第2.5話 【閑話】移動①
あくまでも閑話なので、読まなくても物語の進行には影響ありません。
2話の後、登呂遺跡から会議室へ移動する際の話です。
山崎は鳥井教授がかけた電話を代わり、館長の元へ自転車を置いていく事を伝え、ほどなく到着した教授の呼んだタクシーに乗り込んだ。
運転手への説明で、行き先が旧清水庁舎である事を知る。
走り出すと、山崎が疑問を口にする。
「今日は自分の車じゃないんですね」
「出かけようと鍵を取りに行ったら、家内に車の鍵を取り上げられてしまってね」
教授は右手首へ視線を落とすと、苦笑いをしながら包帯の巻かれた手首をさする。
「まあいい。
メガロドンの進化に関しては着いてからするとして、太古の日本にメガロドンが居たのかという話をしようか。
結論は先ほど言ったが、存在した。というよりも、世界中の温暖な海域全般に分布していたんだ。
そして日本では、古くは江戸時代の書物に天狗の爪として登場する。
昔の日本人は、あの巨大な歯を天狗の爪だと考え、祀ったりもしていたんだ。
私はそれを面白いと思ってね。天狗伝承の残る地を調べて、日本地図にシールを貼って分布図を作った事があるんだ。
その時調べた結果だと、静岡県内にも浜松や伊豆に有名な伝承の地があるし、歌川広重の描いた【東海道五十三次 沼津 黄昏図】には天狗が描かれたりもしている。
天狗=メガロドンだとは言わないが、静岡県内でメガロドンの歯が見つかる可能性もなくはないと思っていたんだ」
「今なら分布図ぐらい、チャットAIに頼めば作ってくれると思いますよ。
教授のスマホを貸して貰えますか」
教授は器用に左手だけでカバンを開けると、タブレットを取り出し、ロックを解除して山崎に渡す。
「図を作るなら、大きいタブレットで頼むよ」
タブレットを受け取ると、山崎はアプリのダウンロードを始める。
「チャットAIは、頼めばやりたい事を察して上手い事なんでもやってくれる便利ツールという訳ではないです。
でも、ちゃんと意図を伝えて、設計図を書くように丁寧に指示をすれば、一度では出来なくても修正しながら自分の欲しい物を作らせられるぐらいには進化しているので、使ってみて下さい」
「一時期問題になっていた、論文をAIに書かせるような事、君はしていないだろうね」
教授が冗談ぽく聞く。
「複雑だったり長い文章だと粗が出ますし、さすがに教授を騙せる程の文章は書かせられませんよ。
短い文節をそれっぽく繋いで文章を作るのがチャットAIなので、長くなればズレが出ます。確率論で文章を繋ぐので、正しくない情報でもそれっぽく言って来ますし、長文を丸ごと任せる事は出来ませんよ」
「まあ、君は課題で出すレポート程度なら、助けを借りる必要はないか」
「まあ、誤字のチェックとか敬語の修正は任せてますけどね……あっ、ダウンロード出来ました」
山崎は簡単な設定を済ませ、教授に聞かせるように読み上げながら、プロンプトを入力する。
「昔日本で、メガロドンの歯が天狗の爪として祀られていたという事に興味があります。
天狗の伝承とメガロドンに因果関係があるのか、天狗伝承の地の分布図を作成して欲しいです。
シンプルな日本地図に、天狗の伝承でヒットした地に赤いドットを打って下さい。
説明や地名はいりません。
重なってもいいので、検索にヒットした全ての場所にドットを打って分布図を出して下さい」
送信ボタンを押して、山崎が一息つく。
すると道の先に、清水区の庁舎が見えて来た。
「もうすぐ到着だ」
「画像の生成には少し時間がかかるので、後のお楽しみですね。
これで希望に沿う物になっていなければ、修正して欲しい所を伝えてあげて下さい」
「それには、回数制限なんかはあるのかい?」
「とりあえず普通に使う分には、回数制限もなくて、お金もかからない物をダウンロードしました。
今の画像生成には賢い、Proというモードを使いましたけど、数回はそれも無料で使えますし、5時間毎に使用量が回復します」
話している内に目的地に到着し、目的も何も知らされていない山崎は、教授の後について庁舎の会議室へ入って行った。
第1話でAIが使えていませんが、2.5話は時間的には昼過ぎなので、ネットワークが改善されています。
ここでは教授のiPadに、Geminiをダウンロードしています。




