夏休みの宿題は、ほとんどがアカの指示通りです
夏休みも後10日となり、慌てる人達も多くいるだろう。
俺はあれから、いつものように朝から晩まで練習をして、寝るの繰り返しだったが、この日は朝目覚めて、いつものように音羽におはようの挨拶をする。
が、音羽はモニターをONにしていて、映像越しに彼女の姿が映される。
「毎日、練習に明け暮れるの構わないが、夏休みの宿題はもう済んだのか?」
その瞬間。俺は顔がこわばり、
「いえ、まだ少しも手を付けてはいません」
現実を突きつけられた。
音羽はため息をついて、
「将来、伴侶となる可能性のある者がこれでは話にならない。人から助けをもらっても構わないから、休みが終わるまでに全てやっておくように、いいな?」
俺に念を押して、言ってきた。
「はい、今から頑張ります」
「雅玖も他者の支援を借りても、構わないからな」
音羽は自力のみで勉強しなくていいと付け加えてから、自身の映像を切った。
しっかりと釘を刺されたので、着替えてから鶏肉とオレンジジュースを摂り、ジムに宿題を終わらせる事を伝える事にした。
ジムに入り、受付カウンターに居た長平さんに話をすると、
「まあ、それじゃあ話にならないな。これも社会人への一歩と思って諦めて終わらせるんだな」
俺の右肩を叩いて、笑われた。
さらに背後でサンドバッグを叩いていた与野さんもやってきて、
「夏休みの宿題ぐらい、できないようじゃ話にならないのよね」
早いところ終わらせろと言った感じで軽く言われてしまった。
ここで与野さんが何かを思い出し、
「あ、そうだ。昨日、知念社長がなぜか、自身の一日のスケジュールを機密事項を伏せた状態で伝えられたんだけど……なるほど、そう言う事ね」
俺に目配せをして、何かを悟らせようとした。
少し考えてから、ようやく意図が分かり、
「大学を出たら、これくらいの業務をこなしてもらう事になるから、その練習のつもりでやるように、と言う事ですか」
与野さんは俺に微笑み、
「そういう事。あまり知念社長の手間をかけさせてはダメだからね」
俺に改めて、釘を刺した。
長平さんは付け加えて、
「そうだ、ガク。終わるまで、と言っても今月末まで無理だろうから、夕方から朝練からのフルメニューをこなす形でやってもいいぞ。時間は午後5時から9時までの予定だから、その時間帯は参加しろよ」
宿題が終わるまでの練習予定を伝え、俺を自宅に帰るように促す。
「分かりました。少しの間はその流れでやるので、よろしくお願いします」
二人に一礼してから、ジムを出た。
自宅の玄関前まで行くと、右の家屋の前から桃山と鳰入が出てきた。
二人は俺に手を振って、挨拶をする。
「おはよう」
「おはよう、ガック。今日は練習もしないでどうしたの?」
今、ガックと適当な愛称で呼んだのが、桃山である。
俺は気まずそうな顔をして、
「朝起きたら、音羽から夏休みの宿題終わらせろと言われた」
なるべく簡素に答えた。
二人はそれを聞くとゲラゲラと笑い、
「劣化版の双冶がここに居る」
「双冶に比べたら、随分と優しいと思うよ」
俺が恥ずかしくなったが、違和感を感じて、
「おい、劣化版ってどういう事だ?」
桃山の右に立っている鳰入に聞く。
すると、悪びれる事なく、
「だって、双冶を入学させようとしてる大学って、欧渓庭鴎大学だし、それに比べたら、ねえ」
俺も名前だけは知っている大学の名前が出てきた。
(ん、確か。難関の私立大学と思ったが)
