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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第40話 止まぬ爆風

 敵一人一人の実力はそこまでであるが、あまりにも人数差がありすぎている。一人倒せば新たに二人現れ、二人倒せばさらに十人現れる。それでもまだ視界の奥には敵がいる。

「キリがないのよ!」

 魔法を使えばすぐに底が尽きてしまうため銃を使っていたが、弾丸の数もそろそろ限界であった。ベティは弾を数発残して、武器を分銅鎖に変更した。

「っぐ!ダメージも大きくなってきた…」

 銃と比べれば殺傷能力の低い分銅鎖では敵の処理にかなりの時間がかかっていた。

「本当にキリがなさすぎる!敵を一掃できる手段とかないの!?」

 ベティがそう叫んだ瞬間、その言葉に応えるかのように爆発音が轟いた。

「なっ!?」

 全方位から複数の爆発音が同時に聞こえてくる。音が多すぎて数はわからないが、かなりの広範囲に被害が及んでいるのは確かだ。

「建物が…崩れてきやがるぞ!!」

 爆発の影響でビルが倒壊していた。それがドミノのように連鎖していき、ベティたちのいる大通りに向かって倒れてくる。

「うげゃあ!?」

 ビルの落下地点で隊を組んでいた敵軍の大半がガレキの下へと飲み込まれていった。

(…願いが、届いた?)

 もちろんそんな訳はない。ガレキの波は敵だけではなく、ベティたちにも襲いかかってくる。

「ベティ!ボーッとしてる場合ではない!」

 隣に立っているフォーの言葉でハッとしたベティは避難を急ぐ。しかしガレキの幅は二十メートル以上はあり、走って避けれるようなものではない。

「ベティ、投げるぞ」

 フォーはベティの手首を掴むと、左足を軸にした一回転を見せた後、ガレキの影が無い場所に向かってベティの体を投げ飛ばす。

「フォー!あなたはどうするつもり!?」

 フォーの頭上十メートルには巨大なガレキが迫ってきており、あまりにも絶望的状況だった。

「焦るな。助かるための手段くらい持っている」

 フォーは両腕をピンと伸ばして言う。左手はベティのいる方向に、右手はその真反対の方向に伸ばした。

(この爆風なら、イイ燃料になってくれる)

 大きな爆発だったこともあり、爆風は今もあたりを包みんこんでいる。

 フォーの両手のひらがウィーンと開く。野球ボールが簡単に入りそうなくらいの大きさの穴だ。

「さぁ、行くぞ」

 フォーの左手の穴に風が入り込んでいき、その風は右手の穴から飛び出した。しかしその威力は明らかに異なっていた。

「ッ!フォーがこっちに吹っ飛んできた!?」

 フォーは射出した風の反動でベティに向かって突っ込んでいく。

 爆風の勢いは強いが、余裕で立っていられるレベルだった。人をこうも吹き飛ばすような勢いを持っているわけがない。

「っと、危なかったな」

 フォーはギリギリのところで生き延びた。ガレキの山はベティたちの足元に到達しかけるところで停止した。

「お前たち!生きているか!?」

 フォーの言葉にまばらな位置から声が返ってくる。

(クウコ、ビリー、ミース、アティア…うん。ボロボロだけどみんなも生きている)

 ベティも仲間の安否を確認しながらメチャクチャになった道を眺めがらフォーに話しかける。

「フォー、さっきのって…どうやったの?」

 どうやって回避したのかが気になったベティはフォーの手のひらを指さす。

「ん?ああ、このエアロバレッドのおかげだ」

 フォーは両手の穴を開閉しながら説明する。

「こいつは左手から入れた空気をもう片方の手から発射する。しかも風を体内を通っている間に、空気を膨張させることが可能だ。だからあの威力を生み出せたんだ」

「なるほどね。でも、かなり環境頼りの力ね」

「無風でもある程度は強まる。ただ、こんだけの強さがあれば人は殺せるぞ」

 フォーはそう言いながら周囲を見回す。爆風で巻き上がった砂ぼこりはいまだにあたりを覆いつくしていた。

「それは強そ…ちょっと、何か聞こえない?」

「ん?何かってなんだ?」」

 ベティが静かになった大通りで微かだったが銃声を聞き取った。それもかなり近くでだ。仲間で銃を構えている者は一人もいない。

(この音、聞き覚えがある。それも超直近で聞いた!)

 考えている内にその音の正体に気付いたベティが体勢を低くしながら皆に聞こえるように叫ぶ。

「伏せて!死ぬよ!!」

 ベティが叫ぶと同時に砂ぼこりを突き破って無数の弾丸が飛んでくる。何十もの弾丸がベティたちの頭上を通過していく。

 ベティの言葉にクウコやフォーは条件反射で従う。しかしそれに反応できなかった数人の兵士の頭に穴があく。

「ッ!姿を現したか…」

 弾丸が飛んできた方向に目を向ける。そこにはガレキの山の頂上に立つデストロイヤーの姿あった。

「生き残ってたか。もっとも、今から死ぬのだが」

 デストロイヤーは自身の腕の銃身を回転させながらそうつぶやいた。

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