第4話 政府会議①──相違
13:00になり、会議が始められた。
主な内容は14:00までに準備が終わる、ヨモツヒラサカ作戦に対する議決。
会議室の配置は昨年の会議と同様にコの字型に長机が配置されている。
中央には内閣府危機管理監の竹鶴議長が座り、その後ろに大型モニターが設置されている。
またモニター横には、AIによる議事録作成とデータのまとめをする碧が座っている。
その他の配置は入り口から向かって左側に政府関係者。右側に有識者席が配置され、奥から、
■ 政府側(左列)
・海上保安庁 幹部(海難・海洋監視)
・防衛省 海上自衛隊担当官(対処能力の検討)
・水産庁(海洋生物・漁船運行の中止)
・気象庁(地震・海底地形変動)
■ 有識者側(右列)
・鳥井教授──海洋古生物学(海洋学部教授・海洋古生物の権威)
・山崎──海獣類(海洋学部・禍津鰐の権威)
・白井──地質学者(理学部助教授・海底亀裂封印の状態)
の順で着席している。
その他にオンライン環境で知多と響が待機位置から。新幹線が一部区間で運転を見合わせ、政府の車で清水へ向かっている稲垣と蘭も、車の中からオンラインで参加していた。
今回は事態の発覚から作戦開始までの時間が少ないこと。作戦自体は禍津鰐が1頭であるため、対策マニュアル通りの作戦が実行されることから参加者、会議時間自体が絞られていた。
議長:「では、禍津鰐対処ならびに黄泉の国封印に関する会議を開始する。
昨年の参加者が多いため参加者の紹介や細かい説明は省くが、今回も前回同様に会議の内容はリアルタイムで首相官邸・危機管理センターへ共有される。
なお、フェリーの事故に関しては詳細を伏せ、12時のニュースで既に流れている。15時には被害の詳細も含め、首相による緊急の会見が行われる事になっている。
資料にも載せてあるが、現在分かっている情報を共有する」
・フェリー事故の時間、場所
・乗員乗客合わせて42名。生存者1名。行方不明者22名。溺死、及び四肢欠損による失血死19名
・今回の個体は推定31メートル。推定体重350〜400トンの個体が1個体
・1日の推定捕食量2トン(人に換算して30人前後)。推定最大捕食可能量20トン(人換算300人)
・フェリーからの映像では、18人が既に捕食されている
・8人を乗せた釣り船が音信不通
議長:「行方不明者となっているが、映像により18人は捕食されていることが分かっている。また、船長を含む残り4人に関しては、フェリーと共に沈んだと推定されている。
今回の個体は、自分よりも大きなフェリーを襲っている事から、前回の推定から言うならば最上位級個体の1頭であると考えられる。
山崎君の推測する、黒影を成熟したオスだと仮定した際のメスの最大個体の全長が30メートル超。
それとも合致する為、今回の個体を“クイーン”と呼称することとする。
では、“クイーン”に対してヨモツヒラサカ作戦を実施する上での懸念点を話し合う前に、前回の作戦との違いを整理しよう」
モニターに箇条書きで表示される。
①桃の壱型【封】がバージョンアップ。内部にハニカム構造を持ち、海水に反応して1時間程度で硬化する樹脂により、コンクリートが必要なくなったこと
②ノイズ発生装置にカメラと音響通信の設備が備わり、囮ドローンを陸上から操作できるようになったこと
また、ノイズ発生装置が破壊されるリスクに備え、カメラと音響通信を備えた無人艇がもう一隻投入されること
③潜水艇との通信が、周波数の分割により、双方向同時に通話が可能になること
また、潜水艇からの映像が共有されること
④無人艇が二艇とも不調でも、低速で情報の伝達は出来ること
⑤前回の黒影と異なり、”クイーン“のロレンチーニ器官付近には傷が見当たらないこと
⑥前回よりも駿河湾内の酸素濃度の平均値が上がっていること
⑦自分よりも大きなフェリーを沈没させていること
⑧恐らくメスであること
議長:「①②のバージョンアップにより、潜水艇は1名の乗船のみで運航が可能となった。ただし潜水艇に関しては今回、残念ながらドローンでの置き換えが済んでいない。
これは潜水艇による調査を優先した結果によるもので、政府側の失策だ。大変申し訳ない」
議長がオンラインの画面に映る知多に向かって頭を下げる。
知多は必死で両手を顔の前でブンブン振り、首も必死で横に振る。
議長:「そして、⑤と⑥のように、黒影と比べて制限のない、万全な個体であると考えられる。
また山崎君からの情報によると、ホホジロザメのメスはオスより行動範囲も広く、体の大きさに比例して感知境界も広がる可能性が高いとのことだ。
以上を踏まえてヨモツヒラサカ作戦実施について意見を貰いたい」




