第9話 出航
14:00に、無人艇Aとされる電磁ノイズ発生装置を積んだ作業艇が清水港から出航した。
会議室では議長が、スライドを見せながら作戦の詳細について説明を始める。
出航を映していたウィンドウは小さくして端により、今はMAP上を無人艇Aを示す黄色い点が移動している。
無人艇Aは、船の遠隔操作・ソナー・水深100メートルまでのケーブルを持つ電磁ノイズ発生装置・カメラ・ライト・囮ドローン操作用の音響通信の中継機を積み、主に”クイーン“の誘導と麻痺を担当する。
無人艇Bは知多の潜水艇と共に、クイーンの麻痺に成功した所で由比港を出航する。
装備は、電磁ノイズ発生装置を除けば、無人艇と同様の装備を備え、主に響の囮ドローン、”IZANAMI”の支援を担当する。
無人艇Aは三保真崎の防波堤付近で電磁ノイズと音と振動を発生させ、“クイーン”を誘き寄せてから最大ノイズを当て麻痺をさせ、潜水艇が待機位置に潜伏してから亀裂付近に“クイーン”が到着するよう、弱い電磁ノイズを出しながら誘導する役目を担う。
そして、万が一“クイーン”の回復の時間が想定より短い場合は、出来るだけ亀裂から引き離した所に誘導して電磁ノイズを再度当て、知多の逃げる時間を稼ぐことになる。
無人艇Bは推進力よりも静粛性に振り、“クイーン”に気づかれないよう、亀裂直上からカメラや音響通信の中継機を下に降ろすことを目的とし、響の視界になると同時に、ドローンを操縦する為の通信音波を、地上の響から海底の囮ドローンへ届ける事を主な目的としている。
無人艇B不調の場合は、無人艇Aにも同様の設備が積まれている為、そちらにスイッチする。
また、音響通信の中継機はドローンだけでなく、潜水艇カメラの映像も、低レートで陸上へ送る役目も担っている。
潜水艇は前回の作戦同様、電磁ノイズによる機能麻痺を確認し次第出航し、海流とバラストのみで亀裂まで潜航出来るポイントまで移動し、エンジンを切ってドリフト潜航による無音の潜水で亀裂付近の待機位置へ移動。
“クイーン”が来たら無人艇の電磁ノイズを切って、潜水艇から囮ドローンが発進。
“クイーン”を引き付けて亀裂に入り、潜水艇から桃の壱型【封】を発射して封印を完了する。
議長が会議室で説明を終える頃、稲垣と蘭が入室。
その数分後MAP上で無人艇Aの点が防波堤へ到着し、“クイーン”の誘引を開始する。
画面は防波堤付近に設置されたブイと無人艇Aの、合わせて3つずつのソナーと水中カメラの映像。
そして海面より上のカメラと、衛星からの周囲の空撮映像が表示された。
衛星の拡大映像には、海面の一部が濁り、帯状に乱れている様子が映っていた。
解析AIがその乱れを“クイーンの推定航跡”として抽出し、MAP上の赤い点がゆっくりと防波堤へ向かって移動している。
教授:「衛星から“クイーン”の位置が見えるんだな」
碧:「直接見ることはほぼ不可能なので、海面の乱れから“クイーン”と思われる巨大なものを、解析AIが推定してポインタを付けています。
本日のように波にうねりがないこと、雲がないことと、禍津鰐が比較的浅い水深を継続して泳いでいるという条件が重なった時にのみ補足可能です。
実は先ほどまで補足出来ていませんでした。深い場所にいたか、海面の乱れから推定出来るほどの動きがなかったのだと思います」
”クイーン“の赤い点が無人艇Aの黄色い点に接近した時、無人艇より北側にあるソナーに巨大な影が映り、すぐに無人艇のソナーにも影が入り込む。
直後、衛星からの映像を除く全てのモニターに砂嵐のようなノイズが走り、音響通信のステータスランプが警告色に変わった。
ソナーの受信ゲインは振り切れ、波形が真っ白に潰れる。水中マイクはクリップし、“バリッ”と割れた音だけが残った。
さらに“クイーン”が暴れて巻き上げた濁りが水中カメラを覆い、視界は完全に失われた。
議長:「最大ノイズを当てることに成功した。知多君、出航してくれ」
知多:『承知しました。”IZANAGI”出航します』




