第41話 追いかけっこ
デストロイヤーは全体にまんべんなく弾丸を放つ。とはいえ皆ある適度の距離を保っていたこともあり被弾する者はいなかった。
「まあ、奇襲が失敗した時点でもう当たらないのは分かってたが…ただこうなると人数差で押し切られてしまうか」
デストロイヤーはそう言いながら弾を吐き出し切った腕をブラブラとさせながら走り去る。
「はぁ!?また逃げる気なの!?」
デストロイヤーの更なる攻撃に身構えてきたベティたちはその逃げの行動を読むことが出来ず、追跡に移るのに少し遅れてしまった。
「追うよ」
ベティは先陣切ってデストロイヤーの後を追い、半壊しているビルの中へと入っていく。一応建物の形をしているが、大小様々のガレキがデコボコの足場となっていた。
(不安定ね。歩きづらくてしょうがないわ)
グラグラと揺れる足場の上を走りながら辺りを見回す。
(逃げ足の速い奴ね。近くにいるハズなんだけど…)
デストロイヤーを見失ったベティは壁を背にして銃を構える。
(さっきも初めも奇襲を仕掛けてきた。あいつは単純に逃げ出したというよりも、私の隙を窺っているという方が説明つく)
ベティが銃口を右から左へと半周させた時だった。ガラリと、ガレキが落ちる音が聞こえてきた。
「ッ!?」
ベティは音が聞こえた方向に拳銃を向ける。割れた窓を右に曲がったところ、そこから音が聞こえてきた。
「…っ」
そこから誰かが来る気配はない。自然ガレキが落ちたという可能性も十分にある。
しかし確認しないという選択肢を取ることはできない。そろりそろりと移動して、割れた窓のところまでたどり着いた。あれから物音は一つもしない。
ベティはゆっくりとした動作から一転し、すばやく窓の外に飛び出し、そのまま右に向きを変える。
「…いない。少し気にし過ぎかもね」
窓の外は狭い路地になっており、音が鳴った方向は一本道で隠れる隙間がない。ベティは構えを解きながら息をついた瞬間、銃声が鳴り響く。
「んなっ!?」
銃声の出所は真上であり、ベティの頭上にはデストロイヤーがいた。壊れた壁に足を引っ掛けて拳銃を構えている。
「ふん、あの状態から回避、そして反撃を成功させたか」
デストロイヤーは壁から降りながら言う。持っていた拳銃はベティの分銅鎖ではじき落されてしまった。しかしベティも無傷というわけではなく、頭への直撃は免れたが、肩を貫かれてしまっていた。
「だが、もう終わりだ」
ガトリングの銃身が音を立てながら回転を始めた。
「終わりだ」
「いーや、こんなので終わらないね!」
ベティは大きく飛び上がった直後に隣にあった壁を蹴り、高く飛び上がった。ベティの下を弾丸が過ぎ去っていき、デストロイヤーは慌てて腕を持ち上げた。
「おっそいよ!」
ベティは分銅鎖を取り出して、デストロイヤーのガトリングでない方の腕に巻き付ける。
「っ!負けるか…!」
ベティは分銅鎖を引っ張りデストロイヤーを引き付けようとするが、力負けてしまい逆に引き付けられてしまった。しかしベティからすれば関係なかった。
密着状態になったベティは分銅鎖をデストロイヤーの腕から外し、首に巻き付ける。そして分銅鎖を使用している腕以外の体を使ってデストロイヤーのガトリングがついている肩を固定する。
「あなたはもうなんの脅威でもないわ」
ベティはデストロイヤーの背中からピッタリと抱き着き、そのまま分銅鎖をゆっくりと引っ張る。
(ガッ!首がしまっていく…。ガトリングも…全身で固められていて、動かせない)
ガトリングはベティに当たらないまま回転を続けて地面に無数の弾を撃ちつけていた。そして、数百の弾を無駄にしたところで回転を止めた。
「よっと…。これであなたはもう私を殺せなくなった」
クールダウンに入ったガトリングを見ながら、指で拳銃の形を作る。
「アイスランス!」
「ごはっ!」
アイスランスを食らったデストロイヤーは頭から倒れていく。
腹部に二か所、ガトリングガンに一か所、左足に一か所。どれも氷の刃が深く突き刺さっている。
「はぁ、はぁ、我はまだ、負けていない!」
デストロイヤーは勢いよく立ち上がると、ベティとは反対の方向に向かって走り出した。
「アイスランス!」
「まだ、まだだ…!」
デストロイヤーは氷の刃を転ぶようにして避けると、壊れた壁を乗り越えて建物の中へと消えていった。
「また逃げて…!めんどくさいわね!」
ベティは顔をしかめながらデストロイヤーを追いかけた。