「なあ、どうしてそんな有名な大学の試験を受ける事になってるんだ?」
現時点での学力は俺よりも低く、中山が受かるような大学ではない為、聞かざるを得なかった。
さらに鳰入は説明を続けて、
「知念社長の家の近くと言うのもあるし、学力もある程度欲しいと言う事だから、その大学になった」
何事もないかのように答える。
「何となくは分かった。いや、分かった事にしよう」
音羽も考えがあっての事だろう。だが、もう一つ気になる点がある。
「それよりも、桃山、鳰入。そんな恰好で色々と大丈夫か?」
二人の着ている物を見て、ツッコミを入れざるを得なかった。
二人の今の服装を説明すると、桃山は上はパウダーピンクのドレープリブトップス。下は白のミニ丈ショートパンツ。鳰入は荒いニット素材の黒い肩紐付きの明るいブルーグレーのミニ丈ワンピース。
「双冶ってすぐに知恵熱?が出ちゃうから、そしたらすぐに癒さないといけないでしょ?」
桃山が理由になってない答えを言ってくる。
「これ、勉強に集中できないだろ……あ、そう言えば当の中山はどうしてるんだ?」
俺は呆れつつも、姿の見えない中山が気になって、聞いてみる。
「部屋の布団で、首と肩、両方の二と一の腕を冷やした状態で寝せてる」
鳰入が若干、聞きなれない名称を交えながら、中山の現状を説明してくる。
俺は当然、違和感が気になって聞くしかない。
「二の腕は分かるが、一の腕って、何だ?」
鳰入は特に気にする事に無く、説明を補足する。
「前腕の事を、昔は一の腕と言ってたみたい。一の腕のほうが特別感が出ていいと思う」
『一の腕』と言う単語が気に入ったらしい。
(ん?この二人、何でこんな事を知ってるんだ?)
普段の彼女達を見ていたら、そんなに頭良くなさそうに見えるが、今のやり取りを聞く限りでは、そのようにはとても見えなく、俺は思わず戸惑ってしまう。
「あ、あれ。アカちゃんじゃない?」
桃山が左側を見て、人の姿を確認する。
確かにアカだ、アカなんだが、
(アカちゃんって……うん、もうどこからツッコミを入れればいいんだか)
彼女達の発言に困惑していると、アカが近づいてきた。
「おはよ、ガク君。そろそろ僕の力が必要だと思って、今年も来たよ」
黄色のリュックサックを背負いやってきた。
「今回は何も言ってなかったけど、どうして分かったんだ?」
今年に入ってから今日まで、音羽と接触しているところが見られてないはずだが、少し気になった。
理由を聞こうと、アカに話そうとしたら、
「桃山さん、鳰さん。良かった、どこに行ったか分からなかったから、今年はダメだと思ったよ」
アカは桃山の胸に飛び込み、泣きついた。
桃山は気にする様子もなく、アカの頭を撫でて、
「よしよし、ごめんね。10日前くらいにガックのところに引っ越してたから焦ったよね」
子供をあやすように言った。
俺は異様な光景を目にし、鳰入に目で訴えると、
「去年もこんな感じだったし、アカも困ってたんじゃない?」
何が何だかである。アカが何かに困って、二人に頼る理由が想像できない。
「え?アカが、何に、対して?」
切れ切れの単語調のような事を口にしている俺に、桃山は緩んだ表情で、
「去年もだけど、アカちゃんって夏休みの宿題で一部だけ分からない事があったから、私達が教えていたんだよね」
(は?アカが、学力が高いのにか?)
俺が困った顔をして、考える。表情を見た桃山はすかさず、
「ガックー、ダメだよ。人を見た目で判断したら」
(え、今、俺は何を相手に話しているんだ?)
