EP-6 仮面
碧の講義が突然終了し、しばらく呆然とした後、山崎は部屋を出た。
リビングに行くと蘭が1人で紅茶を飲んでいた。
稲垣は、部屋で資料をまとめているらしい。
碧がしきりに名前を出し、認めていた蘭にならと思い、秘密にしてもらう約束で今の出来事を相談した。
"今後、メールで質問をしてもいいのか"について。
話を聞いた蘭は、わずかに微笑みを浮かべた。
蘭:「やっぱりそうだったのね。正体、二重にビックリしたでしょ?
出来る女性の仮面を被っていることも、確信があった訳ではないからお父様のことも含めて内緒にしてみたけれど、驚いてくれたようで良かったわ。
それと、あの子のことなら大丈夫よ。明日辺り、何事もなかったかのようにメールしてくるんじゃないかしら。
若いけれど、プロよ。そんなことで責任を放り出すような子には見えなかったわ。
もしも連絡が来ないようなら、明日の夜にでも、素知らぬ顔で何か質問のメールをしてみなさい。
それでもダメなら私から連絡するわ。
こういうことは時間を置かない方がいい。
覚えておきなさい。
それと、先ほどの言葉には語弊があったのだけれど、碧さんが“出来る女性”だというのは疑いようもない事実よ。
ただ、元の性格の上に、ああした仮面を被っているというだけ。そこは取り違えないようにしてね」
山崎:「ありがとうございます。明日、もし連絡が来なかった場合の質問を考えておきます。
それと、碧さんが出来る女性だというのは、僕も良く知っています」
山崎の返答に、蘭が優しく微笑む。
蘭:「そう。
慣れては来ても明日も朝から忙しいでしょうし、今日習った分をまとめたら早めに寝なさい」
山崎:「本当にありがとうございました。心が軽くなった気がします。
おやすみなさい」
蘭:「おやすみなさい」
今日習った分をまとめてから、すっきりした気分で横になった。
翌日の昼休憩。
貸与されているPCを開くと、碧から課題のデータを添付して、『昨日は、電波障害でご迷惑をおかけいたしました』から始まる、事務的に戻った口調のメールが届いていた。
そんな体で何事も無かったようにやり過ごすのか……とは思ったが、『…忘れて……。見なかったことにして!』という言葉を思い出し、「了解しました」と心の中で返答しつつ、課題に対するお礼のメールを送信した。
そして蘭の言った、「明日辺り、何事もなかったかのようにメールしてくるんじゃないかしら」という言葉を思い出して背筋に冷たいものを感じた。
そして同時に稲垣の言っていた、「どうせこいつには隠し事はできん」の本当の意味を理解した。
その夜の報告時、碧から「電波障害でご迷惑をかけた」という謝罪のメールが来たことを報告すると蘭は、「やっぱりね」という顔をした後、想像したのか、思い出し笑いのようにクスッと笑う。
稲垣がなんだ?という表情をするが、蘭はスンッと表情を戻した。
教える気がないことを悟ったようで、稲垣は両手を半ば迄挙げ、やれやれというジェスチャーをしていた。




