第10話 邂逅
モニター上の潜水艇の青い点と無人艇Bのオレンジの点が由比港から出港する。
モニターには、潜水艇のカメラ映像も表示される。
最大出力のノイズからおよそ4分後、赤い点が移動を始めた。
三保真崎のブイに取り付けられたソナーとカメラは先程まで“クイーン”が巻き上げていた砂や汚泥に遮られて反応を示さなかったが、比較的クリアになった後には何も映っていなかった。
三保真崎に関する4つのウィンドウが閉じられ、各ウィンドウのサイズが調整される。
海自:「このままでは潜水艇がドリフト潜航中に接敵します!
作戦中止か、再麻痺を狙うか、囮ドローンを早めに投入しますか!」
議長:「事前に作成された対策マニュアルに則れば、作戦続行の範疇だ。
強めのノイズで潜水艇を隠しながら誘導し、もう一度麻痺させて体制を整える」
知多:『…承知しました。…予定通り…ダイブ地点からのドリフト潜航を…目指します』
知多:『…ダイブ地点へ…到着しました。…これよりエンジンを切り…海流に乗ったドリフト潜航に入ります』
議長:「承知した。“クイーン”は接近しているが、およそ7分後に再度最大ノイズを当てる。その内に潜伏場所へ移動してくれ」
海保:「知多さんが現在水深90メートル付近、電磁ノイズ発生装置は30メートルですが、“クイーン”は80メートル…。明らかに潜水艇を狙っています!邂逅まで1分30秒!発生装置を限界の100メートルまで下ろして下さい!」
議長:「ノイズ発生装置、最大深度まで降下!」
職員:『了解しました!ノイズ発生装置、降下!』
海保:「“クイーン”、ノイズ発生装置を避け、130メートルまで潜りました!」
議長:「やむを得ん!直下に来た所で最大ノイズを発生させてくれ!」
画面にノイズが走る。
議長:「知多君!無事か!」
…………
ソナーと無人艇のカメラが復活する。
音響通信のステータスランプは警告色のまま、潜水艇のカメラ映像も戻らない。
だが、無人艇のカメラには潜航を続ける潜水艇と、暴れる“クイーン”の姿が映っていた。
山崎:「電磁ノイズには、機器に干渉する力もあるんですか?」
議長:「…ある。EMPと言って、電磁パルスを発生させている。
海中では地上よりも短い距離で減衰するが、緊急時とはいえ、潜水艇との距離が近すぎたのかもしれん」
山崎:「それと、“クイーン”は明らかに発生装置を避けていました…。
僕達は禍津鰐の学習能力を過小評価していたのかもしれません。
…幸い、“クイーン”は亀裂へ近付くものを優先するようです。囮ドローンを先行させれば、標的を変えられるかもしれません」
議長:「そうだな。響君、聞いていたか?
あとは君が頼りだ。
潜水艇が気づかれている以上、潜伏は意味がない。
音響通信が回復次第、潜水艇より先行し、“クイーン”を亀裂へ押し込んでくれ」
響:『承知しました。僕のイメージでは、“クイーン”より先に回復出来れば、亀裂まで間に合います。
これからゴーグルを装着しますので、通信のレベルが回復次第教えて下さい』
議長:「承知した。今回も全て君に背負わせてしまうが、よろしく頼む」




