第39話 デストロイヤー
「フォー、どうするの?」
敵軍は進行が止まり、隊列もかなり乱れている。
「行く一択だ!」
フォーとベティはビルの窓から勢いよく飛び出し、敵軍を突っ切っていく。
「ッ!姿を現しやがったぞ。殺せ、殺せー!」
敵兵の一人がベティたちの存在に気づき声をあげるが、それが全体に広がるまでには少しの時間がかかっていた。
「今のうちにやれるだけの敵をやれ!」
「分かってるよ」
フォーとベティは敵軍の中心で弾丸をむやみやたらと撃ちまくる。一人、二人、三人と敵が次々と倒れていく。
敵兵らも銃を構えるが、なかなか引き金を引くことが出来ないでいた。理由は単純で味方が多すぎてどう撃ったとしても同士討ちになってしまう。
「五万って聞いてしり込みしてたけど…ただのハリボテ軍じゃないの!」
たった二人で数十人の仲間が殺されている。対してベティとフォーはかすり傷をつけられた程度しかダメージがない。
(順調すぎる…俺らに気付かれずに八つの地点を爆破させたような相手だぞ?こんなアッサリといっていいのか?)
フォーがそんなことを考えていると、大通りの向こう側から渋い男の大きな声が聞こえてきた。
「どけ、お前ら」
その声と同時に大きなモーター音が辺りに響く。「どけ」と言われたが、それを聞いて避けれるほどの猶予はなかった。
「フォー!こっちに!」
ベティはフォーの腕を掴んでから声の聞こえた方向にアイスウォールを生み出す。それとほど同時のタイミングで大量の弾丸がベティに襲いかかって来る。
「ひぃやぁぁ!?」
避け切れなかった敵兵の多くはその弾丸に飲み込まれていき、どんどんとその場に倒れていった。
弾丸の嵐が止み、撃ってきた敵の正体を確認しようと氷の壁を溶かす。
「あなたが大将?」
巨大な体で、左手を切り落としてそこにガトリングガンを取り付けたような見た目で、右腕には弾帯がギッシリと巻き付けられている。
「…大将、か。確かに我が現在この隊でキャプテンとして任されたが…残念ながら大将ではない」
キャプテンの男は腕のガトリングガンを冷却がてらベティとの会話をしていた。
「…お前、どっかで見たことあると思ったら…ベティ、こいつはキラードライブの人間じゃない」
フォーがキャプテンの顔を睨みつけながらベティに近づく。
「どういうこと?」
「こいつはデストロイヤーって言う名で活動している腕利きの傭兵だ。この連携の低さも、雇われた兵の寄せ集めと考えれば納得だ」
フォーはデストロイヤーや自身の周りを取り囲む敵兵を観察しながら言う。
フォーの言葉を聞いたデストロイヤーは僅かに口角を上げ、ガトリングガンを叩いて拍手する。
「七大国家の兵士にも我の名が届いているとは嬉しい限りだ」
デストロイヤーは拍手を止めて、銃口を二人に向ける。
「そして我は今日、七大国家のゴールド・ラッシャーを滅ぼした者として!更なる名誉を奪い取るのだ!」
デストロイヤーの銃身が大きく回転を始める。それに対抗してベティもアイスランスをデストロイヤーに向かって放つ。
「ッ!物量が違い過ぎている」
四本の氷の刃はデストロイヤーの弾量が多すぎてすぐに削り壊されてしまった。
「くはっ!」
ベティはアイスランスだけで対抗できると思っていたせいで、こっから先の対処は考えていなかった。フォーに腕を引っ張られたおかげで弾丸群を避けれたが、完全に避け切ることは出来なかった。
「右腕が…!」
ベティの右腕が宙を舞い、そのまま地面の上にボトンと落ちてしまった。その瞬間フォーとベティに一瞬の動揺が見えた。
「腕を潰した。今度は頭だ」
デストロイヤーは腕の冷却のために他の兵士の間をかき分けて後方に下がっていく。
「さっきので、分かっただろう!アタマはあの男だ!」
フォーが叫び声を上げると、建物と建物の間から数十人の人間が飛び出してきた。
「なっ!?伏兵だと!?」
飛び出してきたのはクウコたちやゴールド・ラッシャー兵であり、完全に注意がベティたちの戦闘にいっていた敵軍は反応することが出来ずにいた。
「さあさあ、全員皆殺しさ!」
「ふ、増えたぞー!」
敵全体に更なる動揺が生まれる中、デストロイヤー一人は冷静に後退りして、バイクに乗っている仲間に近づく。
「ここは一時撤退だな」
デストロイヤーは雑兵の一人をバイクから突き落とし、奪い取ったバイクで敵兵の山へと消えていった。
「ッチ、追わないと!」
ベティは地面に落ちた自身の腕を拾いながらデストロイヤーの後を追おうとする。しかしベティが視認できるところのさらに奥にも兵士は待機しており、デストロイヤーを追うことはほとんど不可能だった。
「ベティ!まずはこの雑兵たちを殺さないとあいつは追えない」
「…ッ。分かってる。ヒール!」
ベティは右腕と肩の断面をくっつけてヒールを唱える。すると分離していた腕が肩にくっつき元通りになっていた。ただ銃弾でぐちゃぐちゃにされたためか少し不格好ではあった。
「とっととやってやるわよ。こんな雑魚たち!」
ベティは戻った腕を大きく掲げながらアイスランスを放った。




