第52話 瞬速機
「うおぉぉぉぉ!!」
空中に放り投げられ落下しているビリーは両手両足をバタバタさせてもがく。
「まだ、死ぬ訳には…!」
ビリーはチェンソーを起動して、チェンソーの刃を建物の壁に勢いよく突き刺す。
チェンソーでゴリゴリとコンクリートを削ることによって落下速度が落ちていく。ビリーが地面に到達するころには完全に停止していた。
「はぁ…あの女…!」
ビリーは目の前の建物を見上げ、ルールーたちがいるであろう上階を目指して建物に入ろうとした瞬間、頭上から激しい衝突音が響く。
「ヒュ!?」
ビリーが驚き真上に視線を向けると、そこにはクウコがいた。アティアとミースを掴んで空中を飛び回るクウコの姿があったのだ。
「わっ!?ク、クウコ…!どういうことだ」
クウコは足から噴き出すジェットの威力を徐々に弱まって地面に着地する。
「おっも…。て、そんなことしてる場合じゃない!」
クウコは両肩に担いでいるアティアとミースを地面に落とすと、頭上に注意を向ける。
「来るよ。あのバケモンが…!」
その言葉とほぼ同時に頭上から轟音とともにルールーが頭上から降ってきていた。
「逃げられると思わないでください」
ルールーはバイクでビリーを押しつぶしにかかる。高速で回転するタイヤをチェンソーで防ごうとするが、完全に力負けしてしまっていた。
チェンソーがタイヤに弾かれ、守るものがなくなったビリーにタイヤでの激しい攻撃が遅いかかる。
「ごはっ…!」
車体ごとを縦に回転させてビリーの体を地面に思いっきり叩きつけた。その威力は凄まじくビリーの足元の道路にヒビが入るこどのものであった。
「…!?」
そんな信じがたい光景を目の当たりにしたビリーたちの顔が静かに引き攣る。
(…なんで、コイツまで顔を引き攣らせてる?)
皆が地面のヒビに目を向けている中、クウコだけは相手を見据えていた。
そしてクウコは見ていたルールーの様子に違和感を覚えたのだった。最初は自身の能力の凄まじさに驚いているのかと思ったが、その表情は明らかに焦りが見えていた。
(…やっぱりこの道路に、何かがある)
しかしそれを調査するためにはまず目の前の暴走バイクを止める必要があった。ルールーは一度クウコたちから離れ停車させる。
「やばいのが、来るよ…避けて!」
停車したバイクが勢いをつけて突進してくる。百数メートルは離れた位置にあったハズのバイクは、まばたき一回で眼前まで迫ってきていた。
(ッ!?なんて…速さ)
迫ってくるバイクを避けれた者は一人もおらず、まともに突進を食らってしまった。まともに食らったとはいえ先頭に立っていたクウコのみが迫ってくるバイクをギリギリのところで蹴ったことにより僅かだがスピードは落ちた。
しかしそれでどうこうなるレベルの速さではなかったのだ。
「っがぁ!」
幸いなことに突進をモロに食らったのはクウコだけで他の三人は腕を掠めて血を流した程度のダメージだった。そして、真っ向から食らったクウコは大きく吹き飛び、背後にあるガレキの山に埋もれていった。
「嘘だろ…!おい、クウコ!」
ビリーがクウコの生死確認をしようとしている中、間髪入れずに攻撃してくるルールーによってそれを邪魔されてしまった。
「お仲間の心配よりご自身を…」
ルールーはビリーの腕を掴み、高速で動きながらビリーの体を地面に擦りつける。
「がっ…!て、め…。クソが」
ビリーは動き回るバイクを止めてやろうとタイヤにチェンソーの刃を入れようとするが、高速で回転を続けるタイヤはそれを簡単に弾き返してしまった。
「残念でしたね」
とは言いつつもなにかの手違いで刃が入ってしまえば困るため、ビリーを地面に叩きつけるように投げ捨てた。
(あと、二人…)
アティアとミースを探すが、さっきまでの位置に二人の姿はない。どこに逃げたのだろうかと考えながら周囲を見ていると、二人の後ろ姿を発見した。
「あの二人…。なるほど、建物に逃げるつもりですね」
二人の向かう先にはビルがあり、ルールーは二人を見てそんな予測をたてた。
「まぁ、どんなに速く逃げたところで…」
ルールーは一瞬にして二人を追い越し、ビルの入り口に前にバイクを停める。
「あまり、変なことは考えないでくださいね」
恐ろしいスピードで追いついてきたルールーを見て顔を強張らせながらも毅然とした態度で言い放つ。
「ッ…やってみろよ」