自身でも無意識に良く分からない様子になってしまった。
俺の一連の様子を見ていた鳰入は、
「去年はあの部屋に居たから、双冶もこの事は知ってる」
つまり、アカは中山が彼女達と同じ部屋で暮らし、同棲していた事は認知していたと言う事である。
「なあ、アカ。中山とはどんな感じなんだ?」
俺は3人の様子を知って、動じる様子のないアカに聞いた。
「双冶君は別に文句言う事もないよ。ただ、2人に分からないところを教えてもらった後に言われた事は『すまん、俺は2人に教えてもらってやってるだけだから、何だかズルしたみたいで悪いな』とは言われたよ」
中山に言われた事は2人との時間の邪魔ではなく、他者に対しての罪悪感に対しての事である。
中山が罪悪感を抱くのも無理はない。
去年の夏休みの宿題は国語と数学がノートで計70ページ。
現代社会、古文、漢文がプリントで各10ページ。
科学、物理、生物がプリントで計50ページ。
去年は合計で150ページを片付けないといけなかったのである。
俺の場合、プロボクサーの件もあった為、特別に免除してもらったが、普通はダメと言う事らしい。今年は音羽に釘を刺される前の8月15日に昼食をとっている際、桃山がプリントを取ってきて渡してきた為、嫌な予感がしていた。
(ん?あの量、桃山と鳰入はどうやって片付けてるんだ?それ以前に二人の学力のレベルってどれくらいだ?)
色々と考えて、混乱していると、鳰入が丁寧に説明を始める。
「私と透乃はこれでも、返金不要の奨学金で通ってるから別に難しくないし、今年の夏休みの宿題も始めの3日間で全て終わらせたから。もちろん、双冶と一緒に居ながらだけど」
(二人の実家がギリギリとは言っていたが、まさか奨学生とは……しかも返金不要のタイプだから、学年で3人しか居ないはずなんだが)
俺はここで強烈に違和感が沸いて、質問をする。
「今、桃山と鳰入って、どれぐらい頭がいいんだ?」
桃山は顎のくぼみに数秒、右手の人差し指の先を当てて、
「うーん、雫と2番、3番を分けている感じかな。あ、細野君は学年1位で固定だから、アカちゃんが4番から13番を行ったり来たりな感じだね」
(アカだけなんで、そんなに順位変動が激しいんだ?)
俺はアカの不安定さに思わず意識が向いてしまう。桃山は構わず話を続ける。
「それで、前回もそうだったんだけど、アカちゃんは最初の5日間でほとんど終わらせるの。でも、何問かはどうしても解けないから、16日以降に聞きに来るんだよね、それで比較的、私たちが暇な時に教える流れだね」
お互いの意外な関係性に改めて、驚いてしまった。
「ああ、話それちゃったね。今からアカちゃん借りるから、2時間ぐらいでガックに返せると思うよ」
「いや、別に俺はアカを所有物とは思ってないぞ?」
俺が呆れた感じで言葉を返すと、桃山と鳰入に笑われてしまった。
「まあいいや。とにかく、ガックはその間、自室で勉強しててよ。解かる問題だけやれば2、3%ぐらいは行くと思うから、とりあえず、頑張ってね」
桃山はアカを腕を組みながら鳰入とともに、家屋へと入っていった。
俺も自宅に戻り、部屋で宿題に取りかかる。
各教科の宿題となる教科書、ノート、プリントを全て床に広げて、自力で解答出来る物をひととおり、探す事にした。
(国語は、漢字は多少は分かるな。文法は、まあ日常会話につながる事なら何とか……古文、漢文?これはパスだな、アカに聞いたほうがいい)
国語の宿題の量は今年は70ページほどで、解ける物と言えば、漢字に関する問題と、教科書内にある各文面に関して、小説や偉人の歴史書、後は歴代プロボクサーの自叙伝なんてのもある。片づけるとすればこの辺りだ。
まずは書き写すためのノート表紙に適当な題名を記入。そこから、指定されているページの漢字を全て書き写す。
最低70ページを記入する事を指定されているが、これより多くなっても問題ない為、50枚のノートを2枚用意している。
漢字記入用のノートを全部埋めるつもりで、50枚のノートを1冊使い、全て書いていった。
(よし、漢字を書くだけなら俺でもやれた)
俺が満足して、次に片づけようと考えた時、部屋のドアが開き、
「ガク君、おまたせ。今、分からないところを全て教えてもらって、宿題終わったから手伝うよ」
アカが来るのが早すぎだと思い、部屋の時計を確認する。時刻は9時30分。
(え、もうそんなに時間が経ってるのか?)
