第55話 一撃必殺
「生きてるかー?クウコ~」
ミースはガレキを布団にして眠っているクウコの足を掴み、力いっぱいに引っ張り出す。
「イデッ!?おい、おい!自分で、自分で抜け出せるから…!」
体のあちこちがデコボコとしたガレキに引っかかり、たまらずクウコが声をあげた。
「気絶してると思ったが…案外余裕そうだな。てっきり声もあげれないほどの重症だと思ったのに」
「余裕なんてないさ。はぁ、全身が痛いや…。とっととこの体を治してもらわないとね」
クウコとビリー、ミースは全身がボロボロで、アティアに至っては片腕を失っている。
「ベティを、叩き起こさねぇとな」
ビリーは眠ったベティがいる宮殿に目を向ける。そしてその宮殿へと足を一歩前に踏み出したところで一帯が大きく揺れた。
「また、爆発か!?」
どれだけ踏ん張っても膝をついてしまうほど振動が四人に襲いかかる。
「ッ、長い…」
爆発による衝撃というよりかは地震のような継続的な揺れが街全体を震わせる。
揺れに見舞われたクウコが地面に手をついて収まるのを待っていた。しかし収まるどころか揺れは大きくなっていた。
(揺れが、近づいて来てる…?)
クウコは手に伝わる揺れが激しくなっているのに気がついた。最初は気のせいかと思っていたクウコだが、数秒もすればその思いは確信へと変わる。
(揺れが強まってる!?地中の奥に何かがある!)
膝をつくことすらままならないほど大きくなったころ、クウコたちから数十メートル離れた道路に亀裂が出来る。アスファルトが裂け、そこから大きなドリルが姿を見せる。
「なんだい、ありゃあ…」
地中から姿を現したのは超巨大なトラックだった。もうとにかく大きかった。タイヤだけでも大人の身長分はあり、トラックの荷台は中に一軒家を詰め込めそうなほど巨大であった。
一通りその大きさに驚いた後に目を惹いたのはトラックに似つかわしくない武装であった。高速で地中を掘り進められるほどの高性能なドリルがライトの下で回転している。コンテナには小さな窓が何個も作られており、その窓からは機関銃たちが顔を出していた。
「キラードライブの隠れ家はこの島の地下にあったっていうのか…。そして、マザー・キュートのいうことが正しいなら、あのトラックを操縦してんのはキラードライブのボス…アタシらが討つべき奴がだよ」
クウコはそう言い、トラックがどう攻撃してもよいように回避に専念する構えをとる。
「トラックが、進みだした…。反撃のことは考えないこと!まずは回避して様子見だ!」
しかし、トラックはクウコたちに目もくれず、ゆっくりとそのまま前進していく。トラックのある先には黄金に輝く宮殿があった。
「おい!アイツ、全然こっちにこないぞ!」
ゆっくりと前進していたトラックはほんの一瞬で最高速度に達し、クウコたちが瞬きをしている間に視界から消えていた。
(ッ!相手のやりたいことが分かった気がするね…)
島全体が崩壊するほどの爆発を起こしておきながらたった一つの道路だけ綺麗な状態で残していたのか、なぜキラードライブは部下に隠れ家のみ秘匿を釘を刺したのか。
それは宮殿を除く全てを爆発し、兵士を宮殿に集中させる。そして地下から現れたトラックによる不意打ちの一撃で一気に戦力を削ぐ。すべてはこの、一撃必殺の作戦ためだったのだと。
しかしクウコはそれを理解しても遅い。猛スピードで道路を駆け抜けるトラックより早くこのことを伝える術を持ち合わせていない。宮殿との間に遮蔽物や地割れはゼロ、トラックの暴走を遮るものは何一つとしてない。
「やべぇ!ぶつかるぞ!!」
ビリーが叫んだと同時か少し遅れて宮殿のほうから耳を塞ぎたくなるほどの衝突音が響いた。爆発が起きたわけでもないというのに振動が足に伝わる。衝撃波で暴風が巻き起こる。
「…マジ、かい」
四人は走ることを忘れ、目を見開き呆然と立ち尽くしていた。戦車による砲撃でも、戦闘機によるミサイルでもない。ただトラックが突っ込んだだけだというのに、立派にそびえ立っていた宮殿は見るも無残なガレキへと変貌していた。
「ギリ、半壊で済んでやがるが、かなりキツそうだぞ」
「えげつない最終兵器を出してきたもんだね」
クウコは黄金のガレキに覆われたトラックのけたたましいエンジンの咆哮を聞き、小さく身震いをしたのだった。




