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禍津鰐《メガロドン》──深層の目覚め  作者: 麦野ライト
第2章 深層の顕現

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第12話 遺志

スピーカーから破裂音が鳴り、会議室の全員が耳を覆う。




沈黙する会議室をよそに無人艇2艇は別々の方向に逃げるが、無人艇Aが捕まり、無人艇Bも由比港を目前に沈められた。


会議室に、その場の沈黙を破る言葉を持つものはいなかった。



そんな時、俯いていた山崎が急に顔を起こし、周囲の視線が集まる。


山崎:「…さっき無人艇が襲われる瞬間……MAPの表示がおかしくなかったですか?」


碧が目元を右手の袖で拭い、顔を上げてPCの操作を始める。

手が震えているのか、碧にしては珍しく、操作ミスが目立つ。


MAPに表示されるポインタの表示を巻き戻すと、無人艇に近付く“クイーン”を示す赤い点が点滅していた。


碧:「……桃の参型【(はらい)】に搭載される予定のGPSです。

参型はまだ調整が上手くいかずに未完成ですが、情報は統合済みでした。

IDは──知多さんが預かっている試作機の一つと一致します」


響:『……知多さんの意思は……生きてるんスね…』


議長:「参型は未完成だが、保護機構とスパイク、そしてGPS自体は動作出来る。

潜水艇内に持ち込んでいたのだろう。

…最後を悟っていた知多君が、潜水艇が破壊される衝撃で起動するよう、電源を入れていたのだろう」


碧:「無人艇のカメラ、再生します」


作業を進めていた碧が、潜水艇圧壊直後を映す無人艇カメラを再生し、ポーズをかける。


稲垣:「…知多のやつ、やり切ってたんだな」


カメラに映る亀裂は、アップデートされた桃の壱型【封】によって封印が完了していた。


議長:「我々に哀しみに暮れている時間はない。

知多君はあの状況で、完璧な仕事をこなしてくれた。

ならば我々は、知多君に最後に託された、“クイーン”の対処を完遂しなければならない」


響:『…弐型【刃】は自動追尾だけじゃなく、知多さんが俺の為にドローンとしての操縦機能をつけてくれました…。…知多さんの仇は、俺が取ります』


稲垣:「知多はたった一人で後続を切っただけじゃなく、”クイーン“にも首輪を着けてくれました。

俺らが雁首揃えて黙り込んでたら、知多の功績がなかったことになります。

知多を英雄にするのも蛮勇にするのも、俺達次第だ。

…議長、まずは知多のつけてくれた首輪の詳細を教えてください」


議長:「知多君が遺してくれた桃の参型について説明する」


議長が視線を碧に向けると、碧が頷き、大型モニターに桃の参型【祓】に関する資料が表示され、一部の文字や図が灰色に塗り潰される。


議長:「まず、今回のGPS信号から、知多君が現場に持って行ったのは初期型の試作機だと分かる。

これは動作の一段階目を確認するためのもので、衝撃を感知し、返しのついたスパイクを展開する機能と、GPSしか搭載していない。

構造が最もシンプルで、確実なものだ。

確実性を重視する技術者である、知多君らしい選択だと思う。


外壁に強い衝撃が加わると、コンマ数秒の時間差でスパイクが展開し、返しのついたGPSが禍津鰐の口の中にセットされる。

このGPS信号は浅い水深に浮上した時にしか拾えないが、一年以上信号を出し続けることが出来る」


教授:「完成した参型本来の機能を発揮するため、ということだね」


議長:「そういうことだ。

だが、参型はまだ完成していない。

そして爆発を伴う通常兵器の使用も、黄泉の国の外壁を崩しかねんことから、駿河湾内での行使は出来ない。

そこで開発されたのが桃の弐型【(じん)】だ。

一部恒温性を持つと推測されていた禍津鰐対策弾として、サーモカメラで捉えた画像でAIによって追尾する機能を持つ。

一部恒温性に関しては、知多君が今回潜水艇に搭載していたサーモカメラにより、“クイーン”が海水よりも高い体温を持つことが実証され、確定している。


それに加え、先ほど響君が話していたが、ドローンとしての操作機能も知多君からの要望で実装されている。

以前行われたシミュレーションでは、AIによる追尾よりも響君の勘に頼る操作の方が、30%近い命中率の差を叩き出している」


響:『…禍津鰐をこれだけ見た今なら、絶対に外しません』


議長:「とのことだ。

…だがちょうど今、総理によるフェリー事故の件と昨年の黒影についての会見が行われている。

おそらくだが、面倒なことになる。今後の作戦にも影響が出るだろう。

山崎君の研究結果は一部公開されるだろうが、山崎君を守るため、しばらくは研究者の名前は伏せることになる。

情報は共有するが、今日は一旦解散としよう」

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