良く考えると、漢字は全て終わらせた事を考えると、これでも早いくらいである。
アカは俺の先ほどまで書いていたノートを見る。
「漢字は全て書いたんだね。後は意味の説明と例文を記入しないとダメだけど、後回しで。他は現代文ができそうだけど、これも後からでいいかな。古文と漢文はどう考えても後だね」
漢字を記入したノートをベッド右の壁側へと追いやり、国語系の教科書をまとめて、近くにまとめて重ね置いていった。
そして、アカが選んだ教科は『英語』である。
(近い将来、必要なのは分かるんだが、どうするんだ、これ?)
世界チャンピオンを見据えているなら、ある程度は習得すべき教科だが、基本的に日本語しか分からないので、しょうがない。
「あ、少しずつ覚えていかないと、後々苦労するから頑張ろう?」
露骨に顔に出てしまっていたようだ。
「今のところは、僕の言うとおりに書いて行けば終わると思うから」
アカは早速、英語の教科書を開きながら、プリントを見て、俺に次々と指示して、言われた通りに記入していく。
時間が刻々と過ぎ、英語のプリントを全て片付けた頃には午後1時となっていた。
「そろそろ丁度いいから、昼にしない?」
「ああ、そうだな」
少し遅い昼食をとる事になった。
俺は鶏肉とオレンジジュース。アカはお袋が作ってくれた鳥の唐揚げを丼にした物と炭酸飲料である。
「佐藤さんにアカの食事を見せたら、卒倒するだろうな」
「僕の周りでも、減量苦手なのは有名だしね」
佐藤さんの減量が下手なのは、なぜか学校中に響き渡っているのである。
俺がジム以外で他言した事は一度も無いのにだ。
そんな事を考えていると、アカはズボンの右前ポケットからスマホを取り出し、唐突にある動画を見せた。
俺はその画面を見て、困惑しながら、
「減量失格級世界王者の近況って、なんだ?」
画面を見ると、先月のプロデビュー戦前日計量で、佐藤さんが水抜きする為に会場の周りを走っている姿が映されていた。
そして、動画のタイトルには『減量失格級タイトル戦、ぶっちぎりの10回防衛』と表示されている。
「佐藤さん、よくこれで文句言わないな」
本来なら誹謗中傷で訴えを起こしてもいいはずだが、なぜかジムも全く対応しようとしないのが気になる。
アカは俺の心中を察したのか、
「佐藤さんは、この事自体は嫌だと思ってるけど、観客が増えるなら飲み込んだほうがいいと言う大人な事を以前に言ってたよ」
普段の佐藤さんと思えないような理由が返ってきた。
俺は思わず、遠い目をしていると、
「そろそろ休憩は終わりだね。おばさんに食器返してくるよ」
アカは俺の食器を自身が持っているトレーにまとめて、部屋を出て行った。
1分ほどで、アカが部屋に戻ってきて、宿題の片付けを再開する。
時刻は午後1時20分。
これからやるのは『古文』だ。
最初に確認した時、まったく分からずに即後回しにした教科の一つである。
(古文や漢文って、普通使う機会ないだろ?)
