EP-3 水族館バイト
翌日、山崎は初の水族館バイトを終え、疲弊していた。
仕事は稲垣の助手。
稲垣の受け持つ業務は、研究者という名の何でも屋だった。
朝:水質チェック(山崎が数値をメモ)
午前:バックヤードで給餌ヘルプ(山崎が餌の量を量る)
昼:子供向け解説ショー(山崎がフリップや小道具係)
午後:行動観察(山崎がタイムスタンプ係)
夕方:研究データ・各飼育員から挙げられた個体毎のデータ整理(山崎がExcel入力)
その合間でポンプの不調を見たり、獣医の補助までこなしていた。
夏休み中の繁忙期とはいえ、普段助手を付けずにこなしていることが信じられない仕事量だった。
夕食後の報告で、山崎はまだ稚拙な説明のままだったが、子供達から稲垣が意外と人気だったことなど、感想を入れながら話した。
蘭は今日も無表情だったが、稲垣の仕事ぶりを聞く時、目の奥に嬉しそうな色が浮かんでいる気がした。
その晩のオンライン会議は山崎は欠席して早く就寝した。
会議の内容は山崎の参加した前日と同じ、“意富加牟豆美命”、通称“桃”のバリエーションを三種類に増やすことだった。
稲垣が今回の反省から「次に禍津鰐が出た時の備えを増やしたい」と提案したのが始まりだ。そこに知多と白井が「三種類にしたい」と発言し、対策装備三種を総じて“桃”と呼ぶことになった。
ただし、ヨモツヒラサカ作戦の時に稲垣が「長過ぎんだろ」と言っていたため“桃”になったが、“意富加牟豆美命”でもどちらでも良いと決定された。
“桃”の呼び分けは昨夜の会議で知多と山崎が推した、『壱型・弍型・参型』が正式採用された。前回の封印に使われた【高強度繊維の海底封鎖用エアバッグ】は“桃 壱型”となった。
知多は昼間、白井と共に政府依頼の黄泉の国調査を続けている。
知多は海側から、白井は陸側から音波で黄泉の国の大凡の範囲を測っている。
それと共に知多は、再び黄泉の国の壁面が崩れないよう、調査時に発見した岩盤が弱くなっている部分を政府へ共有し、富士の会社へ政府から依頼が出されている。
白州は、今回の件で潜水艇の重要性を感じ、自ら潜水艇の操舵やロボットアームの操作を学びたいことを上へ掛け合っているらしい。
“意富加牟豆美命“《おおかむづみのみこと》は、古事記で”伊邪那美命“《いざなみのみこと》が黄泉の軍勢(黄泉醜女達)に投げたとされている3つの桃の実に名付けた名です。
桃の実は邪を祓うと言われています。




