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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第36話 爆発的な開戦

 夜が過ぎ去り、次の日を迎えた。

「…ベティ。ちょっと話があるのだけど」

 もぐもぐとサンドイッチを頬張っていたベティの前に、真剣な面持ちのクウコがやって来た。

「モゴッ、ハムッ。分かったよ」

 サンドイッチを急いで飲み込んだベティはクウコの後ろをついて行く。

「ベティだけか?」

 同じように食事をとっていたミースが寝ころんだ体勢のまま顔だけ向けて訊いた。

「ベティオンリー」

 そのまま二人は自分たちが泊まっていたホテルの屋上にやってきた。クウコは手すりに背中を預けながら煙草を一本取り出す。

(臭いから吸わないで欲しいんだけどなぁ)

 クウコはそのままキリッとした表情でベティに話しかける。

「キラードライブとぶつかるってことはメンバーのゴドとも対峙することになる。そしてアイツは多分、アンタを狙うね」

「よく分かるね、そんなこと」

「ええ。アイツの性格はよく分かってるつもりさ」

 根拠など一つも提示しないが、クウコには確信めいた何かがあるようだった。

「初めて会った時も思ったけど…あなたとゴドって知り合いだよね」

「あぁ、アイツは元々キングリーパーのメンバーだった。と言っても最初からスパイとして入り込んでただけだったぽいけどね」

「ふーん。因縁がある感じ?」

「そんな感じだね」

 クウコは煙草の煙を真上に向かって吐き出し、さらに話を続ける。

「前に言ったよね?アタシには信頼できる仲間が四人いるって。ナタ、ミース、アティア…そしてもう一人は今逃亡中だ」

「そのもう一人がゴドと問題を起こしたの?」

「そそ。ゴドのヤツはアタシの仲間を反逆者に仕立てあげたのさ」

 クウコが憎たらしそうに煙草を噛み締めていると、ベティが首を傾げる。

「いや…仕立て上げたって言うか、実際反逆企ててるじゃない」

「まだ未遂よ」

(えぇ…)

 クウコに向いていた同情心がどんどんと薄れていき、どっちもどっちだろという感想が先行していく。

「と、に、か、く!ゴドはアンタを狙うだろうからもし出会ったらアタシに連絡して」

「連絡って言ってもね。どうやってあなたに伝えるの?」

「フツーに…こう」

 目の前で聞こえていたハズのクウコの声が唐突に脳内に移る。ベティがわけも分からず口をと開けたままポカンとしていると、クウコが詳しい説明を付け足す。

「説明してなかったかい?頭内通信局(ずないつうしんきょく)てのがアンタに埋め込まれてる。というか奴隷兵全員に埋められてるよ。命令と監視ためにね」

 初めての任務の時になぜ自分の位置がバレたのか、どうやって自分に声を届けていたのか、忘れかけていた謎が今解明した。

「えっぐいことするね。ま、分かったわ。見た感じ念じればいいんでしょ?」

「そうだね。ま、そういうことだから後は…」

 クウコが煙草を捨て、踏みつけながら屋上の階段に向かいながら話していると、どこからか激しい爆裂音が響く。

「なんだと…!」

 クウコが手すりに乗り出すようにして音の聞こえてくる方向を見る。建物があったハズの場所から建造物が一つ残らず消え去り、そこから真っ黒な煙が立ち上っていた。

「爆、発だと…!?」

「だいぶデカいよ、ヤバくない!?」

 ベティたちのいるホテルは島の南西に位置しており、爆心地は島の北東部であった。

「キラードライブが、もう動き出したのか!出遅れた…!」

「どうする!?キュートのもとに向かう?」

「そうだね…ミースたちも呼ぶよ!」

 クウコが屋上の扉に手をかけた瞬間、さらなる爆発音が響き、ホテル全体が僅かに揺れた。それもさっきよりも近い。

「なっ!?」

 爆発は島の北であり、爆発の大きさは最初のものと同じくらいで大きなクレーターのようなものが現れていた。

「ミース!今からマザー・キュートのところに向かうよ、超早急だよ!」

 クウコが屋上の階段を駆け下りながら脳内でミースに連絡をする。

「うわっ!?また揺れた!」

 ベティが今起こった爆発の詳細を確認するために窓の外に身を乗り出した。爆心地は北西部だ。

(爆発が近づいてる…キラードライブは島の端っこを次々と爆発しているの?)

 爆発痕が綺麗な弧を描くようにして島を回っている。このまま順番通りに爆発されていけばベティたちのいる位置も巻き込まれてしまう。

「てことは…クウコ!!やばいよー!このままだと私たちも爆散しちゃうよ!」

「なんだって…!?とっとと逃げないといけないじゃない!」

「うん!見た感じ中心は狙われてないと思うからそこに向かうよ!」

 クウコたちがホテルの外に出たタイミングで島の西部で大きな爆発音が聞こえてくる。他の者たちも爆発の流れに気づいたようで、外ではベティのように島の中心に向かって走っていく人々の姿が見える。

「やばい!爆発がもうそこまで…!」

 クウコが島の西の上空に上っている黒煙と目の前のホテルを交互に見ながら、ミースたちが出てくるのを待っていた。

「おい、クウコ!てめぇ、んなとこで突っ立ってたんじゃねぇぞ!」

「巻き込まれたくないなら走りな!」

「そーだよ!死にたいの!?」

 ホテルの二階からミースら三人が飛び降りてきて、そのまま二人の隣を通り過ぎながら叫ぶ。

「は…?アンタらを心配してたってのに!」

 クウコとベティも三人に遅れて島の中心部に向かって駆け出した。

 その刹那、激しい爆発音が轟く。その距離は近く、耳が痛くなるくらいの炸裂音がベティたちを襲う。爆発自体には直撃しなかったものの、その衝撃で発生した爆風や、破壊された建物の残骸がベティたちに襲いかかる。

「っ!…アイスウォール!」

 ベティは道の中心に立ち、氷の壁を生み出す。それを見たクウコたちも慌てて氷の後ろに隠れ、ガレキ群から逃れる。

「…た、助かったぁ…」

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