第11話 覚悟
音響通信のステータスランプの警告色が消え、潜水艇のカメラ映像も復活する。
議長:「響君!音響通信回復したぞ!
知多君、無事か!」
知多:『…無事です。…一時的に機器に乱れは生じましたが…ルートは外れていません。
…作戦に変更はありますか?』
議長:「通信途絶前に聞いたと思うが、“クイーン”は潜水艇を捕捉している。だが恐らく、亀裂に最も近づくものを追っている可能性が高い。
そこで、囮ドローンを今から先行させる。響君のイメージでは亀裂まで逃げ切れるそうだ。
引き続きエンジンをかけず、ドリフト潜航で亀裂へ向かってくれ」
知多:『…承知し──』
響:『“IZANAMI”、反応しません!カメラ映像も来ません!音響通信を切り替えて下さい!』
職員:『切り替えました!再度お願いします!』
響:『……ダメです……動きません…』
会議室に深い沈黙が落ちる。
回復したその他の機器と違い、囮ドローンに深刻なダメージが入ったことを、誰もが理解し、この先の出来事を想像してしまっていた。
議長:「知多君!浮上してくれ!無人艇のノイズ発生装置よりも亀裂から離れてくれ!」
議長が初めて取り乱した姿を見せる。
知多:『…モーターを起動し、潜航を続けます』
稲垣:「知多!議長の言う通りだ!
発生装置を襲わせて側面から桃を撃ち込め!」
知多:『…発生装置は避けられる可能性があります。…意富加牟豆美命弐型【刃】も…“IZANAMI”のように起動しない可能性もあります。…シンプルな機構の壱型【封】の信頼性に…賭けます』
海保:「“クイーン”、移動を再開します!」
議長:「知多君…それでは君は…」
知多:『…後続の危険のある亀裂は…僕が封印します。“クイーン”のことは…お願いします』
響:『…知多さん』
知多:『…響くんは、“IZANAMI”が回復次第発進を…お願いします』
響:『……分かりました。“IZANAMI”に集中します。知多さんも封印を……お願いします』
!!!
会議室に緊張が走る。
潜水艇が亀裂の見える角度に入った時、巨大なサメの影が潜水艇のカメラに映る。
碧:「…そんな」
亀裂近く、海溝の壁面に禍津鰐の姿があった。
知多:『…大丈夫です。死んでいます』
ライトの直線上に入ると、頭と腹側が上を向き、海溝に引っかかっていることが分かる。
そして喉元には、大きく抉られた跡があった。
“クイーン”の番なのかは分からないが、気が立っている“クイーン”にやられたのだろう。
海保:「“クイーン”、潜水艇に20秒で追いつきます!」
知多:『…意富加牟豆美命壱型【封】、発──』




