第37話 キラードライブの強襲
「収まったみてぇだな」
爆発が起こってから三秒の時が経過した。爆発で巻き起こった砂埃はいまだにベティたちの視界を低下させていた。
「てか、ベティのアイスウォール…頑丈すぎない?」
アティアは氷の壁をペタッと触る。高さ二メートル強、横幅は一メートル以下、厚さは五十センチだ。氷の壁は欠けてたり、ヒビがついていたりするが、大きなガレキから耐えたとすれば十分丈夫だ。
「とりあえずは安心だね。とっとと中心部に行くよ!」
五人はボロボロになった大通りを通ってキュートがいる宮殿へと向かって走る。
「ちょっと待って…エンジン音が聞こえるよ」
アティアは耳に手を当て音の出所を探った後、爆発の起きた方向を指差す。
「おいおい、向こうからエンジン音だって?向こうで爆発が起きたんだ。エンジンの吹かす物も、それを起動する奴もいるわけないぞ」
ミースが小馬鹿にするようにアティアの肩を掴んだタイミングで、砂埃の奥から数十ものバイクが姿を現した。
「キ、キラードライブ兵ども!?」
バイクの側面にはデカデカとキラードライブの紋章がペイントされてあった。
「来るぞ!」
キラードライブの人間たちは銃を取り出して、ベティたちを囲んで撃ち殺しにかかる。
「舐めんなよ!雑兵がどんだけいようと、アタシたちの敵じゃあないのさ!」
クウコが弾丸群の間をぬって、兵士の頭を蹴り飛ばす。
「アイスランス!」
クウコが取り逃した雑兵たちを撃ち抜いていく。
「…えっぐいね。オレらがやる暇もなかったな」
「この程度の敵に時間割けないからね」
ミースは戦うために突き出した手をそのままゆっくりと下ろしながら倒れている雑兵たちを見た。その眼には僅かな哀れみがあるようにも思える。
「全員やったようだね。とっとと先を急ぐよ!」
クウコは一息ついていたベティたちを急かすように走り出した。
「そんな急がなくてもいいじゃねぇかよ」
◇◇◇
「…ふっざけてるね~」
宮殿のバルコニーから身を乗り出し、黒い煙が八方位から立ち込める島を見てキュートが歯ぎしりをしていた。
「マザー!島全体に爆撃を受けた。敵の数は不特定多数、明らかに島内の住民ではない者が島中で暴れまわっている。それも突然現れた!」
キュートの隣までやってきた男の報告を聞いたキュートが疑問符を浮かべた。
「突然現れた~?」
「はい、島の外はは大きな湖があるでしょう?遮蔽物のない湖から敵軍が来ればすぐ分かる。しかし、監視網には何一つ引っかからなかった。ポンと、突然現れたような感じだった」
「…そう」
キュートが怪訝そうな表情のまま爆発で消え失せた街を眺めながらどこかに通話をする。
「は~い、お母さんですよー。うん、そうだね。そっちからも見えるでしょ~?うん、いいよ。私たち家族に手を出す悪い子はー…殺して」
静かに通話を終えたキュートがバルコニーの下を覗くとそこにはベティ一行が駆けて向かって来ているのが見えた。
「マザー・キュート。アンタは無事だったのかい!?」
「一応ね~」
キュートはクウコを睨みつけるから素っ気なく言った。
「いや、分かるよ?アタシらが来てから事が起こったから疑っているんだろう?とりあえず睨まないでくれないかい?」
「ん…そうだね~。これで怪しむのはちょっと早計だったね。ただ~、ベティちゃん以外は私に近づかないでね~」
キュートは猫を愛でるようにベティの首の裏をグリグリと撫でる。
「マザー!!大変です!」
一人の兵士が息を切らしながら宮殿の門をくぐった。
「どうしたの、随分と焦っているけど~」
ただ事では無さそうな兵士の様子を見たキュートが兵士に近づく。
「敵が…この宮殿を囲むように進攻してきている!敵軍は推定十万、円形の編隊を組んで近づいてきている!」
その報告を聞いたこの場の者たちが顔を強張らせる。
「…ふーん。逃げ道ない感じ?」
しかし、キュートただ一人は狼狽することなく冷静に状況理解をする。
「は、はい。キレイな円を組んで進んできている」
「うん…そうだね~、じゃあ、キミたち全員で南側半分を潰して~」
キュートはベティら五人と、この場にいるゴールド・ラッシャー兵を順に指さした。
「…じゃあ北側はどうするつもりなんだい?まさか捨てるのかい?」
クウコが皆の気持ちを代弁するように言葉を発した。それの言葉をきいたキュートは何言ってんだといった風に笑う。
「北側~?私一人でやれるよ~。五万程度なら簡単でしょ~?」
キュートは平然にそんなことを言ってのけた。




