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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第54話 混沌

 ミースとアティアはルールーが消えたことを確認すると同時に、お互いを強く蹴り飛ばした。蹴りの勢いで二人は左右に吹き飛び、ルールーの目の前化から姿を消した。

 しかしそれに気づいたからといって止まることは出来ない。

(なるほど、これ狙い、か…)

 ルールーのバイクは一直線にビルへと向かっていた。激しい衝突音とともにルールーがビルの方向から砂ぼこりが舞う。

(…くっ、さぁ、どうなった?死んでくれたか?)

 ミースは地面に倒れたままのアティアを起こそうと手を伸ばす。

「あぁ、ありが…ッ!?」

 ミースに引っ張られて立ち上がったアティアが掴んでいたミースの手を払い、ミースの体を強く押し飛ばす。

「えっ…?」

 ミースとアティアの間を猛スピードで何かが駆け抜けていった。ミースはアティアに押し飛ばされたため、それとの衝突を避けれたが、押し飛ばすために右腕を突き出したアティアはそれに巻き込まれてしまった。

「あっ、ぐぅ…!」

「アティア!?」

 ミースの右腕が宙を舞い、ボトリと地面に落ちていった。

(何が…いや、何が来たかなんて分かってる!)

 ミースはビルの方向を睨む。いまだに砂ぼこりが舞う中から一つの人影がゆっくりと浮かんでくる。

「浅はか、非常に浅はか。この程度で死ぬと思っていたのですか?」

 血まみれ怪我だらけで服も所々破けた状態のルールーが歩いて来ていた。

「まぁ、私をここまで苦戦させた点は褒めましょうか…素晴らしい」

「上から何様だ?お前はもうメインウェポンであるバイクを捨てたんだぞ」

 ルールーのバイクはアティアの十数メートル後方で倒れていた。それもぐちゃぐちゃにひしゃげており、動く様子なんて微塵もない。

「満身創痍のあなたたちを殺すのに大手間かける必要はありません」

 余裕綽綽といった感じで二人の目の前に現れたルールーは拳銃を取り出す。

「なぜ、お前は生きてるの?あれだけの速さで突っ込んだらビルがぶっ壊れるでしょ?」

「あら、あなたは忘れたのですか?私のバイクがコンクリートを破壊したのを。ビルを貫き衝突を避けました」

(けど、ビルは崩れたはいない)

 アティアは地面に転がっている銃を握って後ろに体を向ける。

「敵に背を向けるということは降参表明ですか?」

「まだ、負けちゃいない」

 アティアの持っていた残っていた弾を全て吐き出す。

(アティア、何を狙って…!)

 狙いはもう使い物にならないバイクであった。バイクに出来た銃創からは炎が噴き出す。そしてその直後に爆発を起こした。

 あの速さを出すために数多の改造を施していたのか、通常のバイクではありえないような爆発を起こす。その威力は僅かながらも地面を揺らすほどであった。

「…変な考えを巡らせたようですね。そのバイクを使う気はありませんでしたよ」

「変に考えてるのはお前のほうだよ」

 爆発による振動はアティアたちの足元を伝い、ルールーの背後へと続いていく。

「もともと半壊していたビルの壁をバイクで貫いたら相当なダメージになる。ぶっ壊れていてもおかしくないハズ。形を保つだけでも限界なハズ!」

 爆発の振動を受けたビルからコンクリートの小さな破片が転がってくる。

「ちょっとした振動で、崩れちゃうんじゃないの」

「…っ、なぁ、そんなことが…!」

 ルールーはありえないと思いつつも後ろを振り返る。しかしそこには嘘であって欲しい光景が広がっていた。

 ビルはゆっくりと倒壊していく。コンクリートの雪崩が緩やかに迫ってきていた。緩やかといっても大量のガレキが避けれるような機動力を持たないルールーは容易く呑み込まれてしまった。

「…ゴミが」

 全身を呑み込まれることは避けれたが、腰から下はガレキの下敷きとなってしまっていた。

 雪崩はアティアたちから二十メートルほど離れた位置で止まった。

「大逆転勝ち、だ」

 アティアは身動きの取れないルールーのもとまで近寄る。

「はぁ、はぁ…クソみたいな幸運を拾っただけで、勝ち誇らないで欲しいです」

 ルールーはそう言うと、少しだけ息を整える時間を設け目を閉じる。

「まぁ、私も頑張りました。やれることは全てやりました。いい具合に、かき乱せました」

「…何言ってんだ?」

「もう、あとは、ボスに全てを託すだけです」

「…あっそ。それが最期の言葉でいい?」

「いいでしょう。どうぞ」

 ダンッと一つの銃声が静かになった戦場にこだました。

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