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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第45話 氷の暴力

 ベティは本気を出すと言いだしたチップスを嘲笑するように言った。

「何言ってるの?私が想像以上に強くて本気を出さないといけなくなりました、でしょ?」

「黙りな!」

 チップスは腕を前に突き出し、その腕の袖からコバエを放つ。小さいうえ素早いこともあり数えることは出来なかったが、十体以上いることだけは分かった。

「さぁさぁ、どーするのかなぁ!?」

 コバエがベティの頭を狙って猛スピードで突っ込んでくる。それを見たベティは引くことも、防ぐこともしなかった。

「なっ!?馬鹿なのか!?」

 ベティは前に向かって走り出した。ベティの数メートル先には爆発するコバエがいるというのにだ。

「その攻撃、逆に避けやすくなっているよ」

 チップスは速攻でベティの頭を吹き飛ばそうとした。そうしないと回復されるからだ。ただそれが裏目に出た。

 ベティはコバエたちとぶつかりそうになった瞬間、ストンと体を低くする。コバエたちは急停止することが出来ずにベティの頭上を通り過ぎていく。

 それを見たチップスは慌ててコバエをベティを追わせようとするが、その際に焦ってコバエとコバエをぶつけてしまった。互いにぶつかったコバエは爆発し、その爆発によって爆発が連鎖的に起こる。爆風がベティに当たるが、掠る程度でなんのダメージでもない。

「アイスランス!」

 チップスを守るコバエがいない隙を狙ったベティが魔法を放った。それをすんでのところで避けたが、避けた先からはベティの拳が飛んできた。

 チップスはその拳を右手で受け止め、左手で鞭のようにふって殴りかかる。ベティは向かってくる腕に分銅鎖をからめて攻撃を止める。そして両手が塞がっているチップスに思いっきり股間を蹴り上げる。

「あごほっ!?」

 チップスは体を丸めたかと思いきや、その体勢のまま頭を前に突き出してベティの顔に頭突きを食らわせた。

「てめぇ、足掻いてんじゃないよ。とっとと死ねばいいものを…!」

 チップスはよろめくベティを蹴り飛ばす。中の骨が内臓に突き刺さり、吐血しながら倒れ込みそうになる。

「ッ…!アイス、ランス!」

 膝をついて歯を食いしばり、手をチップスに向かって突き出した。

「その攻撃はもう無駄なんだよっ!」

 チップスは氷の刃を躱しながら銃口を向ける。発砲したタイミングでベティが分銅鎖を振り回しながら近づき、襲いかかる弾丸を分銅鎖で起動を逸らした。

 チップスは銃では殺せないと判断し、袖の中から三匹のコバエを放つ。コバエとベティとの距離は二メートル程度で避けることは出来ない。

(この程度…!)

 ベティは腕で顔に当たることだけは避けれたが、腕に三匹のコバエがぶつかる。

「ヒール!!」

 痛みを覚悟してたベティは爆発とほぼ同時に自分の腕を治癒させた。

(そしてそのまま、拳を叩きこむわ!)

 ベティは全身に走る激痛に怯むことなく拳を固めて、全身の力を右手に集中させる。

「うっ、りゃぁぁぁ!!」

 ベティの拳がチップスの顔面をめり込ませ、勢いよく吹き飛んだ。壁に叩きつけられたチップスは急いで態勢を立て直そうとするが、もうどうしようもない位置までベティが迫ってきていた。

「トドメよ!アイスランス!!」

 チップスもコバエを氷の刃にぶつけて致命傷を免れようとするが、如何せん距離が近かったため氷の刃を爆発することに成功しても、散った欠片がチップスの全身を突き刺した。

「死っねぇぇ!!」

 刃の欠片だけでは傷は浅い。ベティはあともう一押しの一撃をチップスの胸に叩きこむ。胸に突き刺さった刃の欠片が拳で体内に押し込まれていく。

 ベティの重い一撃で壁にもたれかかっていたチップスはそのまま壁ごと吹き飛ばされてしまった。壁が崩れて建物の外へと落ちていった。

「クソ…アマ、がぁ…!」

 道路に叩きつけられたチップスは天に向かって腕を伸ばしていたが、ほどなくして腕をぐったりと倒れた。

 その様子を見たベティはその場に座り込んで大きなため息を吐いた。

「…どうやら、倒せたようね」

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