、碧は抑えていた感情が噴き出し、蘭の鎖骨の辺りに顔を(うず)めて泣き出す。

蘭は一瞬驚いた顔を見せるが、それを優しく受け止め、頭と背中を両手で包み込んだ。

そして蘭は立ち位置を少し変えた。

おそらく、碧の立場を気にして周りの視線を切ったのだろう。



その時、山崎のスマホに響からメールが届く。


『今、庁舎に向かっています。教授と山崎くんに聞きたいことがあるので、待っていてもらえませんか?』


教授に見せると何かを納得したかのように頷く。


教授:「じゃあ、去年君と話した自販機のある休憩スペース。あそこに来るように伝えてくれ」




庁舎の自販機と長椅子が置いてある休憩スペースで缶コーヒーを飲みながら待つ2人の元に、響が到着する。

目は赤く、顔やつなぎの鎖骨付近に涙が結晶化した跡があった。


響:「お待たせして申し訳ありません」


響が勢い良くお辞儀をする。

そしてその姿勢のまま言葉を続ける。


響:「知多さんの仇は絶対俺が討ちたいんです!力を貸して下さい!」


教授は頭を下げ続ける響の目線の先に、缶コーヒーを差し出す。


教授:「顔を上げてくれ。

まずはコーヒーでも飲んでから、確認したい内容を整理しよう。小さい会議室を借りてある」





会議室へ移動すると、会議室には稲垣が既に座っていて、入ると手の平をひらひらと振って来た。


教授:「響くんが今知りたいことは、おそらく稲垣くんの方が詳しい。

勝手だが、声を掛けさせてもらった」


響がまた深くお辞儀をする。


響:「よろしくお願いします!」


稲垣は否定するように手をひらひらさせて答える。


稲垣:「気にするな。どうせ俺も嫁がお悩み相談中だから動けん。

それにこれはお前だけの問題じゃない。俺達全員の問題だ」



山崎と響は着席し、教授がホワイトボードの前に立ち、山崎はAI書き起こしの議事録作成を始める。


教授:「では、響くんに必要な情報を整理しよう。

まず、響くんは何が必要なのか、説明は出来るかい?」


響:「“桃”弐型【刃】は薬剤を注入して禍津鰐を殺傷します。どこに撃ち込んだらいいのかが知りたいです。

それと、“クイーン”に確実に当てるために、出来るだけ不確定の情報を潰したいです」


教授:「そうか。ではまず、弐型の仕様についておさらいしておこう。

追尾の仕組みについては先ほど説明があったが、その他の詳細についての資料を頼む」


山崎が会議室内のモニターに弐型の仕様を表示する。


教授:「まず、この禍津鰐対策弾は、小型の潜水艇への取り付けを前提に、通常の魚雷よりもダウンサイジングされている。

これは大型潜水艦では禍津鰐相手ではただの的になってしまう可能性があるからだ。その為、小回りの利く潜水艇への取り付けを前提としている。

次にそのスペックだが、全長1.8メートル。直径が250ミリで、最大速度35ノットで、最大で1000メートルほど追尾出来る。

響くんを待つ間に山崎くんに解析して貰ったんだが、先ほどの“クイーン”の平均速度で11ノット。無人艇を狩る瞬間には15ノット出している。

あの巨体にしては恐ろしい速度だが、対策弾ならば全力の“クイーン”も捕捉出来る。


次に殺傷能力の方だが、この魚雷の火薬はスパイクを出す為にのみ少量を搭載している。

着弾した瞬間に返しのついたスパイクが飛び出し、薬剤を注入する。

そして薬剤が効く頃、時間差でエアバッグが開いて禍津鰐を浮上させ、回収する。

“桃”弐型【刃】の説明としてはこんなところだ。

まずは響くんの一つ目の質問、どこに打ち込むべきかだが、稲垣くんの方から頼む」


稲垣:「ここでなきゃ効かないなんてとこはないが、理想を言わせて貰うなら、胸鰭(むなびれ)の付け根一択だな。

血流が多く、筋肉が厚い。ここに薬剤を撃ち込めば、全身に回る速度が最も速い。

しかも軟骨が薄いから、スパイクが確実に刺さる。

エアバッグで浮かせるにしても、厚い筋肉に刺されば、禍津鰐の体重も支えてくれるだろう」


教授:「付け加えるなら、着弾させる角度には気をつけて欲しい。

掠るような当たり方では、スパイクが刺さらない可能性もある。

そして、出来る事なら次に繋げるためにも、”クイーン“の死体は回収したい。

それには、浅い角度では皮膚を突き破ってしまう可能性もある」


山崎:「1つ目はこれで良さそうですが、次の疑問に答える前に1つ確認したいんですが、カウントダウンはもう、始まっていますよね?」

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