宿題の整理中と同じ事を考えていると、
「専門職にでも就かない限りは必要ないよね。これはなるべく早く終わらせよう」
古文は漢字の時に用意していた内のもう1枚のノートに10ページ分、アカの指示通りに記入していく。
黙々と記入して、終わった頃には午後4時30分となっていた。
「今日はお疲れ様、明日からは朝から来れるけど、何時ごろがいい?」
考えていなかった。今日は突発的な為、最初の数時間は漢字を書くのに費やしていたが、全て指示通りに書くのは何か違う気がする。
「そうだな、明日は朝起きてから物理を片付けようと思う。9時から来てもらってもいいか?」
「朝9時だね、分かった。それじゃあ、それまでに計画立てておくから、これから練習頑張って」
アカが立ち上がり、部屋のドアを開け、俺に手を振ってから出て行った。
「よし、俺もランニングから頑張るか」
午後5時からの練習の為、急いで着替えて、家から出た。
8月と言う事もあり、外はまだ明るいままだ。
俺は朝のメニューであるランニング、インターバル走、30秒ダッシュを午後6時過ぎまで行った。
この時点でようやく、日の入りが近くなり、夕日が地平線上にきれいに浮かんでいる。
だが、俺にはそんな事を構っている時間はない為、すぐにジムに入る。
佐藤さんのスパーリング相手になっている長平さんが挨拶する。
「お、やっと来たな。いつも通りストレッチから始めてくれ。おそらく7時過ぎだろうが、ミット打ちをやる時は声をかけてくれ」
今日の流れを簡潔に説明した。
「分かりました。いつも通りやりますので、準備運動終わったら声かけます」
俺は右奥にあるストレッチエリアに行き、ストレッチからメニューをこなす事にした。
サンドバッグまで終わり、時刻は午後7時20分。
「長平さん、終わりました。ミット打ちお願いします」
「おー、少しガッツリ目にやったか。分かった」
長平さんは一緒にスパーリングしていた佐藤さんに声をかける。
「佐藤、今日はもう終わりだ。明日からも時間が変則になるが、きっちり仕上げような」
「はい、ありがとうございました」
佐藤さんはリングから降りて、グローブ越しに俺の肩に右手を置く。
「ガクさん、頑張ってください。相手は、運が悪かったと思って大人しく従ってください」
(傍から見たら、俺への言葉ってどう受け取られるんだろうか)
俺にしか通用しない言い回しをして、佐藤さんはグローブやヘッドギアなどを指定の場所に置き、男子更衣室に入ってから、奥のシャワー室で汗を流した。
3分後に更衣室で普段着に着替えて、部屋から出てくる。
「ガクさん、それでは失礼します。明日も宿題頑張ってください」
俺に一礼して、佐藤さんはジムを出て行った。
「よし、佐藤も帰ったから今からミット打ち始めるぞ」
「はい、よろしくおねがいします」
俺はリングに上がって、いつもよりも強めにパンチを繰り出す。今日は1回目のミット打ちとなる為、なるべく余分な力をここで抜いておく必要があった。
「よし、指示するまではワンツーを互いに繰り返すぞ」
俺は始めに左ジャブ、右ジャブとミットに当てた。足は下げずにミット越しのワンツーがこちらに来る。
俺も左右のジャブを止めて、そのままワンツーを叩き込む。これを2ラウンド分繰り返した。
「よし、次は一打目をアッパーしてこい。タイミングはいつでもいい」
(大丈夫か?あまりやらないパターンだが)
俺は長平さんの細かな動きの中で、わずかな左足から右足に踏むタイミングを見計らって、左アッパーを打つ。
パン!
あっさりと右ミットが上から下におろされて、はじかれる。同時にミット越しの右フックに打たれた。俺は左こめかみを打たれて、左に顔が揺れた。
「んー、やっぱりアッパーからはダメか。どうしても死角を作り気味になるからな、ガクの場合は」
長平さんは構えを解き、一時中断する。
「よし、今日はもういいからスパーリングを長めにやるか、12ラウンドで。まあ、気にするな、欠点の克服の有無を確認したかっただけだからな」
(今日の練習不足とは関係ないな。よし、今はラウンドをしっかりやるか)
悩んでも仕方がないので、長平さんとともに、12ラウンド分のスパーリング精いっぱいやる事にした。
午後8時10分。
スパーリングを終えた俺は、縄跳び、アフターシャドーをこなし、筋トレをやろうとすると、
「あ、悪い。ガクに食事させるのを忘れていた」
俺を事務室エリアに移動させ、用意されていた簡易テーブルにあった鶏肉、バナナ、オレンジジュースを食べた。
「悪いな、いつもと違う時間配分だったから、つい忘れてしまった。明日からは気をつけるよ」
長平さんに軽く謝れた。
特に気にする事もない為、俺は愛想笑いで無難に対応して、筋トレに取りかかる。
今日は午後10時までしっかり、体を作ってから、本日のメニューは終了となる。
俺は長平さんと与野さんに挨拶して、ジムを出て、自宅に帰って、風呂に入り、ベッドに寝る事にした。




